3年以上にわたる物価高騰に加えて、消費税のインボイス(適格請求書)増税、コメ不足と価格の高止まり…。中小業者の経営環境は悪くなるばかりです。でも、そんな状況だからこそ、民主商工会(民商)の仲間とともに「国や自治体の、返済不要の各種補助金を活用して、商売を続けよう」と奮闘する民商会員が、各地にいます。申請に必要な事業計画書作りは、一人では大変ですが、仲間と話し合いながら練り上げるなら、元気が出て、自身の経営を見直す機会になります。補助金を獲得した会員の喜びの声と、民商や県商工団体連合会(県連)の取り組みを紹介します。
市から15万円で備品購入 群馬・前橋民商 富田多美子さん=手打ちうどん


「業務用の大型冷蔵庫の購入費用に、群馬県前橋市の補助金を、希望通りの満額15万円が活用できた。こういう制度があると、本当に助かる」―。こう喜ぶのは、同市内で「純手打ちう庄八」を営む富田多美子さん。前橋民商元総社支部に所属しています。富田さんが活用したのは、市の「市街化店舗支援事業補助金」。補助金を獲得し、商売への意欲を新たにしています。
支部役員に相談
「純手打ちうどん庄八」は、「前橋市民のソウルフード」ともいわれる「ソースカツ」と、この道60年以上の富田さんが打つコシが強い平打ちうどんが人気の常連客に愛される店です。看板メニューは、群馬県産の豚肉を使用した「ソースカツ丼と女将の手打ちごちそう膳」(税込み1350円)。前橋観光コンベンション協会のホームページにも紹介されています。
長年使ってきた大型冷蔵庫の調子が悪くなり、いよいよ買い替えが必要に。「使える補助制度はないか」と探していた時、店の常連で、支部役員を務める岡本徳次郎さん=椅子製造=に相談しました。岡本さんが、その旨を1月の支部役員会で報告すると、市の「市街化店舗支援事業補助金」が該当する可能性が浮上。事務局員が早速、担当する市の産業経済部にぎわい商業課商業振興係に問い合わせ、補助金の予算が残っていることや、富田さんが「一般型」の対象になることを確認しました。
それを聞いた富田さんは、民商で相談しながら申請を準備。2024年度は2月末が申請期限だったため、ぎりぎり間に合わせて、3月末に無事、許可通知を受け取りました。
制度改善も求め

前橋市の市街化区域内で、小売店や飲食店などを1年以上営む事業者に対して、改装工事や10万円を超える備品費の一部(小規模事業者は3分の2以内)を補助する同制度(一般型)。民商が、かねてから「隣の高崎市の『まちなか商店リニューアル助成』のような補助金制度の創設を」と市に要望してきたことが実り、24年度から初めて実施されました。
しかし、申請手続きはデジタルのみ。市の電子地域通貨「めぶくPay」加盟店に登録する必要もあります。富田さんは、息子さんの協力も得て申請しましたが「デジタルに疎い年配者には無理」と話します。
民商は今後、紙での申請手続きを併用したり、「めぶくPay」登録は任意とすることなどを市に要請し、制度改善を求めていくことにしています。
前橋市「市街化店舗支援事業補助金」(2025年度)
○申請期間 4月1日~2026年2月28日
○対象者 前橋市の市街化区域内で1年以上営業する小売業、飲食・サービス業、生活関連業者。前橋電子地域通貨「めぶくPay」の加盟店であることなど。
○対象経費 ①改装工事(内装、外装、空調、給排水、電気工事など)②備品購入(耐用年数1年以上、10万円を超える備品)
○補助額 ①一般型…2分の1以内(小規模事業者は3分の2以内)、上限15万円②事業承継型…2分の1以内(小規模事業者は3分の2以内)、上限50万円
「新展開のきっかけに」大商連が学習会府「テイクオフ補助金」獲得を

「中小業者の切実な要求である資金繰り相談に、組織として応え『経営に強い民商』に」―。大阪商工団体連合会(大商連)は9日、「補助金学習会~小規模事業者持続化・新事業展開テイクオフ補助金獲得」をオンライン併用で開催。36民商から92人が参加しました。
国の「小規模事業者持続化補助金」(持続化補助金)の公募が1日に始まり(5月12日号2面既報)、大阪府の「新事業展開テイクオフ補助金」(テイクオフ補助金)も同26日に公募開始となることを受けて開催したもの。
独自の資料使い
最初に、大商連の原田孝夫副会長=ソフトウェア製作=があいさつ。各民商が中小業者の資金繰り相談に組織として対応できるよう、大商連として補助金や融資など8種類の「相談の手引き」「相談シート」(案)を作成したことを紹介。補助金版の「手引き」「相談シート」を使って、補助金申請の意義や支給までの流れ(図1)、自社の計画にあった補助金の見つけ方などを解説しました。事業計画書作りは①過去の振り返り②現状の把握(SWOT分析など)③目標とプラン決め―という順序で考えることを提案しました(図2)。仲間に相談する重要性に触れ「民商と一緒にチャレンジしよう」と呼び掛けました。


採択経験も交流
中村大思経営自治体対策部長=美容用品卸= が、持続化補助金について報告。制度の目的や補助事業の流れ、類型、補助対象経費などを、詳しく説明しました。申請に当たって重要となる「経営計画」と「補助事業計画書」について、過去2回、補助金採択された自身の経験も紹介しました。
続いて、布施民商の小田利広事務局員が、テイクオフ補助金制度のあらましと、過去の相談事例を基にした事業計画書作りについて説明しました。
活動交流では、堺南民商の林俊一事務局長が「昨年初めて補助金学習会を開催し、補助金申請はなかったものの、参加した会員同士が積極的に商売交流できた」と報告。父親と一緒には、昨年度の「テイクオフ補助金」を活用し、店の看板を刷新し、トートバッグやマグなどのロゴ入りグッズも作製したと発言。「補助金が新たな事業展開のきっかけになった。今は『IT導入補助金』にチャレンジしている」と述べました。
参加者からは「細かい説明があり、よく分かった」「補助金を獲得した話は具体的で参考になった」「事業計画書を作ってみたい」「申請にチャレンジしたい」など、前向きな感想が出されました。