税務調査に組織的対応を 納税者の権利守り合い 埼玉県連が税務調査学習会 「税金の民商」強化・発展|全国商工新聞

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 埼玉県商工団体連合会(県連)は4月15日、税務調査学習会を、埼玉県県民活動総合センター(伊奈町)でオンライン併用で開催。県内18民主商工会(民商)から役員や会員、事務局員ら65人が参加しました。県内各地で頻発する違法・不当な調査に対する取り組みと運動を交流し、役員として税務調査に立ち会う重要性などを確認しました。調査への経験が少ない事務局員らは、組織として税務調査に向き合う意識を高めました。

支部と民商が連携

オンラインと併用で18民商から65人が参加した埼玉県連の税務調査学習会

 川口民商税金対策部のKさん=看板工事=が、調査が発生した際の民商の対応について報告。
 2024年夏、税務調査に関わる相談が12件寄せられた川口民商。Kさんは「以前の調査対応は支部ごとに行っていましたが、『民商全体の問題』と位置付け、税金対策部会を中心とした体制を確立。支部との連携を強化し、助け合う運動を進めてきた」と述べました。若い役員や会員の力も結集し、調査対象者と役員らが「事前通知の11項目」や、「税務調査は(中略)社会通念上相当と認められる範囲内で、納税者の理解と協力を得て行う」と明記した国税庁の「税務運営方針」などを学習。本番さながらの模擬調査も行い、民商の公式LINEで、ささいな情報も共有してきたと紹介しました。「初めて税務調査を見聞きする新会員や、初めて立ち会う役員の不安を払拭させる入念な下準備を繰り返すことで、仲間の団結も深まった。調査対象者の自宅ではなく、公民館で実施した立ち会いには、役員ら約20人が参加した」と語りました。

記録書捏造に抗議

 入間東部民商の笠井純一郎事務局長は、24年6月、川越税務署の税務調査で、任意であるはずの質問応答記録書を取られ、重加算税を言い渡された安藤紀夫さん(仮名)=建設=の事案を報告しました。
 安藤さんは、訳が分からないまま税務署に呼び出され、署内での1回目の調査で「悪いようにしないので、サインを」と質問応答記録書への署名を求められ、その後、重加算税を課せられました。
 やり取りに疑問を持った妻が、税務署に保有個人情報の開示請求を行うと、実際には保存されている帳簿類が破棄されたことになっているなど、不当な調査の実態が明らかになりました。
 安藤さんはインターネットで検索して民商を知り、相談を通じて入会。民商三役と事務局員が2回目の調査に立ち会い、保有個人情報の訂正と利用停止請求書を提出し、質問応答記録書の捏造を抗議。その後、税務署から送られてきた「保有個人情報(開示・訂正・利用停止)請求書の補正書」を提出しましたが、担当署員は調査を中止しませんでした。安藤さんは24年末、民商役員と共に、不当な税務調査の中止を求める請願書を提出。年明けの交渉で、重加算税の取り消しと、納得のいく税額(5年分)での修正を勝ち取りました。
 桶川北本民商の岩田和雄事務局長は、全国商工団体連合会の「自主計算パンフレット2025」(12~13ページ)に掲載されている「更正・決定処分に対する『不服申し立て』」について解説。「仲間と共に学び合い、経験を共有し、権利意識を高め合って、『税金の民商』としての組織を強化・発展させましょう」と呼び掛けました。

権力から仲間守る

 熊谷民商の杉山正春会長=屋根工事=は、仲間の税務調査に、民商として、どう立ち向かったかを報告しました。
 3年前、会長になってから初めての税務調査に、不安を抱えながらも臨んだ杉山さん。「まず、調査対象者、役員と共に自主計算パンフと納税者の権利憲章(案)、税務運営方針などを熟読し、納税者の権利を学び合うところから始めた」と語りました。
 「役員と税金対策部会、所属支部の会員が総出で打ち合わせ、立ち会いに臨んだが、熊谷税務署の担当署員に3度、拒否された」と報告。「税務署に請願書を提出し、立ち会い時には要望書を読み上げ、請願書の回答に抗議文を提出するなどして対抗してきた。2回目の抗議行動で担当署員が統括官に代わり、納得のいく修正申告を勝ち取り、調査が終了した」と述べました。杉山さんは「学習や準備を精いっぱい行うことで、自分も、役員も、調査対象者も、自らの言葉で税務署に意見を言えるようになった。多くの会員・役員が、仲間の税務調査の立ち会いなどに参加し、経験を積み、会員を守る力を養っていくことが重要だ」と強調しました。
 県連の岩瀬晃司会長=保険代理=は「税務署とたたかえる私たち民商が、徴税権力の恐怖におびえる仲間を助け、増やし、組織を大きくして、民商運動を継承させていきましょう」と呼び掛けました。

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