各界から歓迎や賛同 全商連「納税者の権利憲章」(第3次案)憲章制定運動の力に|全国商工新聞

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声上げ道を切り開こう
納税者権利憲章をつくる会/TCフォーラム事務局長・税理士平石共子さん

 全商連が「納税者の権利憲章」(第3次案)を発表した。納税者の権利は憲法に掲げる国民の諸権利から
 当然に導かれるものである。しかし、実際に税務調査や徴収の現場で、そのほか税務署の職員と対峙するとき、憲法を持ち出して主張するのは難しい。時代に即した納税者に寄り添う第3次案の具体的な権利を学ぶことは、納税者の大きな力になるに違いない。
 1970年代後半以降、欧米諸国で納税者権利憲章の制定や納税者保護法制の整備が進んだ。その先進的な国ではさらに当初の制定したものを改定して進化させている。
 これは、納税者の権利の内容が、税務調査の手続き中心だったのが、徴収処分における権利やデジタル化におけるデータの保護に関する権利、プライバシー権などに広がっているからといえる。
 納税者権利憲章の制定は世界の潮流、ミニマム・スタンダード(最低基準)となっている現在、日本に納税者権利憲章がないのはおかしいという声を上げ、憲章制定へ向けて道を切り開こうではありませんか。

人権無視の現状改善を
元静岡大学教授・税理士 湖東京至さん

 納税者権利憲章ないし納税者権利保護法が制定されていない国は、OECD(経済協力開発機構)加盟国34カ国と非加盟国24カ国の58カ国中、日本だけという状況です。そんな国に何百万という小規模事業者にまで消費税の申告・納税をさせようというインボイス制度が実施されようとしています。これらの小規模事業者の中には今まで税務署と縁のない人々がたくさんおり、彼らは税務行政において納税者としての基本的人権が無視されている現状を知りません。
 「納税者権利憲章」(第3次案)は国民・納税者が国の主人公であり基本的人権が守られるべきだ、という視点で貫かれています。
 たとえばそれは、冒頭の「基本原則」で高々とうたわれていますし、「納税者に保証される基本的権利」の1で、「税務署及び税務の執行にあたる公務員は憲法遵守義務を負っており(憲法99条)、国民の基本的人権を保障しなければなりません。」と書かれています。
 そのほか、納税者が申告した内容の尊重、デジタル化の下でのプライバシーの保護、税務相談や税務書類の作成を誰にでも依頼する権利の保障、税務調査においては丁重で配慮ある取り扱いを受ける権利等々、調査の現場での納税者の権利が細かく書かれています。
 今回の「第3次案」で新たに書かれた「納税者オンブズパーソン制度」は、納税者の権利侵害に対する救済機関として諸外国では実施されており、日本でも必要不可欠な制度です。
 ぜひ「第3次案」を広めて、納税者権利憲章制定運動を進めましょう。

税のあるべき姿を体現
自由法曹団・弁護士 西田穣さん

 「納税者の権利憲章」(第3次案)の発表に深く敬意と歓迎の意を申し上げます。
 申告納税制度を原則とするわが国の税務体系は、主権在民を掲げる日本国憲法と極めて親和的であり、本来であれば、その申告納税制度をより充実させた国民本位の運用がなされるべきです。しかし、残念ながら実態は、税務職員等の権力行使が、国民本位の申告納税制度よりも上位に置かれているといっても過言ではありません。
 民間取引にまで権力的介入を行い、経済的弱者には実質的な増税を強いるインボイス制度、自主申告運動を弱体化させ、国民の自立と啓発を阻害する税務相談停止命令制度といった悪法が、この課税・徴収優先の実態を加速させることは間違いありません。また、わが国は諸外国に例を見ない税理士業務の無償独占が認められている結果、対価を支払う余力のない零細企業、個人が、適正な相談を受けることもできないまま、苦境に追い込まれていくことが危惧されます。「納税者の権利憲章」(第3次案)は憲法に則した国民の権利を明確にするものであり、本来の税務制度のあるべき姿を体現したものです。多くの国民が、こののっと権利憲章に則った権利を確立できることを期待します。

学んで税務行政正そう
全商連常任理事・税金対策部長 服部守延さん

 先の税研集会で、立命館ちか大学法学部の望月爾教授は「OECD(経済協力開発機構)加盟国で、日本は『納税者の権利憲章』を制定していない特異な国。欧米の多くでは国民・納税者の『自発的な納税協力』が奨励され、市民の助け合いによる申告援助や『大胆な手続き的権利の仕組みが法定化』されている。しかし、日本は罰則付きでの過酷な調査・徴収が横行し、いわば、納税者を脅かすことで『納税強制』が図られている」と指摘しました。
 税務署員の権限強化と納税者への厳罰化、さらには税務相談停止命令制度の創設など、自主申告運動を弱体化させ、申告納税制度を形骸化しようとしています。”記帳水準”を基準にした加算税の加重措置、電子帳簿保存法やデジタル化、最低生活費に食い込む税金を課しながら「滞納は悪」とレッテルを張り、人権侵害の徴収行政が横行する事態です。「納税者権利憲章」(第3次案)に貫かれているのは「生きることが優先する」「税制で商売をつぶすな」という憲法に基づく主権者意識です。この第3次案を大いに学び、生かすことで、不当な税務行政から身を守り、税務署の誤った認識を是正させましょう。

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