インボイス反対運動に動揺する政府 負担軽減策よりも実施中止こそ|全国商工新聞

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 消費税増税の突破口となるインボイス制度を巡り、「廃業が増え、将来の担い手がつぶされる」という痛切な訴えが政治を動かし始めています。
 公明党の税制調査会長が「小規模事業者の負担軽減」に言及し、複数の自民党国会議員が「導入反対や延期の意見続出」など党内議論の様子を発信しています。11月16日にはインボイス問題検討・超党派議員連盟も結成されました。
 インボイスに反対する声優、アニメ、演劇、漫画のエンターテインメント関連4グループなどの活動が影響を広げ、日本俳優連合に続いて、脚本家、児童文学者、美術家など文芸・美術6団体も導入に反対する共同声明を発表しました。インボイスに関する政府への意見書を今年送付した自治体は9月までに289に達し、昨年の3倍を超えました。消費税廃止各界連絡会は国会議員要請を続け、12月5日時点で全議員の98・9%に到達しています。
 11月30日、政府・与党はインボイス実施によって課税業者にならざるを得ない免税事業者への「負担軽減措置」をまとめました。①3年間は消費税納税額を売り上げに掛かる消費税の2割に抑え、②6年間は年間売上高1億円以下の事業者で、仕入れ額が1万円未満ならインボイス不要―とする方針です。
 しかし、この措置はフリーランスを想定しており、負担抑制効果は利益率の高い業種に限られます。実施期間も限定されており、新たに押し付けられる実務と負担増は解消されません。税制大綱をまとめる前に、こうした案を公表すること自体、高まる反対世論を無視できなくなっている証です。その狙いは、与党内の「実施延期」論を抑え込み、フリーランスなど反対勢力を懐柔することです。
 全商連は、国税庁から「インボイス発行事業者の登録期限には来年9月末とする特例があり、それまでは登録の取り下げも可能」との回答を受け、「登録申請の取り下げ書」を作成しました。
 取引先に言われるまま登録した業者もいます。学習・相談会を旺盛に開き、「いま書くべきは登録申請ではなく実施中止署名」「期限ぎりぎりまで検討できる」と広く呼び掛けることが急務です。

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