「マイナ保険証」義務化 反対の運動強めよう【Q&A解説】|全国商工新聞

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 河野太郎デジタル相の会見で突如浮上したマイナンバーカードと健康保険証の一本化。そもそも「マイナ保険証」ってどんなもので、なぜ義務化しようとしているの? 政府がそれほどまでして国民にマイナンバーカードを持たせたがっている理由は? 中止したいけど、どうすればいい?―など、マイナンバー(個人番号)に関するさまざまな疑問に答えます。併せて、白鷗大学名誉教授の石村耕治さんが、世界的には“周回遅れ”の危険過ぎるマイナ保険証の実態を論じます。

Q1 「マイナ保険証」って何?
A マイナンバーカードに健康保険証機能を加えたもの

 「マイナ保険証」とは、現在の紙またはプラスチック製の健康保険証を廃止して、マイナンバーカード(カード、図1)を保険証として利用するものです。

 カードに直接、保険証情報を入れるのではなく、個人情報を紐付けることで一体化させます。カード裏面のICチップに搭載された電子証明書を医療機関にあるカードリーダー(右の写真)に読ませ、顔認証または暗証番号の入力で本人確認をし、患者の資格情報等を取得します。このシステムは、21年10月に本格導入されました。
 6月に閣議決定した「骨太の方針2022」では「保険証の原則廃止を目指す」と明記されました。しかし、厚生労働省(厚労省)はこれまで「現行の保険証も利用できる」との認識を示していました。
 ところが、河野太郎デジタル相は10月13日、閣議後の記者会見で、カードと健康保険証の一体化に向けた取り組みを前倒しするために、保険証を「廃止」するとして、その期限を24年秋としました。国民皆保険制度の下で、保険証を廃止し、カードと一体化することは、カード取得の強制にほかならず、カードの取得は「任意」と定めた番号法にも反するものです。
 世論調査(紀尾井町戦略研究所)では「マイナ保険証への一本化でいいと思う」29.3%に対して「現行の保険証を廃止せずマイナ保険証と併用がいい」が34%、「マイナ保険証は不要」が27.7%を占めています(図2)。

Q2 なぜ「マイナ保険証」にしようとしているの?
A マイナンバーカードを普及するため

 この間、政府はマイナポイントなどでカードの取得を進めてきましたが、思うように進んでいません。保険証廃止をカード普及のための起爆剤にしたいのです。
 政府の「デジタルガバメント実行計画」(20年12月閣議決定)では、マイナ保険証を皮切りに、医療や介護、労働分野にとどまらず、運転免許証など各種資格から、果ては図書館の利用券まで、各種カード類の一体化を進め、最終的に、「唯一」の身分証明書としていく計画です(図3)。

 カード取得率が上がらない要因は、個人情報を全て個人番号に紐付けして、情報が守られるのかということに強い懸念があることです。
 デジタル庁が1~2月に実施したネット調査では、カードを取得しない理由で一番多いのは「情報流出が怖いから」(35.2%)です(図4)。実際、3月にはデジタル庁が管理している認証サービスでさえ個人情報の漏洩を起こしています。

Q3 「マイナ保険証」の利用は進んでいるの?
A 利用者はわずか3%

 「マイナ保険証」を医療機関で使えるようにするには、医療機関が「オンライン資格確認」システムに接続する必要があります。顔認証付きカードリーダーの導入などが求められており、小規模な医療機関には重い負担となっています。そのため10月23日時点で「マイナ保険証」が使える医療機関・薬局は全国で約7万5千件。国内の医療機関・薬局約23万件のうち約3割にとどまっています。
 全国保険医団体連合会(保団連)は、マイナンバーカードを健康保険証として使うオンライン資格確認システムの原則義務化を医療機関に求めている問題について、医療現場の実態・意識調査に取り組みました(10月14~31日)。医療機関1721件のうち、保険証廃止に反対するのは73%に上り、オンライン資格確認システムを導入した医療機関のうち41%でトラブルが発生し、「利用患者はほとんどいない」が85%を占めている実態などが明らかになりました(図5)。

 世論調査(紀尾井町戦略研究所)ではマイナ保険証の対応で最多は「利用登録をしたが、まだ使っていない。もしくは使える医療機関が見つからない」が35.3%で、「利用登録して、すでに使っている」はわずか3.3%でした(図6)。

 岸田首相は「マイナンバーカードを持たない人には新しい制度を用意する」としていますが、「現行の保険証を廃止してまで新しい制度がなぜ必要なのか」など批判が沸き起こっています。
 全国中小業者団体連絡会の交渉(11月7日)で、厚労省は「カードがない人に対しては、“保険証に代わる何か”を提供することになるとしか言いようがない。今後、検討する」との説明に終始し、代替案がないことが浮き彫りになりました。

Q4 マイナンバーカードの取得は進んでいるの?
A 取得は6割に満たない

 「え?まだ?そろそろ、あなたもマイナンバーカード」。政府は、テレビCMや新聞の全面広告を使ってマイナンバーカードの普及に躍起になっています。
 カード作成とキャッシュレス決済の登録で最大5千円分がもらえるマイナポイント第1弾に続き、最大2万円分がもらえる第2弾を6月30日にスタート。
 しかし、カード申請受付数の推移は図7の通りです。政府は23年3月末までに「ほぼ全ての国民が取得する」ことを目標にしていましたが、カードの普及率は57.8%(11月4日)にとどまっています。

 マイナポイント第1弾は、予算の増額や期間延長を繰り返し、2500億円(5千万人分)の予算で実施されましたが、利用者は2531万人にとどまりました。にもかかわらず、第2弾を9500万人が利用すると想定し、1兆8千億円もの予算を注ぎ込んで開始させました。
 政府は「保険証利用も公金振込口座の登録も便利になる」と宣伝しますが、本当に便利ならポイントを付与しなくても、カード作成は進むはずです。21年3月に申請受付数が急増していますが、マイナポイントを利用するためのカード取得の締め切りが3月だったためです(4月に延長)。ポイントをぶら下げなければ、カード作成が進まないのは、国民にとって利便性がないことの表れです。
 国会でも野党から「2兆円あれば、どれだけ困窮者支援ができることか。国立大学の授業料を無償化でき、学生たちに返済不要の十分な奨学金を給付できる」などと指摘され、「天下の愚策」と批判されました。

Q5 国はなぜ、マイナンバーカードを押し付けようとしているの?
A 個人情報を民間事業者に提供して利活用するため

 昨年9月1日、デジタル関連法が施行され、デジタル庁が発足しました。同法がめざすのは、国や地方自治体が保有する個人情報を大企業に提供し、「もうけのタネ」にするための利活用を広げる仕組みづくりです。個人情報を大規模に集める手段としているのが、「マイナンバーカード」です。
 カードを使って、税金や医療、福祉・介護、雇用・年金、子育てなどで行政手続きの利用を促し、政府が管理・運営するウエブサイト「マイナポータル」に個人情報を集めます(図8)。

 個人情報はカードと暗証番号でマイナポータルから見ることができ、その仕組みを利用して民間事業者に個人情報を提供しようとしています。また、カードに記録する電子証明書の発行番号と、民間事業者などが顧客に付けている識別番号を紐付けして民間での利活用を広げようとしています。
 政府は「カードのICチップには税金や年金、医療などの情報は記録されていないから大丈夫」などと宣伝していますが、マイナポータルに集まった個人情報の民間事業者による利活用が拡大すれば、漏えいや不正利用の危険性が拡大します。
 政府はマイナンバーカードを「デジタル社会のパスポート」と位置付けています。「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会を実現する」としていますが、めざしているのは国民にデジタル化を押し付け、カードを活用しない人たちの暮らしを否定する社会です。

Q6 マイナンバーカードを必ず持たなければならないの?
A 取得は義務ではない

 カードは、国内に住む全ての人に割り振られた12桁の個人番号や氏名、住所などが記載された顔写真付きのものです。事業者には従業員の番号管理が罰則付きで押し付けられました。
 「番号法」では「政令で定めるところにより、住民基本台帳に記録されている者の申請に基づき」発行されることになっています(16条の2)。カードを取得するかどうかは本人の自由で、義務ではありません。同法では、行政手続きにおいてマイナンバーの提供を求めることは、原則禁止されています(第15条)。カードを取得していても、「いらない」と思えば、いつでも住所地の市町村に返納することができます(同法施行令15条の4)。
 一方、税務署は、個人番号の利用事務である税の書類に個人番号の記載を求めることができます(個人番号利用事務)。国税通則法や所得税法などによって、確定申告書や法定調書等の記載事項として、個人番号が追加されました。国税庁は「個人番号の記載は義務」としていますが、未記載でも罰則はありません。
 民商・全商連はこの間、国税庁や各地の税務署と交渉し、「個人番号が未記載でも確定申告書を受理する。未記載を理由に不利益は生じない」ことを確認してきました。
 社会保険や国民健康保険(国保)、雇用保険、労働保険などの手続きでも、個人番号が未記載でも書類を受理しています。ハローワークのチラシでは「従業員が個人番号を提出しないことを理由にして賃金不払いなどの不利益な扱いや解雇などは、労働関係法令に違反または民事上無効になる可能性がある」ことを明らかにしています。

Q7 「マイナ保険証」を中止させるために何が必要?
A 「マイナ保険証はいらない」の世論と運動を

全労連がネットで呼び掛けた緊急署名には13万1千人を超える署名が寄せられています

 河野太郎デジタル相が「マイナ保険証の義務化」を宣言した10月13日、全国労働組合総連合(全労連)は、保険証を廃止してマイナンバーカードに一本化することに反対する緊急署名をネットで呼び掛けました。1日で7万5千人分が集まり、その後も広がり続け、13万1千人を超える署名が寄せられています(写真)。
 各紙も「マイナ保険証義務化」に対して一斉に「社説」で批判しました。「生活に不可欠な保険証を『人質』に、カード取得を事実上強制するに等しい」「(「朝日」10月15日付)、「政府は『誰一人取り残されないデジタル化』を掲げる。そうした理念に反する政策ではないか」(「毎日」10月14日付)、「法的には任意のカード取得を、生命に関わる保険証を使って事実上、義務化するものだ。あまりに乱暴すぎないか。方針の再検討を求めたい」(「東京」10月15日付)。
 医療現場でも反対の声が広がっています。
 日本医師会の松本吉郎会長は「マイナンバーカードがあまり普及していない。現在の状況を考えると、2年後の廃止が可能かどうか、非常に懸念がある」との見解を示しました。
 保団連は10月14日、「24年秋の保険証廃止を目指す」とした河野デジタル相の会見に対する抗議声明を発表し、「方針の撤回を求めるとともに、保険証で安心して受診できる国民皆保険制度を守ること」を強く要望しています。
 「マイナ保険証義務化」に反対する世論と運動は、急速に広がっています。義務化を中止させる世論と運動を一気に強めることが求められています。

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