消費税のインボイス制度の延期・中止を求め 各地の9月議会で意見書続く|全国商工新聞

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 消費税のインボイス(適格請求書)制度の実施延期・中止を求める意見書が各地の9月議会で次々と採択されています。民主商工会(民商)が請願書や陳情書を提出し、議員に働き掛け、保守系の議員も賛成しています。議会を傍聴した民商の役員や事務局員は「自治体での採択をさらに広げ、インボイス制度実施は必ず延期・中止させよう」と意気込んでいます。

長崎県佐々町 北部民商
リーフを全議員に配布 県内初の採択

佐々町議会を傍聴した北部民商の小濱進会長(左)と岡村眞澄事務局長

 長崎県北部の佐々町は9月議会で「消費税インボイス制度の実施延期を求める請願」を賛成多数(賛成8、反対1)で採択(9月22日)。国への意見書は全会一致で採択されました。意見書採択は県内で初めてです。傍聴していた北部民商の小濱進会長=スナック=と岡村眞澄事務局長は顔を見合わせて喜び合いました。
 請願書は、民商が6月議会に提出していたもので、永田勝美議員(共産)が紹介議員になりました。インボイス制度の内容が議員に十分理解されていなかったため、継続審議となりました。
 その後、永田議員は、全商連が作製した「あわてないでインボイス登録申請」リーフレットを全議員に配布。産業建設文教委員会(7月29日)で制度の内容を説明し、「道の駅に卸している農家やシルバー人材センターの会員も対象になるんだよ」などと説明しました。議員には自営業者や農家もおり、インボイス制度を自らの問題として受け止めていました。
 9月議会の同委員会では、農業を営む保守系の議員が賛成討論を行い、「これは請願趣旨に添って採択すべき」と訴え、5人の委員全員が賛成。本会議で意見書が採択されました。
 小濱会長は「リーフを通じて、インボイスの中身や実施後の影響について、議員の理解が深まり、請願採択につながったのではないか。意見書が採択されて本当に良かった。インボイス制度を中止させるため、引き続き頑張りたい」と話しています。

山形県酒田市 酒田民商
野党共闘で採択 単独で担当地初

酒田市議会を傍聴した(左から)酒田民商の伊勢守副会長、渡部実会長、農民連の梶昇司事務局長、酒田民商の齋藤香織婦人部長

 「おー、請願書が通ったぞ」―。山形県酒田市議会は9月28日、「消費税・インボイス制度実施の延期を求める意見書を政府に送付することを求める」請願書を賛成多数(賛成14、反対11)で採択しました。
 緊張した面もちで本会議を傍聴していた酒田民商の渡部実会長=木型、伊勢守副会長=資源回収、齋藤香織婦人部長=不動産賃貸、庄内農民連の梶昇司事務局長は、意見書が採択された瞬間、笑顔を見せました。
 請願書は酒田民商と庄内農民連とが共同で提出していたもの。県内では8番目、酒田民商が単独で担当する自治体としては初めてです。
 民商では、9月議会に向けて渡部会長と伊勢副会長が各会派を回り、「インボイス制度の実施延期を求める意見書を採択してほしい」と要望していました(8月26日)。事前に2人が地元市議に話していたこともあって、どの会派も親身になって話を聞いてくれました。
 「市政研究会」の佐藤弘議員、「志友会」の冨樫覚議員、日本共産党の市原栄子議員が紹介議員になって9月議会に請願書を提出。9月22日に総務常任委員会が開かれ、渡部会長らが傍聴しました。「消費税は国民が公平に負担するもので、インボイス制度によって“益税”が解消される」との意見も出ましたが、「インボイス制度に反対するものではないが、商店街を訪問しても、長引くコロナ禍やロシア侵略による物価高騰の影響で『商売が大変だ』という声が上がっている。実施は延期すべき」との意見が出され、委員7人のうち5人が請願に賛成。本会議で賛成多数での採択となりました。
 渡部会長は「民商単独では初の採択となり、野党共闘で採択されたことは、今後の請願提出への大きな励みになった」と話しています。

宮城県角田市 仙南民商
議員と学習、懇談 白石市に次いで

陳情書が採択されて笑顔を見せる民商役員ら

 「インボイス制度の中止を求める陳情書が全会一致で採択された!」―。9月28日に開かれた宮城県角田市議会。民商役員ら4人が傍聴する中、「消費税インボイス制度の実施中止を求める意見書の提出」を求める陳情書が採択されました。仙南民商が陳情していたもので、民商が担当する2市7町のうち、白石市議会に続く採択です。
 6月議会に、シルバー人材センターからインボイス制度についての請願書が提出され、審議を重ねて採択されたことが、今回の採択に結び付きました。
 民商は、「何としても来年10月からのインボイス実施を中止させたい」と、各自治体へインボイス制度実施の中止・延期を求める意見書提出を求める陳情に取り組んでいます。8月19日には、2市7町の民商会員や商工新聞読者の議員8人で、インボイスの学習を兼ねた懇談会を開催。「議員がインボイス制度の理解を深め、インボイスによって大変になる人たちの声をしっかり聞くことが大切」「丸森町では担当委員会で3回議論し、シルバー人材センターからの請願が採択された」「柴田町では、共産党町議が9月議会でインボイスについて質問し、農業団体に関わる保守系議員から『大変なことになる』との声が出て論議になった」などが報告されました。
 各自治体のコロナ対策や「インボイス制度への理解が進んでいるか」などを交流し、9月議会、12月議会に向けて意見書を提出することを確認しました。
 民商では残りの7町に対し、12月議会での意見書提出に向け、議員を訪問する予定です。

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