原材料等仕入れ値急上昇 全商連付属・中小商工業研究所 「2022年上期(3月)営業動向調査」|全国商工新聞

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リーマン・ショックの過去のピークに次ぐ水準 価格転嫁できず支援急げ

 原材料・商品の仕入れ値が急上昇していることが、「2022年上期(3月)営業動向調査」の最大の特徴です(全商連付属・中小商工業研究所調べ)。原材料・商品の仕入値DI値は、前々期21年上期の36.7から前期22年下期には60.1、今期22年上期は75.6と、2期連続で急上昇しました。このDI値は、リーマン・ショックが起きた過去のピーク(08年下期の80.4)に次ぐ値です。

原材料高騰は飲食店の経営を直撃しています(記事とは関係ありません)

 モニターからは、原材料やガソリン・軽油等の価格上昇の実態が多数寄せられています。建設資材等の物不足など、厳しい経営環境に直面している実態がうかがえます。
 「販売価格(単価)引き上げ」20.7%など経営努力も行われていますが、利益DI値は低迷しています。その要因は、急激な仕入れ値の上昇の、価格への転嫁が進んでいないことが考えられます。
 ガソリン、灯油、小麦、木材、鉄鋼はじめ原材料等の仕入れ値が急上昇したのは、コロナ禍による供給不足やロシアによるウクライナ侵略による供給不安が原因でしたが、今後、円安の影響も広がると考えられ、長期化が予測されます。運転資金等の確保への柔軟な資金繰り支援や、固定費を補助する直接支援策等が緊急に求められます。
 1年半後(23年10月)に実施予定の消費税インボイス制度が、中小商工業者の経営に、どのような影響を及ぼすかについても質問し、回答を求めています。
 インボイス制度の実施で、課税業者の約37%が「免税業者に課税業者になってもらうよう要請しなければならなくなる」と回答。免税業者は、課税業者になった場合の消費税や実務の負担増加を懸念していることも明らかになりました。このうち、廃業を検討すると答えた免税業者は28%に上ります。

DI値

 企業の景況感などを「良い」と回答した企業割合(%)から「悪い」と回答した割合(%)を差し引き、プラスなら改善、マイナスなら悪化等と判断する。景況局面等の判定に用いる。DIは「ディフュージョン・インデックス」の略。

 

経営危機回避へ対策を

価格高騰は続く 諦めずに交渉を

 全国商工団体連合会(全商連)の「原材料・仕入値の高騰・価格転嫁に関する緊急アンケート」「2022年上期営業動向調査」から、原材料価格などの上昇が、利益を圧迫している実態が浮かび上がりました。
 緊急アンケートで、原材料価格や仕入れ値の上昇分を販売価格に転嫁できていないと答えた業者は「ほぼできていない」「一部しかできていない」を含めて76%に上りました。
 中小企業庁「価格交渉促進月間フォローアップ調査」(2月)によると、「直近1年間のコスト上昇分のうち、何割を価格に転嫁できたか」の問いに「全く転嫁できなかった」事業者が2割に上ります。
 原油価格は08年のリーマンショック時の水準に値上がりしています。円安も1ドル130円台と、約20年ぶりの円安・ドル高になっています。
 日本は、原油や天然ガスのほぼ全てを輸入に頼るばかりか、多くの資材や食料などを外国に依存しているため、原材料費やエネルギーコストの上昇が続くことが見込まれます。

下請法や独禁法 建設業法規制も

 価格に転嫁できなければ経営危機に陥ります。右の事例にも留意しながら、価格転嫁できるよう、諦めず親事業者らと話し合いを持つことが求められます。
 なお、下請法における親事業者と下請事業者の範囲は①取引(委託)の内容②取引当事者の資本金の額の大小―という二つの条件によって決められています。
 下請法の適用とならない取引についても、独禁法違反に該当する場合もあります。
 また、建設業における元請負人と下請負人との関係は、建設業法で別途ルールが定められています。

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