全国商工新聞

 国の一時支援金を巡って、申請した中小業者に「不備」を指摘するメールが延々と送り付けられてくる「不備ループ」問題。全国商工団体連合会(全商連)は7月14日、中小企業庁要請で改善を要求。同日の経産省前の抗議行動も、多くのマスコミが取り上げました。中小企業庁は改善を約束しましたが、その後、改善は進んだのか―。現場の声を聞きました。

「不備ループ」改善を訴えた全商連の経産省前緊急抗議行動=7月14日

 日本共産党の田村智子参院議員は7月15日、内閣委員会で「不備ループ」問題を取り上げ、民主商工会(民商)会員の声を紹介しながら、「必要な支援金を受け取れない」と悲鳴が上がっている実態を告発。
 「『働いてきたことの全てを否定されているようだ』『人として扱ってほしい』と悲痛な声が上がっている。頭から不正を疑うような、申請を諦めさせるような対応を続けている」と中小企業庁を批判し、「内容を確認し、不備解消への対応を続けている案件は審査を打ち切ることがないようにすべきだ」「『不備ループ』により申請に間に合わない、ということにならないようにすべきだ」と改善を求めました。
 中小企業庁の飯田健太事業環境部長は「不正防止と両立させながら、どういう書類を提出すれば、事業実態や緊急事態宣言の影響を確認できるのか、引き続き検討する」と見直していく考えを明らかにしました。

申請者に送りつけられた「不備メール」の一部

「改善ほぼない」怒りと憤りの声

 その後、どうなったのか。兵庫民商の平松大佳事務局長は「改善は、ほとんど見られない」。「ループメールに改行が入れられた程度で、内容は変わらない」と指摘します。
 「営業実態の確認」のためとの理由で、審査事務局は、現金取引の業者について「事業に関わる経費について、通帳の写し」などをメールで求めています。
 「相変わらず同様のメールが送られている。中小企業庁に問い合わせると『改善に向けて見直しを進めているので、8月半ばまで待ってほしい』と言われた。改善は、まだまだ先ではないか」とあきれます。
 兵庫・西宮民商の担当者も「改善はほとんど見られない。15日以降も同じような『不備メール』が届いている」と現状を話します。
 「屋号・商号の入った請求書や支払明細書等を求められても、現金商売をしている個人事業主は、事業用と個人用の通帳が一緒のことも多く、通帳の出入りから営業実態を証明できるケースばかりではない。音楽家、俳優、翻訳・通訳者、著述家などフリーランスの働き方の実情を考慮していないとしか思えない。中小企業庁は、審査に当たるデロイトトーマツ(DT)社を指導しているというが、DT社が意に介していないように思われる。帳簿書類の保存は、税法上は義務化されているが、税務調査でもないのに『全部出せ』とどうして言えるのか。相談員は所属も地位も『言えない』としか答えない。そもそも、DT社に決定した経緯が疑問」と述べます。
 SNS上でも、不備ループの投稿が続いています。
 「顧客台帳を2年分出しても『宣言地域の個人顧客と反復継続した取引が確認できない』というので、もう申請を取り下げることにします。仕事が激減の嵐で売り上げが50%以上減ってもこの結果です。怒りを通り越してあきれてます。本当に助ける気があるとは思えない」
 「(現金取引で事業を15年続けてきたイベント業者)申請を取り下げるようとの執拗な不備ループに、もう疲れました。悲しい。大体毎日イベント出演なんて、どこもやれるわけないでしょ。職種によって、審査内容を変えられない素人審査。書類作りも、もううんざりです」
 「自分は音楽家として生計を立てて生きてきて、コロナでイベントは中止の嵐、延期→再延期と出演イベントはほぼなくなって壊滅的になり、わらにもすがるように申請してみたけど、不備ループで通らない。本当にこれまで社会の底辺で生きていたんだな、ってことを実感したこの3カ月でした」…

登録確認機関の事前確認は無視

税理士の大嶋誠さんも参加した兵庫県連の一斉事前確認

 昨年来の持続化給付金の申請手続きをオンラインに限定したため、営業実態の確認に困難を来し、給付手続きが遅延するなどの問題が生じたことから一時支援金(月次支援金)では、その教訓を踏まえて「登録確認機関」が設けられました。登録確認機関は事前確認の際、事務局が定める確認マニュアルに沿って、保存書類の有無を確認。確認すべき保存書類が存在しない場合にも、存在しないことについての合理的な理由があるかどうかを確認します。
 兵庫県商工団体連合会(県連)の一斉事前確認などに当たった税理士の大嶋誠さんは「行政が個々の営業実態を直接確認できないから、専門家に任せるということではなかったのか。不備メールが来ると、依頼者から『先生、ええかげんな事をしたんちゃうか』と疑いの目を向けられることもあるので、面目をつぶされるような思いだ。忙しい時期だったが“協力できるなら…”との思いでやったにもかかわらず、問い合わせても、何の説明もない。審査事務局が、われわれの判断を否定するなら、われわれの役割は何だったのか」と憤ります。
 業務委託に出したのは経済産業省であり、監督責任を負うのも同省です。

支払いを急いで中小業者救済を

 全商連は同省に、持続化と家賃支援の両給付金の審査請求と一次支援金の審査情報の開示を求めています。4回目の緊急事態宣言の発令下での東京五輪の強行開催により、感染爆発の勢いは止まりません。業者の状況は、さらにひっ迫しています。
 厳格審査は後回しにして、営業の存続が可能になるよう、政府は、まずは当面の支払いを急ぐべきです。

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