全国商工新聞

 菅政権が決定した、福島第1原発の放射性物質トリチウムを含む汚染水の海洋放出に対し、抗議・撤回の声が、広がっています。
 政府は、「海水で希釈し、国の基準値以下にして放出するので問題ない」と説明していますが、全国漁業協同組合連合会は「アルプス(多核種除去設備)処理水について関係者の理解なしに、処分しないとしてきた従来の政府説明と違う。福島県のみならず全国の漁業者の思いを踏みにじる行為だ」と怒りの声明を発表しました。
 全商連も、「原発事故による風評被害と新型コロナ禍の苦境にあえぐ、東北沿岸の漁業者のみならず、観光業など多くの中小業者の被害にも拍車をかけるもの」と抗議し、撤回を求める談話を出しました。
 福島では、汚染水の海洋放出に、福島県議会をはじめ県内の7割を超える市町村議会が反対や慎重な対応を求めてきました。
 政府が、放出を決定した後に、地元説明会を開催した際には、漁業者だけでなく、県農業協同組合中央会の会長が、「福島県産の農産物の輸入規制はいまだ解除されていない。他国に安全性を説明できないのに、国民が納得できるのか」と発言。旅館・ホテル団体の代表も「海洋放出による損害は、風評ではなく実害だ」と強調し、政府方針を撤回するよう迫っています。
 福島県の漁業関係者は、この10年間、風評被害に耐えつつ、漁業の再生に向け、粘り強く活動を続けてきました。そして今年3月末に「試験操業」を終了し、4月から本格操業を開始したばかりです。
 専門家の中には、そもそも汚染水の処分方法を議論した経産省の作業部会では、地層注入、海洋放出、水蒸気放出、水素放出、地下埋設の五つに限定した報告書しか提出されなかったと指摘。福島の原発事故を受け、海洋放出を行ってきた国々も見直しを始め、貯蔵タンク内での保存技術の向上やトリチウムの分離技術も、事故当時の10年前とは状況が大きく変わってきていると指摘する学者・研究者もいます。
 政府の「結論ありき」の姿勢を、被災者の暮らしと生業の復興という本来の目的に立ち返らせるためにも、「汚染水の海洋放出許すな」の声を上げていきましょう。

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