確定申告のワンポイントアドバイス(10)不動産を売却した場合|全国商工新聞

全国商工新聞

 土地や建物を売却し、利益が出たときは、分離長期(または短期)譲渡所得として、事業所得などの他の所得と分離して税額を計算します。
 申告年度に関する「譲渡の日」は原則として資産を買い主に引き渡した日となりますが、売買契約などの効力発生の日に譲渡があったものとして確定申告することもできます。
 分離譲渡所得に対する税率は譲渡した年の1月1日現在の所有期間で異なり、5年超の場合は15%(長期譲渡)、5年以下は30%(短期譲渡)です(住民税は5%、9%。なお、2037年までは、復興特別所得税として所得税額の2・1%が所得税額に加わります)。
 譲渡所得は「収入金額―(取得費+譲渡費用)―特別控除額」により計算しますが、そのうち、「取得費の計算方法」と「特別控除額(特例の活用)」の二つを紹介します。

■取得費の計算方法

 土地の取得費は、造成費などがない場合は購入価額(不動産業者の仲介手数料などを含む)となります。建物の取得費は購入(建築)価額から経過年数に応じた減価償却費または減価の額(非業務用資産の場合)を控除した金額となります。
 購入時の契約書に建物と土地の価額が別々に記載されていれば、それが各取得費計算の基礎となり、その記載がない場合でも建物にかかる消費税額の記載があれば、建物の購入価額の計算ができます。
 購入価額が分からない場合は、売却価額の5%を取得費(概算取得費)となりますが、取得時の時価相場を調べることで取得費とすることも可能です。土地の時価推移は一般社団法人日本不動産研究所発行の「市街地価格指数」を、建物については、建築統計年報の着工建築物構造別単価や国税庁が公表している「建物の標準的な建築価額表」などを参考にすると良いでしょう。

■特例の活用

 分離譲渡所得には、表にあるような特例があります。マイホームを譲渡した場合の3千万円の控除は適用される機会が多い特例です。また、相続により取得した空き家を譲渡した場合の3千万円控除もあります。
 なお、分離譲渡所得の赤字は他の分離譲渡所得とは通算できますが、他の所得との損益通算は原則としてできません。
 分離譲渡所得は取得費の算定や特例の要件などを細かくチェックして申告しましょう。


 >> 確定申告のワンポイントアドバイス(11)提出書類と提出期限

購読お申込みはこちらから購読お申込みはこちらから