全国商工新聞

 事前通知もなく突然、来店した税務署員が、店主の都合も聞かず、客がいる前で伝票やレジを調べ、使っていない伝票にナンバリングを打って、抜き打ち調査の実施をにおわせる―。こんな人権侵害の違法な税務調査を受けたのは、名古屋南民主商工会(民商)のYさん=飲食。民商の仲間と一緒に熱田税務署に抗議し、調査は延期されましたが、Yさんの怒りは収まらず、謝罪と調査撤回を求めています。

熱田税務署に税務調査の撤回と謝罪を求めた名古屋南民商の役員ら

 Yさんは名古屋市南区で飲食店を経営しています。50年以上続く老舗で、午前11時の開店前から行列ができるほどの繁盛店です。地元の人はもちろん遠方からお客さんが来店し、コロナ禍で売り上げは若干落ちたものの、店はにぎわっていました。
 熱田税務署の署員2人が突然、来店したのは暮れも押し迫った2020年12月20日午後2時過ぎ。昼の忙しさが収まり、店には数人のお客さんがいました。
「今日は何ですか?」
「調査です」
「調査なら、申告が終わってからじゃないですか」
「事前調査」
「事前に連絡くれるのが基本じゃないですか」
「そんなことはやっていません。これが普通です」
「はあ…」
 あっけにとられたYさんを前に、署員は「これからレジや伝票に触らないで、判を押しますので」と一方的に通告し、お客さんがいるというのに、今使っている伝票にナンバリングを打ち始めました。
 従業員が、「お客さんの前では控えてほしい」と訴えると、署員は奥の部屋に異動し、今度は20年12月分の伝票と帳面を照合。合っていることを確認すると、2階の倉庫にある伝票を持ってこさせ、ナンバリングを打ち、インクがなくなると「明日もまた来る」と言って、引き上げました。

税務署員が「触るな」と言い放ち、赤い紙テープで縛った伝票

 翌日、署員はナンバリングの続きを打ち、赤い紙テープで伝票を縛り、「これには触るな」と言い放ち、さらに「伝票が入っていないか」とゴミ箱の中を調べるので、妻・Kさんはびっくり。「こんなことをされたのは初めてやで」と言っても、聞く耳を持たず、「伝票は上から順番に使うように」と命じました。
 Yさんは5年ほど前にも税務調査を受け、それをきっかけに民商に入会。その時、初めて納税者の権利を学び、民商の仲間と一緒に税務調査とたたかい、納得して調査を終えることができました。しかし、今回、署員はYさんの都合も聞かず、強権的に調査を始めました。Yさんが「民商に相談せな、いかんで」と言っても、署員から「民商は関係ない。そんなことをしても意味ない」と言われ、民商に連絡するのをためらってしまいました。
 しかし、Yさん夫妻は「都合も聞かずに、お客さんがいる前で、伝票にナンバリングを打つなんて、やっぱりおかしい」と怒りを募らせ、妻のKさんは事のいきさつを事務局員に電話で話しました。
 民商ではすぐに三役会で話し合い、常任理事会でも報告し、年が明けた1月8日、熱田税務署に抗議に行きました。Kさんは、県連の服部守延会長をはじめ民商の三浦孝明、成澤直子の両副会長、事務局員と一緒に総務課長に抗議し、誤りを認めることと、調査の撤回を求めました。
 後日、総務課長は民商に電話をかけ、「一般論」とした上で「事前調査はあり得ません」と言ったものの、「実地調査と聞き間違えられたのでは」「ナンバリングも本人の了解の上」と、署員の行為を正当化。後日、担当署員からは「コロナ禍なので、調査は延期したい」との連絡が入りました。
 民商の仲間とYさんは「延期では納得できない。謝罪と調査撤回をするまで抗議を続ける」ことを確認。9日の名古屋国税局交渉で、Yさん夫婦も参加し①「事前調査」は違法行為で査察まがいの手法②売り上げの管理や記帳のやり方は納税者の権利で、署員が強制的に指導できるものではない③お客さんや店員がいる中で、店主の都合も聞かず、従うのが当たり前のような態度で指示するのは、明らかに職権乱用④コロナ禍で感染拡大の恐れがある中で、強引なやり方は常識を逸した行為―と追及することにしています。

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