「不給付、納得できない」「営業の実態見るべき」持続化給付金、家賃支援給付金で全商連が中企庁に要請|全国商工新聞

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要請行動に参加し、事業の実態を訴える静岡・浜北民商のKさん(左から2人目)

 持続化給付金・家賃支援給付金の申請期限(来年1月15日)まで2カ月を切る中、全国商工団体連合会(全商連)は11月19日、中小企業庁に対し、両給付金の速やかな給付と支援継続を要請しました。売り上げが大きく落ち込み、申請したものの「開業届がない」「みなし法人は対象外」など、しゃくし定規な審査で支援から取り残される業者が少なくありません。交渉では「このままでは年を越せない」と対応を迫るとともに、第2弾の給付金支給などを求めました。

「開業届ない」と一蹴

全商連の要請行動には各地から切実な実態や申立書が持ち寄られました

 交渉には、申請したものの何度もはねつけられている中小業者をはじめ、全商連の岡崎民人事務局長ら14人が参加。日本共産党の笠井亮衆院議員、岩渕友参院議員が同席しました。

確定申告書示すも「公的書類がない」

 自動車部品の輸出会社と業務委託契約を結び、昨年10月から仕事を始めた静岡・浜北民主商工会(民商)のKさんは、所属会社が業務を縮小したため独立し、個人事業主となったものです。
 開業届が必要な職種でもないので、届け出は提出していませんでした。今年3月から5月に仕事が激減、月に5万円にも達せず、10月になって一定回復したものの前年比3分の2の水準で、11月になり再び下落傾向にあります。
 持続化給付金を申請しましたが、「開業届がない」と不備メールが。開業を証明するため昨年9月に交わした業務委託契約書や確定申告書(2019年10月からの3カ月分)などを提出しましたが、「公的書類がない」と不給付に。Kさんは「確定申告書が公的書類でないというなら、何が公的書類というのか」と善処を求めました。
 東京都北区のOさんは、セラピストとして業務委託契約で働いています。今年1月に開業していますが、開業届は出していませんでした。
 営業実態を証明するものとして、業務委託契約書や振り込み記録、昨年は給与所得であった証明として源泉徴収票や、社会保険から国保に切り替わった書類など、さまざまな書類を添付し申請しました。しかし、持続化給付金事務局は「公的書類がない」の一点張りで、給付を認めていません。

亡夫の仕事継いだ妻の申請も認めず

 広島市で20年間、お好み焼き店を営むAさんは、緊急事態宣言を受け休業。持続化給付金を申請しましたが、「(Aさんの)開業届がない」と受理されていません。19年10月に夫が亡くなり、営業を引き継いだAさん。開業以来ずっと夫の名前で申告をしていたため、19年分も同じように確定申告を済ませました。
 持続化給付金の申請に伴い、Aさん名義で申告しなければならないことを知り、夫が亡くなって以降(11月、12月分)の確定申告を6月に行ったという事情があります。
 開業届が6月5日だったため、給付金事務局が「要件」とする「4月1日以前」に該当しないと、申請不備メールが返ってきました。税理士に営業事実を証明する「申立書」なども提出してもらいましたが、給付に至っていません。
 交渉の場に、Aさんの申立書を持参した広島県連の石立大助事務局長は「専門知識の乏しい高齢者の勘違いも許さないのは、あまりに非情すぎる。売上金額確定のために税理士の証明も認めているではないか。何のための給付金か」と訴えました。
 応対した中小企業庁長官官房総務課・課長補佐は「全国何百万社に出向いて確認することはできないので、書面審査、電子申告による運用をさせていただいている。しゃくし定規といわれるが、公的書類をご用意いただけなければ認められない」と繰り返しました。
 全商連の中山眞常任理事は「梶山経産相の答弁でも、救うべき人をきちんと救うという趣旨を表明されている。業者は具体的に確認してもらえるように努力している。公的書類に限るというのは撤回し、持ち帰り検討してもらいたい」と強く迫りました。
 笠井衆院議員は「中企庁の事業環境部長も、できる限り不備を解消できるようにすると述べているし、大臣も具体的に確認するよう指示すると述べている。現場を確認し、確実に届けきってもらいたい」と改善を求めました。

「人格なき社団」除外

 持続化給付金の審査では、新規開業者だけでなく「人格なき社団」も、事業実態があるにもかかわらず不当な扱いを受けています。

不給付理由示さず実態あるのに除外

 競輪場内でNPO法人の食堂を経営するUさんは、決算書、法人概況説明書、消費税申告もしています。2月24日から6月18日まで完全休業を余儀なくされ、持続化給付金を申請。しかし、法人番号を入力するとはじかれてしまいます。全商連は、同組合の売り上げ・決算書、店舗内外の写真なども示し、「非営利法人のNPOを給付対象にしているのに、事業をしている組合に給付しないのはなぜか」と訴えました。
 農民連常任委員の湯川喜朗さんは、「道の駅」で産直を行う事業者が支援の対象から外されている問題について、「システムを改修し、事業実態があるのか、ないのかで判断してほしい」と求めました。
 担当者は「人格なき社団には多様な実態があって、PTA、町内会と競輪場の店とを分ける公平・中立な基準を設定することができない」と、これまで同様の答弁に終始し、参加者のひんしゅくを買いました。

個別対応を求めて要請書81通手渡す

 岡崎事務局長は「書面審査で分からなければ、最終的には現場確認もできるはず。当初は『迅速性』を最優先にした審査が行われてきたが、今、重要なことは対象となる事業者に給付金を確実に届けること。年末にかけて多くの業者が廃業する事態があってはならない。申請期限の1月15日が近づいている。一人の業者も取り残さないよう全力を挙げてほしい」と述べ、全国から寄せられた要請書81通を手渡し、個別対応を求めました。

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