新型コロナ 消費税課税届出に特例 還付の場合も|全国商工新聞

全国商工新聞

 新型コロナウイルス感染症などの影響により、売り上げが落ち込んだ事業者を対象に、消費税の課税選択届出に特例が設けられました。課税期間の開始後であっても、課税事業者を選択でき、消費税の還付が受けられる場合があります。特例について佐伯和雅税理士が解説します。

 消費税については「課税選択変更の届出」について特例が設けられました。消費税の課税選択は、①その事業年度開始前日までに届出をし、②届出をすると、2年間届け出た内容に縛られる、というのが原則です。これを①について、個人事業主の場合には2021年3月31日までに提出すればよいとされ、また、2年縛りが免除されるというのが今回の特例です。

昨年同時期の50%減が要件

 特例は、20年2月1日から21年1月31日までのうち1カ月以上の売り上げが前年同時期のおおむね50%以上減少したことが要件となっています。この特例を利用することが予想されるのは、①免税事業者が設備投資などをする場合に課税事業者届出をするケースや②あえて課税事業者となっていた人が予定していた設備投資を行わなくなったケースなどが考えられます。
 今回の消費税の特例は、今般のコロナ禍で営業自粛をしたことにより売り上げが大きく減少した事業者や、コロナ対策の設備をした事業者、あるいはその両方に当てはまる事業者に影響があります。図1をご覧ください。売り上げも経費も下がっているが、補助金等を利用して設備投資をした場合に、消費税が還付になることがあります。通常は課税事業者を選択すると2年間は消費税の納税義務者となりますが、特例は1年限りで免税事業者に戻ることができます(図2)。ただし、基準期間(2年前)の課税売上高が1千万円超である場合には、免税事業者となることはできません。

課税の選択は慎重に判断を

 注意点としては、①課税事業者を選択して本当に還付を受けられるかは十分に検討してください。②課税事業者を選択した場合には、簡易課税を選択しないことです。この2点を誤ると還付を受けるどころか納税義務のなかった消費税を納税するということにもなりかねません。
 また、消費税の還付を受ける計画で、19年以前に届出をして、課税事業者となっていた人は、課税事業者の届出を20年分から取り下げることができます。例えば、予定していた設備投資や大量の仕入れが新型コロナの影響で中止になった場合などには、取り下げの届出を検討しなければなりません。売り上げの減少や仕入れ、設備投資などを勘案して、消費税が納税となってしまいそうであれば、課税事業者を取りやめる届出を提出してください。提出期限は21年3月31日です。
 届出の期限までにはまだ時間がありますので、どちらが皆さまにとって有利となるか、今から検討しておくと良いでしょう。

購読お申込みはこちらから購読お申込みはこちらから