地域社会の連帯広げる 業者運動の真価発揮を|全国商工新聞

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京都橘大学教授 岡田 知弘さん

 新型コロナウイルス感染症の拡大防止を図る非常事態宣言が5月末まで延長となり、中小業者を取り巻く経営・暮らしの状況はいっそう深刻になっています。「コロナから命と営業を守るために、今こそ声を上げ、連帯の取り組みを」と話す京都橘大学教授の岡田知弘さんに寄稿してもらいました。

 2019年10月の消費税増税後、地域の経済が冷え込んでいる中で、新型コロナウイルスの世界的規模での感染拡大によって、小規模事業者の皆さんだけでなく地域社会全体に新たな試練が襲いかかっています。
 政府は韓国や台湾のPCR検査体制から学ぼうともせず、また欧米各国での手厚い補償や中小企業・雇用支援、文化支援策とは程遠い内容の、後手の支援策で、補償なき「自粛」と「休業要請」を強いています。しかも、今年度予算の組み換えもせず、補正予算では、検査・医療体制の強化などを盛り込んだ厚生労働省予算6695億円の実に2・5倍にあたる1・7兆円を経済産業省の「Go Toキャンペーン」に充てました。命の危険と生活の不安にまったく向き合おうとせず、むしろ一部企業のもうけだけを保障する惨事便乗型の安倍政権の政策運営のひどさが際立っています。

グローバル化が被害を増幅拡大

 今回のコロナショックは、経済活動の基礎である、人とモノの交流を断ち切るものであり、政策判断によってそれが増幅する「人災」としての側面もあります。この間のグローバル化が、感染被害や二次被害、風評被害を増幅・加速しているといえます。
 大企業の多くがもうけと効率性に走り、国内での医療品生産さえできなくなる中で、中小・小規模企業の皆さんは国民や住民の皆さんに必要な商品やサービスを作ったり、売ったりしたり、土木工事や建築物を造るなど、社会にとって無くてはならない仕事をされています。商売だけでなく、地域社会においても、地域の自治会や消防団、PTA、保護者会などで社会を支える役割を果たしている人も少なくありません。まさに、中小企業・小規模企業は社会のインフラだといえますし、地域にとって必要不可欠な存在です。
 その点で、営業と生活が継続できるための補償金や給付金、固定費補助金、各種金融支援策の抜本的拡充、そして固定資産税をはじめとする税や社会保険料の減免と消費税の減税等を、共同の力で早期に実現、活用することが何よりも必要だと思います。憲法に基づいて、国と地方自治体が、幸福追求権、生存権、そして財産権を保障することを求める取り組みでもあります。
 併せて、中小企業・小規模企業振興基本条例を制定した自治体では、同条例に基づく具体的施策を求めていくことも重要です。未制定自治体では、個別の施策の要求とともに、これを機会に実効性の高い条例の制定を実現することも提案すべきです。

業者運動の真価試されている時

 民商の会員の皆さんは、自然災害に遭遇した方々も多いと思います。その度に自らの経営理念に基づき経営を再建・維持し、地域社会の復興にも貢献してきた経験と知恵があります。その成果を共有し、活用していただきたいと思います。
 この間、勉強会や働き方の改善に留まらず、子どもたちに弁当を配達している給食業者、学校に行かない子どもたちのために大広間を開放している旅館、テナントの経営支援のために家賃を低減させた不動産業者、テークアウトを始めたお店を紹介し合うサイトの立ち上げなど、仕事の特性に合わせて地域や仲間の経営の維持に努めている動きが広がっています。自分の経営だけでなく、仲間と連帯しながら地域社会の維持を図る、これまでの皆さん方の業者運動の真価が試されているともいえます。
 今こそ、声を掛け合い、連帯の取り組みを広げ、自治体に働き掛け、国の政治を変えていきましょう。このような感染症による大災害も想定した新しい社会経済、地域ビジョンづくりも、中長期的には求められます。
 グローバル化した大企業経済の脆弱さが現れた今日の事態に対して、地域社会の担い手として中小企業・小規模事業者の社会的役割が一段と高まったといえます。ぜひ、日々変わる情勢を正確にとらえ、知恵と連帯の力で、この危機を乗り切ってもらいたいと思います。
(4月29日記)

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