中小業者の営業継続へ公的支援を 実態伝え施策提案|全国商工新聞

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各地の県連自治体交渉

 新型コロナウイルス感染症の拡大と自粛要請に伴い、中小業者は売り上げの減少や営業損害など、かつてない苦境に見舞われています。各地の県商工団体連合会(県連)と民主商工会(民商)は、「商売を続けたい」「暮らしていける資金が欲しい」などの切実な声に応え、自治体に直接支援を求めるとともに、経営実態を交流し、「借りて生き抜こう」と融資学習会を進めています。

「県独自の対策急ぐ」 秋田県連に副知事回答 マスコミも注目

堀井啓一副知事(右)に要請書を手渡す秋田県連の小玉正憲会長。当日はNHKをはじめ多くのマスコミが取材に訪れました

 秋田県連は2日、秋田県に「中小業者の営業と生活を守るための緊急施策の要望書」を提出しました。堀井啓一副知事が応対し、県連の小玉正憲会長をはじめ、秋田、秋田北部民商から6人が参加しました。
 小玉会長は「コロナウイルスによって、県内の事業者が深刻な影響を受けている。国による融資の支援策が出ているが、先の見えない状況では、返せないから借りられない」と訴え。社会保険料や国保料などの減免や猶予、事業者の固定費への補助など10項目を要望しました。堀井副知事は「県独自の対策を急ぐと同時に、きめ細かな対策を検討する」と答えました。
 県連は意見交換後、県庁内で記者会見。民商会員から集めた「新型コロナ感染症緊急アンケート」をもとに、「資材が入らず困っている」(石材)、「お客さまと接する仕事だが、マスクや消毒液が足りない」(理容)など中小業者の苦しい実情を訴えました。当日の様子は、夕方から夜のNHKニュースで報道された他、地元紙「秋田魁新報」はじめ、ほとんどの新聞で写真入りで報道されました。会員からは「ニュース見たよ」「新聞見たよ」との声が寄せられました。

小口資金「体制強化」 神奈川県連 県が改善を表明

中小業者の窮状を訴える神奈川県連の鎌田保会長(前列右)

 神奈川県連は7日、「消費税とコロナ感染から中小業者の営業とくらしを守る緊急要望」をまとめ、県と交渉しました。県連の鎌田保会長をはじめ、7民商11人が参加し、県中小企業支援課の森山克弘課長、金融課の髙山明彦課長ら3人が応対。日本共産党の井坂しんや県議も同席しました。
 要請項目は①固定費の補助②政策金融公庫並みに長期据え置きに③税・保険料の納税緩和措置の徹底④個人向け小口資金の審査体制の強化⑤事業主も国保の傷病手当の対象に⑥スピード感を持った支援策の実施⑦消費税率5%引き下げ―の7点です。
 旅行業を営む参加者は「東日本大震災の時は先が見えて対策も取れたが、今回は見通しがなく、資金繰りのめどが立たない。固定費を補助する制度をすぐにつくってほしい」と訴え。「緊急小口資金を社会福祉協議会に申し込もうとしたら、窓口が混んでおり、申し込めるのは5月半ばになると言われた」「キャンセルになった給食分の補償を教育委員会に求めたが、制度がないと言われた。生活費が厳しい」など実態を伝え、改善を求めました。
 政府の支援策に対応する自治体の体制が弱く、多くの中小業者に届いていないことが浮き彫りに。県も実態を国に知らせ、県民・中小業者の目線で施策を実施するよう求めました。
 交渉後、生活援護課で緊急小口資金をすぐに貸し出すよう要請。担当者は「昨年1年間で受けたのと同じ件数が、2日間で申し込まれた。体制を強化するよう県社会福祉協議会にも要請している」と答えました。

融資だけでは限界 宮城県連 直接支援など訴え

遠藤信哉副知事(右端)に要請書を手渡す宮城県連の三戸部尚一会長

 宮城県連は6日、「新型コロナウイルス感染症拡大による経済的影響から中小業者の営業と生活を守る緊急対策」を県に対し要請しました。遠藤信哉副知事が応対。コロナ対策で参加者が制限されるなか、三戸部尚一県連会長、池原亮子副会長、日下秀雄副会長はじめ11人が参加したほか、共産党県議団4人が同席しました。
 三戸部会長は「収束のめどが立たない中、廃業に追い込まれた中小業者もおり、本当に大変な状況だ。自粛要請が出されている今、最も重要で切実なのは事業への直接支援であり、融資、借り入れ補助だけでは到底足りないのが現状。県独自の支援と国への働き掛けで、中小企業、フリーランス、個人事業主がこの困難を乗り越え、事業を継続できるようにしてほしい」と求めました。
 うたごえの店を経営する仙台民商の南部大地さんは「4月に入ってから予約が全てキャンセル。店舗が入っているホテルから営業自粛の要請があった。自粛がどこまで続くのか先が見えず、収入も途絶えて、非常に不安」と訴え。仙台市内で居酒屋を4店舗経営する仙台民商の山本聖彦さんは「自助努力で何とかやってきたが、どうにもならない状況。店舗向かいのパブでコロナ感染者が出て状況が一変した。繁華街は閑散とし、営業すればするほど赤字が増えてしまう。自粛するのは簡単だが、県や国からの直接補助、支援の確証がない」と切実な声を上げ、「中小、個人事業主の立場になって考えてもらい、助けてほしい」と強く訴えました。
 遠藤副知事は「私どもも同じ思い。未曾有の事態で、収束も見通せない中、手探りの状態で対策をしている。経済を支える中小零細、個人事業主が疲弊すると、県も立ち行かなくなる。無利子・無担保の融資制度の創設、雇用調整助成金など国からの支援をにらみながら、県としてどのように取り組めるか検討していきたい」と述べました。
 要請の様子は複数の地元メディアが取材し、特集を組んで報道されました。

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