全国商工新聞

経済アナリスト獨協大学教授 森永 卓郎さんに聞く

 昨年10月からの消費税10%への引き上げに加え、新型コロナウイルスの感染拡大で、日本経済は重大な危機に直面しています。あらゆる業種に影響が広がり、中小業者も「事業が継続できない」と悲鳴を上げています。「今、政府がやるべき対策は消費税をゼロにすること」と訴えるのは、経済アナリスト・獨協大学教授の森永卓郎さん。消費税10%増税後の日本経済はどうなったか。今後、日本経済はどうなるのか。景気を回復させるために何が必要か―。森永さんに話を聞きました。

GDPは年7.1%減 新型コロナも直撃

世界経済の危機

 ―消費税10%増税後の日本経済をどう見ていますか。
 昨年10月からの増税は、経済政策の面からいえば、とてつもない大失敗でした。そもそも安倍総理は、「リーマンショック並みの経済危機がくれば、消費税を増税しない」と言っていました。実は昨年の日本経済は、すでにリーマンショック並みの経済危機でした。
 世界経済はリーマンショック翌年の2009年から5年間、景気低迷に入り、その間の平均成長率は3.3%でした。昨年の世界経済の成長率はIMF(国際通貨基金)の見通しによると、推計2.9%です。つまり、リーマンショック後よりも悪い状態が世界で起きていたわけです。

リーマン超えも

 政府がさまざまな景気指標を集めて作成する景気動向指数(CI)に基づく基調判断は、昨年8月以降、「悪化」です(図1)。10月時点で「悪化」と分かっていました。景気が悪い時に消費税を絶対に引き上げてはいけないという鉄則を無視して増税に踏み切った。その結果、何が起こったかというと、とてつもない消費減が起き、昨年10月―12月期の実質GDP(国内総生産)は年率マイナス7.1%(改定値)と、とんでもないマイナスになったわけです(図2)。

 ―新型コロナウイルス感染拡大も経済に影響を与えています。
 政府は初動に大失敗をしました。早い段階で対策が打てなかった。学校を休みにしても感染は止まらないと、専門家は口をそろえて言っています。スピードが多少落ちるかもしれませんが、止まるはずがないわけです。感染が止まらないと何が起こるか―。GDPは1月―3月期も、4月―6月期もマイナス成長になると予測されます。
 これまで一番ひどかったのはリーマンショックが起きた翌年の09年で、実質GDPは5.5%のマイナスでした。今回、それよりもひどくなると思います。

東京五輪中止か

 さらに東京五輪が8、9割の確率で中止・延期になると思っています。国際オリンピック委員会(IOC)のディック・パウンド委員が、開催の判断基準は5月末までと言っていますが、そこまでに新型コロナの感染が終息するとは思えません。
 東京都の推計では、五輪は32兆円の経済効果といわれていました。中止になれば、それが全て損失する。そうなると7月―9月期のGDPもガタガタになります。日本経済はかつて経験したことのない、とんでもないマイナス成長になってしまうと見ています。
 消費税10%への増税に加え、新型コロナ、東京五輪中止の三つの苦境に陥ります。私が一番おかしいと思うのは、政府が新型コロナや景気失速に対して、何もしないことです。20年度予算にこれらの予算が1円も入っていない。長期転落の道をまっしぐらに突き進むと思います。

株価の暴落続く

 ―株価も暴落しています。
 東京株式市場の日経平均株価の終値が1万7千円を割りました(13日)。コロナが引き金を引いたのですが、根本は資産バブルが崩壊していると思っています。
 米国でも株価が暴落し、ニューヨーク証券取引所は12日、米株価指数の下落率が基準を超えたため、9日に続いて取引を一時停止するサーキットブレーカーを発動しました。米国内で新型コロナによって、とんでもない死者が出ているわけではないというのに、です。
 株価暴落は以前から分かっていたことです。ノーベル経済学賞を受賞した、米国のロバート・シラーという経済学者が「シラーPER」という指標をつくっています。株価の割高指標ですが、この指標が一定期間25倍を超え続けるとバブルになり、その後、必ず崩壊するという法則を打ち立てています。
 2000年初頭の「ITバブル」のとき、「シラーPER」は79カ月間、25倍を超えて株価が急落して崩壊しました。「リーマンショック」前のバブルのときは52カ月間、今回は70カ月間でした。過去と同じパターンです。リーマンショック後の09年、日本の株価は7千円程度まで落ちました。今回1万円割れも十分に考えられます。

もっと声上げて

 ―いま、政府がやるべき対策は。
 消費税をゼロにすることです。三つの苦境から抜け出すには、それしかありません。今年の日本経済は戦後かつてないほど失速するでしょう。そうならないため、2年、最悪1年でもいいですから、消費税をゼロにすることが簡素で効率的、公平なやり方だと思います。
 東日本大震災後の復興対策予算のようなことをやると、それを名目にして各省庁が自分の都合がいい予算を、片っ端から取るという火事場泥棒的なことが起きる。しかし、消費税減税は、誰の利権にもならないわけです。だから一番公平なやり方です。
 安倍政権は株価で維持できていたようなもので、株価が暴落すれば、政権交代もあり得るし、今回のバブル崩壊は資本主義社会にくさびを打つ可能性もある。
 増税、財政切り詰め一直線をうたう財務省の“カルト教”から抜け出して国民はもっと怒るべきです。中小企業の皆さんも、消費税ゼロにしろの声を上げてほしいですね。

もりなが・たくろう

 1957年7月生まれ、東京都出身。東京大学経済学部卒業。日本専売公社、経済企画庁、総合研究所などを経て現職。『消費税は下げられる!借金1000兆円の大嘘を暴く』(角川新書)、『なぜ日本だけが成長できないのか』(角川新書)など著書多数。テレビやラジオ、講演などでも活躍中。

購読お申込みはこちらから購読お申込みはこちらから