増税「対策」と称し、お手盛り 20年度中小企業予算の特徴|全国商工新聞

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景気の下支えと痛みの代償措置

 通常国会が開幕しました。
2019年度の補正と20年度当初の二つの予算案が審議されます。一般会計の総額は102兆6580億円となり、過去最大を更新しました。19年度補正予算案と合わせると、「15カ月予算」の総額は一般会計で106兆円に迫ります。消費税率の引き上げや海外経済の低迷で景気の悪化が鮮明になり、安倍政権も景気を下支えするとして新たな「経済対策」を打ち出さざるを得なくなったためです。
 安倍首相は増税にあたり、「経済対策」で「いただいたものを全てお返しする」と宣言。自動車、住宅購入時の税制優遇や複数税率、中小店舗でのキャッシュレス(非現金)決済への「ポイント還元」を導入しました。増税に対応する経済対策や痛みに対する代償措置、アベノミクスを担う一部中小企業に対する“お手盛り”などが目立ちます。

小規模企業への支援は限られる

 経済産業省の担当者は、中小企業・小規模事業者は「経営者の高齢化」「人手不足」「人口減少」という構造変化に直面しており、加えて、働き方改革、社会保険適用拡大、賃上げ、消費税10%増税・インボイス導入など相次ぐ制度変更に対応する必要に迫られていると指摘。その「苦難や痛みに対する手立てに重きを置いた予算配分になっている」と説明しますが、地域密着で「事業存続に使えるものはないか」との問題関心を持つ小規模事業者に、使い勝手の良い補助・支援制度は限られています。
 経済産業省が計上する当初予算は1111億円で例年並みの少額ですが、在日米軍駐留経費いわゆる「思いやり予算」1974億円(2019年)にも遠く及びません。補正は4067億円(前年度2634億円)と増額しています。
 項目別で見ると①事業承継・再編・創業等による新陳代謝の促進(補正64億円、当初148億円)、②生産性向上・デジタル化(補正3610億円、当初311億円)、③地域の稼ぐ力の強化・インバウンドの拡大(補正18億円、当初261億円)、④経営の下支え、事業環境整備(当初335億円)、⑤災害からの復旧・復興、強靭化(補正375億円)です。
 特筆されるのは、②の生産性向上の中で、中小企業基盤整備機構(「中小機構」)の運営費として3600億円が計上されていることです。これは従来「ものづくり補助金」「IT導入補助金」「小規模事業者持続化補助金」として個別に予算化されていたものを、中小機構の業務として一体化し、年度をまたぐ継続的な支援を行うようにしたものと説明します。

使える補助金は積極的に活用を

 この三つの補助金は、これまで多くの中小業者が、獲得に挑戦し、経営改善等に生かしてきています。痛みに伴う代償措置とはいえ、拡大されていますので、大いに活用していく必要があります(すでに利用した事業者も応募は可)。
 ⑤では、災害復旧・復興のため、台風19号被害などを受けた被災地の事業者に向け、グループ補助金(190億円)、自治体連携型補助金41億円、持続化補助金58億円等が予算化されています。
 グループ補助金は、宮城、福島、栃木、長野の4県で受け付けが始まっています。被災地域の中小企業等のグループ(2社以上)が復興事業計画を作成し、県から認定を受けた場合に施設・設備の復旧・整備について4分の3の補助を受けることができます。
 また、持続化補助金は、小規模事業者が復旧・復興を推進するために、経営計画を作成し、事業再建に向けた機械設備の購入等が補助されます。上限200万円(宮城、福島、栃木、長野に所在する事業者。その他被災10県は100万円)。
 機械装置費、設備処分費、車両購入費、広報費、外注費などが広く対象になります。交付決定前に実施した事業にも遡及適用が認められる場合もありますので、支援機関等と相談しながら利用していく必要があります。

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