「換価の猶予」で税負担軽減 安心して商売できる
消費税が一括で払えないときなどに、納税者の権利として分納できる申請型「換価の猶予」制度の活用が広がっています(別項)。各地の民主商工会(民商)では、申請書の書き方などを学び合って提出。「換価の猶予」を実現した会員から「負担が軽くなって延滞税も免除になって良かった」と喜びの声が上がっています。
延滞税1万7700円が免除 計画的に分納進め
京都・南民主商工会(民商)東和支部の井上京子さん=印刷=は4月23日、消費税の申請型「換価の猶予」を実現しました。「消費税を一括で払うのは負担が重過ぎる。中間納付もあるので、分納が認められて良かった。延滞税も免除になった」と笑顔を見せています。
2年前に父親が亡くなってから長男が事業主になり、井上さんが経理を担当するようになりました。
確定申告はしたものの、「消費税が一括ではとても納められない」と悲鳴を上げ、昨年から「換価の猶予」を申請するようになりました。昨年は消費税を1年かけて分納し、3月末に延滞税を含めて完納しました。
今年も民商事務所で申請書類を書き上げ、58万円の消費税を12回に分けて納付する計画を立て、4月半ばに書類を提出。10日ほどで「換価の猶予許可通知書」が送られてきました。消費税を一括で納付すると事業や生活の継続が困難になる恐れがあると認められたものです(国税徴収法151条の2第1項)。
「延滞税免除通知書」も同封されており、昨年の延滞税について、換価の猶予を認められた以降の延滞税1万7700円が免除となりました。
井上さんは税務署に電話をして確認したところ、「払い過ぎになっている昨年の延滞税は今年の消費税に充当する」と言われ、「少しでも払う消費税が減って良かったわ」と二重に喜んでいます。
民商で学び申請書記入 仲間と一緒心強い
群馬・前橋民商は4月16日、前橋税務署に申請型「換価の猶予」の申請を行いました。石橋フジ江さん=新聞販売=と山崎克政さん=とび=が申請書を提出し、2人とも4月26日付で「換価の猶予」が認められました。
石橋さんは12回に、山崎さんは9回に分けて納付することができます。
春の運動の班会で「消費税を一括で払うのは大変」「毎年、銀行から借り入れをして払っている」などの声や、10%への増税、インボイス(適格請求書)制度導入への怒りが広がりました。
3月23日には換価の猶予制度の学習会を開き、「そんなにいい制度なら活用したい」と石橋さんや山崎さんも参加し、申請書の書き方などを学びました。
申請書を提出する時は「民商として申請にきた」ことを税務署に伝え、総務課と徴収課が応対。申請書はすんなりと受理されました。
「緊張しました」と石橋さん。山崎さんは「不安だったけれど民商の仲間が一緒だったので心強かった」と話していました。
延滞税の減額・免除も 換価の猶予とは
誠実に納税しようとする納税者が(1)所有する財産を換価(売却)することによって、事業の継続または生活の維持を困難にする恐れがあるとき(2)財産の換価を猶予することが、換価することよりも国税の徴収上有利であるとき-のいずれかに該当する場合に、財産の換価を猶予できるという分納制度です。
納税者が申請できる申請型に加え、税務署長などの権限で行う職権型があります。申請型は納期限から6カ月以内に申請書が提出され、「換価の猶予」を受けようとする税金以外に滞納がないことなどの要件があります。
「換価の猶予」が認められると、その期間に差し押さえた財産の換価ができなくなり、差し押さえによって事業継続や生活維持を困難にする場合は差し押さえを猶予、解除することができます。
また、延滞税も減額・免除されます。単なる「分納」では本税に加えて延滞税の負担が重くなってしまいますので「換価の猶予」を積極的に活用しましょう。
全国商工新聞 2018年6月25日付
税務署の更正処分取り消す
所得税の減額勝ち取る=愛知・名古屋東部民商
仲間の支えで審査請求
「更正処分」取り消しを求めて国税不服審判所に「審査請求」を行っていた愛知・名古屋東部民主商工会(民商)の杉本洋さん=塗装=は先ごろ、所得税の更正処分の一部取り消し(2013、2014年)と全部取り消し(2015年)で22万4200円の減額を勝ち取りました。「1人ではこの結果は得られなかった。民商の仲間の支えがあったからたたかうことができた」と喜んでいます。
杉本さんに千種税務署から税務調査の連絡があったのは2016年8月。民商で対策会議を開き、役員が立ち会って調査を受けることを決めました。
2013年から3年間を対象にした調査が9月から始まり、杉本さんは調査理由を明らかにすることを求めましたが、調査は一方的に進められました。
立ち会いがいては調査できないと、千種税務署は2017年2月、一方的に「更正処分」を行い、仕入れや売り上げなど同業者比率による推計課税で所得税を、取引先への反面調査で算出した消費税を課税しました。
これを不服として杉本さんは2017年5月18日、(1)調査担当職員が行った調査の手続きに違法がある(2)推計の必要性および合理性がない-ことを主張し、「処分の全部取り消し」を求めて国税不服審判所に審査請求を行いました。
審判所では高橋進会長や民商事務局員が代理人として出席し、杉本さんと一緒に争点整理や処分庁証拠書類の閲覧請求、口頭意見陳述などを行い、名古屋国税局とも交渉してきました。
納税者の権利を主張し不当な調査とたたかい、審判所から4月19日付けで「裁決書」が届きました。
審判所は杉本さんが主張してきた調査の違法性や推計課税に必要性、合理性がないことについては「主張には理由がない」と退けたものの、千種税務署が同業者として抽出した43件のうち管轄区域に隣接していない税務署管内の同業者11件を選定したことは「合理性に欠く」と指摘。これらの同業者を除外して平均必要経費を計算することが相当と判断しました。
審判所はこれを基に平均必要経費率を算定し、納付すべき所得税額を算出。いずれも更正処分の税額を下回ったことから、2013年は7万6000円(加算税含む)、2014年は9900円が減額され、2015年は13万8300円全額が取り消されました。
消費税については、更正処分は適法と判断されました。
解説 税務署の処分に不服 「申し立て」で正せる
税務署長等が行った処分に不服がある場合に、その処分の取消しや変更を求めて不服を申し立てができます。不服申し立てから訴訟までの流れが表のとおりです。
不服申し立ては原則として国税不服審判所に対して直接、「審査請求」をします。「税務署に再度、調査をし直してほしい」などの場合は、「再調査の請求」を選択することができます。いずれも期間は「更正処分通知書」などを受け取った翌日から3カ月以内です。
申立人や代理人は口頭で意見を述べる権利(口頭意見陳述)があり、税務署や審判所に出向いて処分に対して意見を述べることができます。民商では班や支部の仲間が代理人になって意見を述べ、申立人を励ましています。
審査請求では原処分庁(税務署長)に対する質問権があり、原処分庁を出席させて納税者は処分理由などを質問することができます。
不服審判所長は、税務署長の処分が正しかったかどうかを調査・審理し、その結果を「裁決書」によって「却下」「棄却」「全部または一部取り消し」を納税者と税務署長に通知します。
裁決は税額を増やす、加算税を重加算税に変えるなど、税税務署長が行った処分よりも納税者に不利益になる処分を課すことはできません。
全国商工新聞 2018年6月18日付
消費税が換価の猶予に 無理なく計画的に分納
延滞税8万円免除
岩手・一関民主商工会(民商)の黒木和成さん(仮名)=土木=は2月8日付けで「延滞税免除通知」を受け取りました。法人税と消費税の「換価の猶予」(申請型)が認められ、2017年2月15日から2018年1月30日までの延滞税が免除になったものです。8万6100円分の納税義務が消滅し、「換価の猶予」の1年延長も認められました。「皆さんと一緒に頑張って良かったです」と黒木さんは笑顔で語っています。
黒木さんは2016年10月から11月にかけて一関税務署から税務調査を受けました。売り上げの集計ミスが指摘され、約400万円の追徴税が発生しました。
容易に払える額ではなかったため、同業者の知り合いに相談。「民商の事務所に行って相談した方がいいよ」とアドバイスを受け、2017年1月5日に事務所を訪ねました。
黒木さんは、延滞税が減免され払える額で分納できる「換価の猶予」を申請できることを知り、その場で民商に入会。アドバイスを受けながら申請書などの書類を作成しました。毎月の売り上げを考えて、12回の分納計画を立て申請書を作成しました。
1月下旬に民商の仲間と一緒に一関税務署と交渉し、工事が減少して売り上げの落ち込みに悩まされていることや、新たに発生した追徴税は「払いたくても払えない。延滞税が減免される換価の猶予を認めてほしい」と訴え、申請書を提出しました。
総務課長は「事業の状況やお気持ちはよく分かりました。誠実に対応していきたい」と回答。2月15日に「換価の猶予」が認められ、延滞税が減額されました。
それから1年間、黒木さんは遅れることなく計画どおりに追徴税を納め、完納の見通しが見えてきましたが、一気に納税すると資金繰りが悪化するため、今年1月に再度、民商に相談して「換価の猶予」の1年延長を申請し、2月13日に認められました。
「分納が1年延長され、延滞税も免除されて本当にうれしい。これも皆さんの支援があってこそ。追徴税を早く完納して仕事に打ち込みたい」と黒木さんは笑顔で語っています。
「助かる」と次々申請 活用呼び掛け
広島・福山民主商工会(民商)は毎年、申請型「換価の猶予」の活用を呼び掛けています。「払える金額で分納できる」との声が寄せられています。
橘高秀治さん=鉄筋工事=は3・13重税反対統一行動で確定申告書と併せて「換価の猶予」を申請しました。25万円の消費税を3回に分納する計画です。
橘高さんは班会に参加した時に「消費税を一括で納税すると運転資金が足らなくなる。どうしようか悩んでいる」と話したところ、事務局員から「換価の猶予を活用して払える金額で分納しよう」とアドバイスを受けました。
自分で作成した青色申告決算書を見ながら収支状況や分納計画を記入し、申請書を作成しました。
3・13重税反対統一行動で、橘高さんは「森友疑惑を徹底究明しろ」と声を上げながら元気に行進。「今でも大変なのに10%になったらどうやっても払えない。増税を何としてもストップさせたい」と話していました。
建築塗装の夫の医療費が重くのしかかっている婦人部員は、2日の消費税の集団申告に参加。「一括で納税すると生活費も医療費も足らなくなる」と不安を口にし、昨年に続いて換価の猶予を申請することに。50万円の消費税を6回の分納計画を立てました。「これ以上増税されたら商売も生活も維持できない。10%引き上げは絶対中止」と怒っていました。
飲食店を経営する会員は毎年、値上がりする仕入れ費に悩まされています。「お客さんのことを考えると、これ以上消費税を価格に反映できない」と利益を削りながら営業を続けています。
20万円の消費税をどうやって納めようかと悩んでいましたが、民商のニュースで「換価の猶予」が目に入り、12回の納付計画を記入して申請書を作成しました。
申請書と財産収支状況書の2種類の書類を書くだけで申請できることに驚いていました。「一括で納税できずに悩んでいる人たちに、積極的に換価の猶予制度を知らせたい」と話していました。
全国商工新聞 2018年4月23日付
市県民税、国保税の滞納 350万円が執行停止
商売継続に展望開ける 消費税は「換価の猶予」に
市県民税と国民健康保険(国保)税の納付が滞っていた埼玉・三郷民主商工会(民商)の原田章さん(仮名)=鉄工=は2月26日付けで三郷市から「滞納処分停止通知書」が送付され、349万300円(うち延滞金は25万5600円)の滞納処分が停止されました。
滞納分は納めましたが、新規に国保税や市県民税が発生するために納付は行き詰まり、滞納額は300万円超に。7月3日に民商に相談した時、納付の意思があり、一時的に税金や国保税を納められなくなった時に活用できる「納税緩和制度」があることを知りました。
全国商工新聞に掲載されている納税緩和を実現した全国の仲間のたたかいを学び、記事も活用して民商の仲間と一緒に税務署や市役所と粘り強く交渉。その結果、消費税については昨年12月末に税務署長の職権による「換価の猶予」が認められ、国保税については今回、滞納処分の執行が停止されました。
全国商工新聞 2018年4月16日付
住民税・国保料滞納処分執行停止に
=山口・岩国民商
400万円納税義務消滅へ 事業継続しながら適用
住民税と国民健康保険(国保)料を分納していた山口・岩国民主商工会(民商)の川上明彦さん(仮名)=サービス=は、岩国市から1月23日付で「滞納処分執行停止通知書」を受け取りました。地方税法15条の7第1項第2号(滞納処分をすることによつてその生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき)が適用されたものです。執行停止が3年間継続すれば住民税と国保料を合わせた約400万円(うち延滞税290万円)の納税義務が消滅します。
請願書で実態示し実現
「滞納処分の執行停止」を求める請願書を提出したことが大きな力になりました。通知書を受け取った川上さんは「あらためて延滞金の額を見てびっくり。3年たったら納税義務が消滅することを学び、先行きが見えた。すごいことが実現した」と喜んでいます。
全国を旅しながら事業を行っている川上さん。持病を抱えているため十分に仕事をすることができず、2000年ごろから住民税や国保料が期日までに納められなくなりました。納付計画を立て職員と話し合って、毎月当期の住民税と滞納分の5000円、当期の国保料に上乗せして払える分を加え誠実に分納していました。
ところが昨年6月、担当者が代わった途端、市は差し押さえをちらつかせ、納付額の増額などを迫る「特別催告書」を職員名で通知しました。
川上さんは民商の仲間と相談し、「滞納処分の執行停止」を求める請願書を提出(8月18日)。持病を抱え、通院しながら仕事をし、次男も病気で就労困難となり、生活することで精いっぱいの収入状況であることや、住宅ローン(購入家屋は売却済み)や同和福祉援助金の残債があり、滞納処分が執行されれば事業や生活が立ち行かなくなることを訴え。国税徴収法153条1項の執行停止の要件や、「滞納処分の停止に関する取扱いについて」(事務運営指針=平成12年6月30日国税庁長官通知)で明記された事業を継続している場合の五つの要件(左に別項)にすべて該当することを示しました。11月になってから市の担当者から「執行停止処分の扱いとさせていただきます」との電話が入りました。
川上さんは文書での通知を要望。担当者は「近隣の市でも通知書を出していないし、岩国市も今までも出したことがない」と言い張っていましたが、「通知は、原則として文書で通知することになっている」と抗議し、「岩国市長名」で通知書が送られてきました。
事業継続の場合の滞納処分の停止
1 滞納者が納税について誠実な意思が認められること。
2 現金、預金、売掛金等の当座資産および棚卸資産以外に滞納処分を執行することができる財産がないこと。
3 当座資産等について滞納処分を執行することにより、直ちにその事業の継続を困難にする恐れがあること。
4 見込納付能力調査により算出した月平均支払可能資金額により毎月分割納付を継続した場合において、完納に至るまでおおむね10年程度の長期間を要すること。
5 資力の急激な回復が見込まれないこと。
全国商工新聞 2018年2月26日付
脅しに負けず是認に
譲渡所得の主張実る=宮崎・都城民商
税務調査を受けていた宮崎・都城民主商工会(民商)の清水伸治さん=古物商=は民商の仲間の支援で調査を乗り越え、1月26日、本人の申告を認める「是認」を勝ち取りました。税務署の不当な言い分に抗議し、毅然として仲間と一緒にたたかったことが力になりました。
「裁判も辞さない覚悟で調査に臨んだ。私の主張が認められて本当に良かった」と話しています。
清水さんは18年前(2000年)に他界した実父の遺産を相続しました。遺品の一部に巻物があり、2015年にオークションに出品したところ、高額な値段で落札され、譲渡しました。
事前に都城税務署に申告方法について相談し、16年春に譲渡所得を申告しましたが、17年10月、税務調査が入り、署員は「古物商なので事業所得として扱うのが妥当」と主張。本人への遺産相続であることの証明が困難なことを逆手にとって事業所得での修正申告を執拗に迫りました。
清水さんは民商に相談。民商では対策会議を開いて納税者の権利を学び、帳簿を整理して調査に臨みました。
11月17日の調査には安田陽平事務局長が立ち会い、「本人への遺産相続を、事業所得にするのはおかしい」と抗議。署員は理解を示さず、揚げ句の果てに「相続税の申告は時効(7年)があるが、今回のケースは巻物を譲渡した年から相続税が発生する」「遺産分割協議書を作成していないので法定相続人の実姉にも半分の取り分が生じる。実姉への調査も検討しないといけない」など法律を乱用し、脅しとも取れる言動を繰り返しました。
納得できない清水さんは17年12月27日、弁護士と一緒に税務署に出向いてあらためて見解を求めたところ、「相続した書画を他に売却・譲渡した場合に発生する所得は譲渡所得であり、仮に古美術商を営む者が相続して売却した場合であっても原則は同じである」ことを認めました。
しかし、今回の巻物以外にも相続した骨董品の何点かを事業用の商品と一緒に売却した経緯があるなどの理由で「巻物が事業用資産(棚卸資産)として組み入れられた状況が判断されやすい」として修正申告の内容と追徴税額を示しました。
年が明けて清水さんは、税務署に再度出向いて「修正申告の内容には応じられない」と自らの意思を主張、税務署からは「分かりました。今回の調査は是認で結構です」との連絡が入りました。
全国商工新聞 2018年2月12日付
税務調査 是認と還付勝ち取る
=岐阜・岐阜北民商
仲間の立ち会いが力 「消費税は預かり金」に抗議
税務調査を受けていた岐阜北民主商工会(民商)の長屋秀希さん=外壁工事=は12月20日、納得して調査を終了しました。所得税は計算違いが見つかり、2年分は追徴になりましたが、1年分は「是認」となり、消費税は還付になりました。調査の中では署員が「消費税は預り金」と発言したことについても抗議し、総務課長に謝罪させました。
総務課長が謝罪
調査対象になったのは平成26(2014)年から3年間。1件の売り上げ集計漏れと一つの経費の算入誤りが確認され、27年分と28年分の所得税は追徴になりましたが、26年については本人の申告が認められて「是認」となりました。また、本則課税で申告している消費税は、経費(仕入れ控除)の算入漏れが見つかり、払いすぎた分の還付を受けました。「初めての調査で『どうなってまうんやろう?』と不安やったけど、何回も役員に立ち会ってもらって本当に心強かった。税務調査になれば有無を言わせず税金を取られると思っていたけれど、税金が還付されて驚いた。民商に入っとって良かった」と長屋さんは笑顔を見せています。
岐阜南税務署から税務調査の事前通知を受けたのは2017年8月2日。すぐに岐阜北民商に連絡しました。
民商では長屋さんと同時期に調査になったもう一人の会員と一緒に二度の対策会議を開き、「納税者の権利」を学びました。
調査は10月18日から始まり、毎回、伊藤次雄会長をはじめ複数の役員が立ち会い、税務署員が同席を認めない資料提示の時は隣室で待機しました。
問題になったのは12月15日に行われた調査です。担当する2人の税務署員が口をそろえて「消費税は預り金です」と言い切りました。立ち会った足立和義副会長らが撤回を要求しましたが全く改めようとせず、長屋さんと足立副会長ら3人はその場から岐阜南税務署に行き抗議しました。
驚いたことに応対した総務課長も「消費税は預り金だと承知している」と表明。足立副会長は「国会では『消費税は預り金ではない』と回答しているし、裁判の確定判決でもそうなっている」「岐阜北税務署とも『消費税は預り金ではない』と毎年確認している」と総務課長の認識を批判しました。
「ちょっと確認させてください」と退席した後、席に戻ってきた総務課長は「ご指摘の通り、消費税は預り金ではありません。申し訳ありませんでした」と謝罪。「総務課長を含め税務署ぐるみで『消費税は預り金』と認識していたことが明らかになった。誤った認識を正せ」と強く求めました。
全国商工新聞 2018年2月5日付
税務調査 立ち会い力に是認や還付に
=東京・杉並民商
理由ただし争点絞る 民商で権利学んで
税務調査は平成25(2013)年から3年間の所得税と消費税を対象に行われました。
所得税は3年間とも本人の申告を認める「是認」となり、消費税は25年分が3万4200円、26年分は1万1800円の追徴でしたが、27年分は7万3100円が還付され、差引き2万7100円の還付になるという画期的な結果を勝ち取りました。
鈴木さんが荻窪税務署から税務調査の連絡を受けたのは2017年9月。「税務調査なら民商がいいよ」と同業者から聞いていた鈴木さんは杉並民商を訪ねました。応対した武藤幸子会長から「大丈夫、民商の会員になって一緒に頑張りましょう」と励まされ、鈴木さんはその場で入会。毎月第3月曜日に開かれている税金対策部会にも参加し、納税者の権利を学ぶとともに調査経験者の体験をしっかり聞いて調査に臨みました。
第1回の調査は10月24日に行われ、武藤会長をはじめ現在、審査請求でたたかっている役員、滞納の執行停止を求めて東京国税局と交渉している美容室を経営する夫妻など7人が立ち会いました。
署員は「税理士資格がない人がいては調査ができない」と立ち会いを排除しようとしましたが、鈴木さんは「私がお願いして来てもらった人たち。それより、なぜ税務調査になったのか、理由を教えていただきたい」と迫りました。
署員は「特にこれという調査理由はない。決算書の間違いや未計上があるので確認させてほしい」とだんだんと態度を軟化させ、鈴木さんは「売り上げ、広告宣伝費、交際費、福利厚生費、減価償却費など五つの勘定科目について3年分の直近から調査する」ことを確認させました。
11月16日の2回目の調査では、立ち会った4人の仲間が少し離れたところで見守る中、鈴木さんは納税者の権利を主張し、争点を絞って帳簿、請求書、預金通帳を開示するなどして堂々と調査に応じました。
12月18日の3回目は、税務署員が数字の資料を見せながら調査結果を説明。売り上げの計上漏れが1件ありましたが、仕入れに誤りはなく、車の減価償却等が落ちていたことから増差は出ずに還付になりました。「帳面のことや決算、税金のことを知らないので勉強したい。役に立てることがあれば協力したいし、仲間にも民商を知らせたい」と鈴木さんは意欲を見せています。
全国商工新聞 2018年1月29日付
市税滞納で競売の窮地 市と交渉し猶予に
=岩手・一関民商
困窮実態を示す
住民税や国民健康保険(国保)税の滞納を理由に、自宅と貸店舗を競売にかけると迫られていた新井忠雄さん(仮名)=不動産賃貸=は先ごろ、岩手・一関民主商工会(民商)に入会し、市と交渉して今年度内の競売を猶予(延期)させました。「私の思いを受け止めて背中を押してくれた民商の皆さんに感謝します。再度やり直したい」と決意しています。
新井さんは、20年ほど前、息子の進学に伴って多額の教育費が必要になったことから、一関信用金庫に融資を求めましたが、融資は一部にとどまり、やむなく残額を消費者金融(サラ金)から借り入れました。
当時は年利29.2%で、新井さんは返済しても元金が減らず、多重債務に陥りました。家族が大病を患ったことも重なり、サラ金への返済はもちろん、国保税や住民税の納付も滞るようになり、市税の滞納は200万円に達しました。
今年6月、一関市から自宅と貸し店舗を差し押さえたとの通知が届き、さらに「8月23日に競売にかける」と通知されました。
そのことを知った妹さんが「民商なら相談に乗ってくれるはず」と話し、8月17日に2人で民商事務所を訪ねました。事務局員は一関市との交渉を提案し、その場で民商に入会しました。
競売日まで2日に迫った8月21日、事務局員と一関市収納課を訪ねた新井さんは、「生活が困窮し、悪意をもって滞納したのではない」と訴え。係長らは「事情は分かりました。23日の競売はいったん延期します」と約束し、月末までに滞納の原因を書面で提出することを求めました。
その後、新井さんはアドバイスを受けながら「物件の競売中止を求める嘆願書」を作成し、8月31日に提出。係長は「年度内の競売は見合わせます」と回答しました。
新井さんは徐々に元気を取り戻し、月に1回のペースで収納課を訪ねて月々の収支など生活実態を報告するとともに民商の仲間の支援を受け、過払い金請求に着手し、前向きに歩み始めています。
全国商工新聞 2017年11月20日付
一方的な調査に抗議し、消費税仕入れ税額控除認めさす
=岐阜北民商
「頼れるのは民商」
岐阜北税務署の署員が篠田さん宅を訪ねてきたのは2015年7月14日。「所得についてお尋ねしたい」とする旨の手紙がポストに入っていました。
民商に相談すると、税務調査には11項目の事前通知が必要なことや、行政指導(お尋ね)には応じる義務がないことが分かりました。9月18日には、伊藤次雄会長らと一緒に税務署に出向き、「調査であれば事前通知をしてほしい」と署員に抗議。しかし、署員は篠田さんの主張に耳を傾けず、承諾なしで得意先への反面調査を強行し、一方的に調査を進めました。
篠田さんは消費税の仕組みを知らず、売り上げが減っていたので消費税が課税されるとは考えていませんでした。ところが、平成22(2010)年分の売り上げがわずかに1000万円を超えていることが分かり、平成24年に課税されることを知りました。
いつでも帳簿や領収書が提示できるように準備をしていましたが、署員は2月24日、「調査は終了しているので、もう資料は見ない。これが最終結果で変わることはない」と言い切り、経費分の消費税を全く認めず、売り上げに5%を課税した約45万円の消費税を示しました。
篠田さんは3月4日、民商の仲間と一緒に再び税務署へ。「税務署の言い分は乱暴過ぎる」と抗議し、帳簿と領収書を提示して「経費に対する消費税の税額控除を算入すべき」と訴えました。
事態は一転し、税務署員は1週間後、篠田さん宅を訪れ「経費分の消費税を全額認める」と調査結果を報告。消費税額は約26万円となり、納得した篠田さんは申告書を提出しました。
後日、民商では3・13重税反対全国統一行動後に税務署と交渉し、篠田さんの税務調査の問題を取り上げたところ、総務課長は「署員が調査を打ち切るなどと発言したことが事実であれば、その対応は間違っている。謝罪すべき内容」と誤りを認めました。
全国商工新聞 2016年5月9日付
消費税「納税の猶予」を実現=鳥取・米子民商
延滞税が免除に
鳥取・米子民主商工会(民商)のFさん=廃棄物収集=は3月16日、約17万円の消費税の「納税の猶予」が決定しました。国税通則法46条2項2号「納税者またはその者と生計を一にする親族が病気にかかり、または負傷したこと」が適用されたものです。
Fさんは昨年、病気治療のため入院し、退院後も安静が必要なため仕事が思うようにできない状態が続いていました。申告消費税の負担が重いと悩んでいました。
納税の猶予の要件に「本人または家族が病気やけがなどにより働けない場合」があることを知り、3・13全国重税反対統一行動の集団申告の後に猶予申請をするために準備を進めました。
提出する申請書は、妻のMさんが仲間のアドバイスを受けながら作成し、「病気により収入が減少し、一時に納税ができない」旨も詳細に記入しました。また、提出時には直近の収支状況も添えて担当署員と話しました。
数日後、納税の猶予許可の通知を受け取り、4月から来年1月までの10カ月間、毎月1万5000円の分納が可能となり、過酷な延滞税が免除になりました。
通知を受け取ったFさんは、笑顔で民商事務所に訪れ「これで安心して分割納付ができ、病気の治療に集中することができます」と喜んでいました。
全国商工新聞 2016年5月9日付
税務署員の暴言に抗議し納付強要を謝罪さす
=兵庫・姫路民商
「銀行の返済やめて税金払え」
兵庫県姫路税務署の署員から「銀行の返済をやめてでも税金を払え」と納付を強要された姫路民主商工会(民商)のFさん=建設=は2月25日、渡辺強司会長など民商の仲間とともに「憲法を守らない徴収をやめよ」と厳重に抗議。税務署は誤りを認め、謝罪しました。
5年ほど前から仕事が少なくなったFさん。親会社から消費税分の値引きを求められるようになって、消費税の支払いが滞るようになりました。税務署へ出向き請求書などで実態を示しながら分納し、転嫁できない消費税分は、利益を削りながら払い続けていました。
税務署に、「月々少しでも納付しますから」と電話で相談もしていましたが、延滞税は大きく、税額が減らない中で今回の納付強要が起こりました。 Fさんが「税金の支払いを待ってほしい」と何度か電話で相談したところ、代わったばかりの担当署員は「銀行の返済はできるのに税金は払えないのか」「全額一括で払ってもらう。最終通告だ」と横暴な返答。Fさんは「払えない自分が悪い」と思って、反論ができませんでした。
「税金を払えないことがここまで悪いのか、人間として生きる価値もないのか」と、やり場のない怒りを民商に相談したFさん。渡辺会長に励まされ、一緒に抗議することに。現状やこの間のやりとりへの怒りを訴えました。
同行した渡辺会長が「税金が一番と言うが、憲法の下に税法がある。生きる権利が一番だ」と強く抗議。税務署員は謝罪をしました。
Fさんは「民商に相談して良かった」と話しています。
全国商工新聞 2016年3月28日付
パソコン記帳学び65万円の特別控除実現
=広島・福山民商
パソコン記帳学習会で記帳を学び、2015年分の確定申告に挑戦した広島・福山民主商工会(民商)の中岡裕貴さん=機械機器設備=は複式簿記で青色決算書を完成させ、65万円の特別控除を受けることができました。
中岡さんは昨年まで、税務署が指定する申告会場に行き、申告書を作成していました。
2年前、住宅取得特別控除が終了し、税金が以前の3倍に。所得税と国民健康保険税はなんとか納付しましたが、所得税の予定納税と住民税が払えず昨年、民商に相談。予定納税は免除申請を行い、住民税は分割納付を認めるよう、市と交渉しました。
税負担の重さと記帳の大切さを痛感した中岡さんは、青色申告特別控除を受けて節税しようと、領収書や伝票をしっかり保存し、10月から北支部の記帳学習会に参加。領収書類の整理から始め、「触ったことがない」というパソコンへの入力に挑戦しました。
「自分にできるだろうか」と心配していましたが、のみ込みが早くすぐに慣れて、1人で入力できるようになり、3月1日には青色申告決算書が完成。初めての集団申告にも参加し、喜びを語っていました。
全国商工新聞 2016年3月28日付
群馬県前橋市の生存権無視の強権徴収
民商と市民の会が納税猶予求める
家賃収入を全額、営業用資産も容赦なく1万件超 差し押さえやめよ
差押禁止財産である年金や給与、児童手当も預金口座に振り込まれれば容赦なく差し押さえる―。群馬県前橋市では地方税の強権的な徴収が横行し残高が100円、ゼロという預金口座も差し押さえる異常事態となっています。昨年度の差し押さえ件数は1万件を突破。生存権を踏みにじる徴収行政に中小業者や市民から怒りの声が上がっています。
なぜこんな目に 住民が怒りの声
「自宅も作業場も奪われた。税金を納められなかった自分が悪い。でも滞納額を減らすため分納を続けてきたのに、なぜこんな目に遭わなきゃいけないのか」。前橋民主商工会(民商)の田中博さん(仮名)=プレート加工=は憤りをぶつけます。
10年ほど前からプレート加工の単価が下がり、売り上げが減少。そのころから固定資産税や住民税、国保税の納付が滞るようになりました。市と相談して毎月、3万円ずつを納付していましたが、納められない月もあり、市は土地と自宅兼作業場を差し押さえました。「相談に行くと小さな部屋に閉じこめられ、3万円じゃ足りない。5万円にしろと責められた。言いたいことも言えずに、従うしかなかった」と悔しさをにじませます。
昨年夏、収納課は分納額を7万円に引き上げるように要求。納付できずにいると、競売にかけるとの通知が届きました。滞納額は延滞金を含めると600万円。「食事も喉を通らず夜も眠れなかった。仕事に集中できず、いつも頭にあるのは税金のこと。本当につらかった」とその時の心境を語ります。
支部で対策会議を開き、10月になってから古谷諭副会長や店橋厚事務局長と一緒に収納課に出向き、「競売にかけられると作業場が奪われ、商売を続けられない」と訴えましたが、担当者は聞く耳を持ちませんでした。12月、市が土地と建物を競売にかけたことから、やむなく任意売却をしました。「市は収納率をあげることしか考えていない。業者がどんな生活をしているのか、実態をつかんで親身になって相談に乗ってほしかった」と話します。
固定資産税などが納めきれなくなった林信夫さん(仮名)=アパート経営。2年前から入居者からの賃貸料を全額差し押さえられています。
5年前にアパートを建設し、不動産管理会社と委託契約しました。空き室が出た場合、管理会社が保証料を支払うようになっていましたが、契約通りにならず、年間約100万円の固定資産税が納められなくなりました。
事情を踏まえ、取引銀行は借入金の返済を、金利を含めて棚上げに応じました。しかし、市はアパートを差し押さえ、2014年6月から賃貸料を滞納税金に充当。以来、収入は1カ月5万5000円の年金のみで、「毎日の食事代を500円以内に抑え、風呂に入る回数も電気代も減らしている。一人でいるとろくなことを考えず、何度、死のうと考えたことか…」と胸の内を明かします。
差し押さえの解除を求めて異議申し立てをしましたが却下され、納税の猶予申請や徴収猶予を求める請願書を提出しても市は認めようとしません。「裁判で保証料の支払いを求め、管理会社が空き室保証を支払う方向で進んでいるので、それまで徴収猶予を認めてほしいと言っても聞き入れてもらえなかった。年金も差し押さえられるのでは」と不安を募らせています。
最高裁判決盾に 強権姿勢変えず
前橋市の差し押さえが強まったのは2005年から。小泉政権(当時)の「三位一体改革」により地方交付税が大幅削減された時期と重なります。
04年に896件だった差し押さえ件数は、05年に2584件となり、14年度は1万768件に(表)。前橋市と人口(34万人)が同規模の高崎市の差し押さえ件数(市税と国保税)は1939件、人口の多い宇都宮市の2220件と比べ約5倍です。市税だけを比較すると、人口が同規模の秋田市の15倍と異常な差し押さえ件数です。
国保税の滞納件数も増加。高すぎて払えないという背景があります。2015年度にも国保税を引き上げた結果、40代の夫婦と子ども1人(小学生)の世帯で所得150万円の場合、年間の国保税は29万600円に。所得に占める割合は約2割に達します。
市議会では、日本共産党市議団が差し押さえ問題をたびたび取り上げてきました。市は「滞納処分の判断が遅れると延滞金が増加し、納税者の負担が大きくなる恐れがある」と強弁。差押禁止財産についても最高裁判決(1998年2月10日)を持ち出して「口座に振り込まれて預金化されれば差し押さえできる」と強行しています。児童手当の差し押さえを断罪した「鳥取判決」を「個別事案に対する判決であり、最高裁判決を是認したもの」と主張。強権的な姿勢をまったく改めようとしません。
前橋民商は09年12月に地域の民主団体などとともに「市税を考える市民の会」を結成し、相談会や学習会を開きながら市に対して差し押さえをやめるように申し入れてきました。大野豊文・民商会長は「『鳥取判決』が出て全国の自治体は徴収マニュアルを改善しているというのに前橋市は差し押さえの基準すら示そうとしない。生存権を脅かし、人格を否定するような市の徴収行政は絶対にやめさせる」と決意しています。
全国商工新聞 2016年3月21日付
「質問応答記録書」偽造され脱税扱い
抗議し納得の修正申告=広島・三次民商
税務署が謝罪 藤田英治さんの手記
脱税していたかのように「質問応答記録書」を偽造され、7年間さかのぼった調査を迫られた広島・三次民主商工会(民商)の藤田英治さん=農業。民商の仲間と一緒にたたかい、1年がかりで「質問応答記録書」をはね返し、納得の修正申告で終えることができました。藤田さんの手記を紹介します。
「一人では解決できなかった」
2014年9月、税務署員が農繁期の忙しい時期に突然訪ねてきました。調査では「自分で売り上げをごまかしたと語った」ことなどが書かれた「質問応答記録書」が作成され、署名・押印を強制されました。
友人が教えてくれた民商に相談すると、一緒に三次税務署に抗議に行ってくれました。
3・13重税反対統一行動で「税務調査の中止を求める」請願書を提出し、税務署と何度も交渉。質問応答記録書作成の法的根拠、脱税者扱いをした税務署の姿勢をただしました。しかし、法的根拠は示されず、質問応答記録書の破棄は「行政文書であり、できない」の一点張りでした。
そこで「保有個人情報廃止請求」と「訂正請求」を提出。税務署は異なる事実はない、質問応答記録書に署名および押印があるので偽造文書とは認められないとし、請求を棄却しました。その後の交渉で「破棄はできないが、内容に誤りなどある場合、質問応答記録書のやり直しを主張することは可能。調査年度を7年さかのぼると話したが、調査をするとは限らない」と回答。私は質問応答記録書の追加文書を作成して税務署に提出しました。
昨年夏、税務調査が再開しました。署員から追加文書の回答はなく、「税金を取るためだけに調査に来たのか?」の問いかけに署員は「はい」と答えたので、私の怒りは爆発。再度、民商の仲間と一緒に抗議し、署員は一言も言葉を発することができませんでした。
その後、担当署員が代わり、平成26年分の私の自主申告を基に売り上げから推計を行い、7年さかのぼることなく納得できる形で調査を終了しました。最後に調査責任者の統括官は、脱税扱いをした質問応答記録書を作成したことを謝罪しました。一人ではこの結果は望めなかったと思います。
いま、私は民商の相談会にも参加し相談者の話を聞くなど、自分の経験を役に立てたいと思っています。
全国商工新聞 2016年3月14日付
民商で権利学び交渉し差し押さえ解除へ
=広島・三原民商
広島・三原民主商工会(民商)の須藤武さん(仮名)=解体=は2月10日、三原市による自身の給与、月額15万円の差し押さえ解除を求めて交渉。民商作成の家計表を使いながら商売と生活の状況を示し、月々の分納を条件に、差し押さえの解除を約束させました。
2014年に税務調査を受け、税務署の言うままに修正申告をしたものの、納めきれない税金に悩んでいた須藤さん。この間、払える金額で誠実に納付を続けてきましたが、昨年3月以降、納付が困難となり、事業とは別に月々15万円ある給与収入は三原市に差し押さえを受けていました。
須藤さんが仕事で知り合った清瀬宗好さん=塗装=に勧められて民商を訪れたのは1月のこと。「納税者の権利を学び、きちんと主張すれば必ず道は開ける」と励まされ民商に入会しました。毎週水曜日に開催している要求解決道場に参加し、仲間と納税者の権利を学び合いながら、市役所との交渉に臨むことを決意。紹介者の清瀬さんが「僕も応援に行くよ」と励ましてくれたことも背中を押し、今回の交渉に臨みました。
三原市との交渉では実態を示し、「民商のみんなと毎月第4木曜日に納付に来るから、差し押さえは解除してもらいたい」と訴えました。市側は「民商の皆さんと分納に来てもらえるなら、分納誓約書を書いてもらうことを条件に差し押さえは解除します」と回答。無事に解除されることになりました。
また、同日税務署とも交渉し、分納額を月々10万円から8万円に減額してもらうことを約束しました。
須藤さんは「最初はどうなるかと思ったが、皆さんと一緒に頑張ることができ、なんとか払っていくことができそう。学び合い、助け合う民商の魅力を実感できた」と喜びを語り、「知人にも、民商を勧めたい」と紹介を約束してくれました。
全国商工新聞 2016年3月7日付
業者目線でアドバイス 自分で申告できる
=東京・葛飾民商
昨年7月、東京都葛飾区内で「浜田マリン」を開業した浜田寛之さん=釣り船・船体修理。初めての確定申告を前に、自分で勉強して、申告したいという思いから、葛飾民商に入会しました。
20歳から5年間、船体修理会社で働き経験を積みました。顧客との信頼関係を築き、満を持しての独立。開業してから約半年、確かな仕事と誠実な人柄が信頼され順調に業績を上げています。
困ったのは初めて迎える確定申告。何も分からず、税理士に頼むことも考えましたが、費用の高さに驚いて断念。以前、船体修理を請け負った江戸川民商の会員から「民商なら親切に教えてくれるよ」と紹介され2月8日に民商を訪ねました。
浜田さんの住む奥戸地域で役員を務める野口多吉さん=金型=と小林智子事務局長が対応。領収書を税目ごとに分けることや、売り上げを帳簿にまとめることなど、同じ業者の目線で一つひとつ教えてくれ、分からないことはすぐに聞くことができました。「これなら自分でもやれそう」と、その場で入会を決意しました。支部の学習会にも参加し、申告書を仕上げることにしています。
入会と同時に青年部にも入部。「青年部の人と顔を合わせるのが楽しみ。同年代の経営者とつながって、これからの商売や生き方に生かしたい」と浜田さんは期待しています。
全国商工新聞 2016年2月29日付
税務署に謝罪させ「呼び出し」調査を解決
=大阪・泉南民商
税務署から税務調査について「呼び出し文書」が送られてきた大阪・泉南民商の藤原ゆみさん=美装=は、民商に入会し納税者の権利を学んで、税務調査に対応。国税通則法に基づいて税務署は実地調査に「事前通知」が義務化されたことなどを踏まえて税務署へ抗議し、謝罪させました。「民商に相談していなかったら、どうなっていたか」と胸をなでおろしています。
藤原さんに、申告書の提出を迫る「呼び出し文書」が届いたのは2015年9月17日。夫の病気や母の認知症などが重なって、3年間税務署への申告ができずにいました。また、離れて暮らす藤原さんの長女の家に税務署が文書を送ったことも不安をかきたてました。
知り合いの弁護士に相談すると、民商を紹介され、すぐに相談。この時、税務署の通知が長女の家に送られたことや、「事前通知」なしで調査をするということが違法・不当ということを初めて知りました。
藤原さんは9月29日に民商の役員3人と税務署に行き、請願書を提出し抗議。数日後、税務署員は藤原さん宅を訪れ、長女の家に通知を送ったことを謝罪しました。
その後、民商で学び、教え合いながら3年分の申告計算をして税務署に提出。後日税務署から「申告通り受け付けた」と電話がありました。
藤原さんは「本当にホッとした。感謝でいっぱい。もっと早く民商を知っていたら、こんな大変な思いをしなくてもよかった。本当にありがとうございます」と喜びを語っています。
全国商工新聞 2016年2月29日付
所得税など25万円還付「更正の請求」実る
=宮城・気仙沼本吉民商
計算違いで過大な申告をしていた宮城・気仙沼本吉民主商工会(民商)のKさん=建築=は「更正の請求」が認められ、2月12日に所得税9万円の還付が通知されました。これにより事業税と国民健康保険(国保)税を合わせた25万円が還付され、市県民税も還付されます。「本当に助かった。自主計算ノートが力になった」と喜んでいます。
Kさんは以前から高い国保税に苦しんでいました。国保税は毎年、50万円ほどが通知されますが、期日どおりに納められず、滞納額が膨らみました。
昨年12月末に気仙沼市役所に出向いて「なぜ国保税がこんなに高いのか」と担当者に聞いたところ「所得が高いからですよ」と言われました。
すぐに民商に相談し、アドバイスを受けて再度、確定申告書を見直すことにしました。
Kさんは2年前に申告の相談で民商に入会してから記帳の仕方を学び、自主計算ノートを付け、領収書などの書類もきちんと保存していました。
2015年度の申告について、書類と自主計算ノートを付け合せたところ経費漏れや売上金額の間違いが発見され、180万円もの過大な申告になっていることが判明。再計算したノートを作成し、年明けの1月4日、気仙沼税務署に出向きました。
初めの計算ノートと再計算したノートの2冊を示して売り上げや経費のどこが間違っていたのか分かるように説明して、「更正の請求」を提出。翌日には税務署から「更正の請求」が認められるとの連絡が入りました。
全国商工新聞 2016年2月29日付
自宅の競売中止さす 中企庁交渉が力に
=兵庫・西宮民商
兵庫県信用保証協会が担保として押さえていた自宅の競売を裁判所に求めていた問題で、兵庫・西宮民主商工会(民商)の深田信之理事=飲食=は9日、同協会と懇談し、100万円の納付を条件に競売の取り下げを勝ち取りました。深田理事自身も参加した全国中小業者決起大会(1月28日)で中小企業庁(中企庁)に競売取り下げの請願書を提出したことが実ったものです。
阪神競馬場内で売店を35年間経営してきた深田さん。2014年に国税庁から売掛金の差し押さえを受け、競馬場からは売店契約を解除されました。休業を余儀なくされる中で、深田さんの妻で社長の弘子さんが経営不振による心労でうつ病になるなど、「この先どうやって生きていけばいいのか」と、思い悩む日々が続いていました。
深田さんに追い打ちをかけるように、神戸地方裁判所尼崎支部競売係から「担保不動産競売開始決定」の通知が送付されてきたのは15年10月21日のこと。「このままでは本当に生きていけない」と、保証協会との話し合いの場を持ちましたが、提示された競売取り下げの条件は借入残額の4分の1にあたる500万円の支払いでした。
奔走しましたが、集まった金額は100万円。収入源を失い、自宅を追い出される寸前という絶望的な状況でした。
転機となったのは、必死の思いで参加した全中連の中企庁交渉。生活実態の現状を説明し、「中小企業庁として、経営不振で住み家を失うようなことはやめさせてくれ」と請願書を提出しました。請願書提出後の9日に行った交渉では、かたくなだった保証協会の態度が軟化。すんなりと100万円の支払いによる競売の取り下げを認めました。
「急に保証協会の態度が変わった」と驚く深田さん。「あきらめずに中企庁に請願して本当に良かった。交渉でお世話になった全国の仲間にもこのことを伝えたい」と安堵の表情で語っています。
全国商工新聞 2016年2月29日付
仲間と解決策考え消費税・延滞税
換価の猶予実現=東京・北区民商
商売続ける展望見えた
1980年に独立し、まじめに仕事を続けてきた安芸さんでしたが、長期にわたる不景気にはあらがえず年々売り上げは減少。仕事がなくなることを恐れ単価の安い仕事でも断れずにこなしてきました。しかし、利益率も悪化の一途をたどり、赤字経営に陥りました。 赤字でも容赦なく発生する消費税の支払いに苦しめられてきた安芸さん。少しずつでも納めていこうと、20年以上懸命に分割納付を続けていましたが、滞納額は膨らむばかりでした。「このままでは消費税につぶされる」と、思い悩んだ末に民商に相談。定例開催している経営なんでも相談会・虹の会に参加しました。
相談員だけではなく、同じように金融や税金問題などで悩む相談者同士も交流しながら、みんなで解決策を討議。「悩んでいるのは自分だけではない」と励まされた安芸さんは、全商連発行の「税金が払えず困っている人へ」パンフをもとに、高過ぎる税金の仕組みや納税者の権利を学習し、税務署との交渉に臨みました。
妻の喜寿美さんと一緒に税務署と交渉。パンフの収支状況表を用いながら現在の経営実態や、高齢に伴う体調不良など生活状況も丁寧に徴収官に説明し、換価の猶予が認められました。
安芸さんは、1年後の換価の猶予再申請を視野に入れつつ、これからの1年で金融関係の見直しなど経営改善に取り組み、事業再生に向けて頑張ろうと決意を固めています。
北区民商では2年前から始めた確定申告後の納税対策学習会と納税の猶予集団申請の取り組みや、毎年2回行っている税務署懇談も生かしながら、15年は換価の猶予4人、納税の猶予1人、地方税の滞納処分の執行停止1人の成果を勝ち取っています。
全国商工新聞 2016年2月1日付
民商で権利と制度学び固定資産税納付で回収機構と交渉
=大阪泉佐野民商
実情と計画説明し 差し押さえ解除 分納に
固定資産税の滞納を理由に売掛金が差し押さえられた大阪・泉佐野民主商工会(民商)のAさん=ベアリング加工=は和歌山地方税回収機構と交渉し、10月16日、差し押さえを解除させ、分納を認めさせました。「機構はこちらの生活のことなど全く考慮しない対応だったが、民商で学習し、いろんな人に助けられて分納が実現した。がんがん働いて売り上げを伸ばし、税金を完納したい」と話しています。
固定資産税は以前、Aさんが和歌山県内に住んでいた自宅に課税されたものです。08年のリーマンショック後、売り上げが激減。住宅ローンが払えずに自宅は競売にかけられ、固定資産税も納付できなくなり、延滞金を含めて120万円ほどが滞っていました。
機構は5月28日付でAさんの親会社に対して売掛金などを調べる「取引等の調査について」を送り、6月11日までの回答を求めました。「回答せざるを得ないが、うちとしてもつらいのでどうにかならないのか」と親会社からの電話を受けたAさんは「これは放っておいたらあかん」とすぐに民商に連絡し、「分割納付をしたいが、どうすればいいか」と相談。「税金が払えず困っている人へ」(全商連発行)のパンフで学習し、納税緩和措置制度があることを知り、納税の延期や分割納付が認められるとともに差し押さえが解除されることなどを学びました。
Aさんは6月15日、同機構に出向いて滞納したことを謝罪し、「納付の意思はあるが、現状では一括納付は困難」「売掛金を全額差し押さえられると事業継続が不可能になり、生活が困窮する」ことを伝え、分納を要望。しかし、担当者は「話し合いの段階は過ぎている」「一括納付ができなければ、売掛金を全額差し押さえる」と言い放ちました。
民商の仲間からアドバイスを受け、納付計画を立てたAさんは6月25日に「徴収猶予」を申請。機構は「提出するのは構わないが、災害・重病等でないと申請が許可されるかどうかは分からない。本来は全額差し押えが可能だが、今回は、親会社もAさんのことを気にしているので給与相当分を除いて差し押さえの手続きをさせてもらう」と告げ、6月末に給与相当分を除いた20万円の売掛金を差し押さえました。併せて滞納額がなくなるまで毎月、売掛金を差し押さえることが通知されました。
「徴収猶予」は不許可となったものの、大阪社会保障推進協議会の対策会議に参加して弁護士にも相談。事業が継続できるようにみんなが知恵を出し合って対策を考えました。
9月10日に審査請求を行うと、機構は弁護士との話し合いの中でAさんが示していた納付可能額に沿う形での分納を提示。Aさんが審査請求を取り下げると、差し押さえは解除になり、分納が認められました。
全国商工新聞 2015年11月30日付
支部で対策会議かさね「200万円の追徴」はね返す
=名古屋南民商
税務署から通帳・資料取り戻し 修正の強要に反撃
税務調査をきっかけに名古屋南民主商工会(民商)に入会した飯塚伸吾さん=電気工事=は10月21日、民商と一緒に調査を進め、消費税38万円、所得税18万円(3年合計)の修正申告で終了しました。「税務署交渉では自分の主張をはっきり言うことができた。民商に入って本当に良かった」と話しています。
7月に税務調査の連絡を受けた飯塚さん。17日に署員が訪ねてきて24年から26年まで3年分の調査を受け、「通帳などの資料は持っていく」「税額は200万円ほどになる」と告げられました。
不安になった飯塚さんは知り合いだった名古屋南民商桜支部の下八重明さん=左官=に相談。「民商に相談すればいいよ」と言われ、24日に事務所を訪ね、その場で入会しました。
民商の仲間と一緒にすぐに税務署に出向いて資料を取り返した飯塚さん。その後、所属するみどり支部では3回にわたって対策会議を開き、経費などの出費をはっきりさせることにしました。
いつ、どこで、いくら支出したのかを出金伝票にまとめ、3年分の売り上げも再チェックして収支計算書を作成。税務署から何度も「数字が出ているので印鑑を持ってくるように」と催促されましたが「調査が終わっていないのに結論が出るのはおかしい」「資料をもっていかれたのも納得できない」と押印を拒否しました。
9月29日の税務署との交渉では署員が「資料の持ち帰りは、対象者の了解を得て行っている」と回答したことから、飯塚さんは「拒否できるような状況ではなかった」と強く抗議。交渉後、個別に個人課税第1統括官と第3統括官と話をし、「収支計算書の中身などをきちんと見てほしい」と要望しました。
10月6日の調査では、個人課税第3統括官が1人で来訪し、みどり支部に所属する清原晶子常任理事と事務局員が立ち会いました。飯塚さんは経費の中身やバックマージンの実態などを話し、中小業者が大変な状況に置かれている状況を訴え、税務署は飯塚さんの主張をほぼ全面的に認めました。
全国商工新聞 2015年11月16日付
市が差し押さえた工事代金から従業員給与12万円返還
=山口・岩国民商
市民税が払えず工事代金を差し押さえられた山口・岩国民主商工会(民商)会員の岩松勝己さん=建設=は9月30日、民商に相談し、すぐに岩国市の担当職員と交渉。工事代金の中には従業員の給与も入っており、国税徴収法49条「差押財産選択に当たっての第三者の権利の尊重」に反すると主張し、従業員の給与分12万円を返還させました。
岩松さんは「取引先からの工事代金約47万円のうち、34万3400円を市に差し押えられた。担当職員に『従業員の給料分が入っているので、その分だけでも返して』と求めたが、『そんなこと知らない』と言われた。何とかならないか」と民商に電話を入れました。
相談を受けた河脇晃史事務局員は「差し押さえする場合でも、『第三者の権利を害さないように努めなければならない』と法律で定められている。そんな乱暴なやり方はおかしい」と説明し、「すぐに通帳の記帳と、取引先に対する請求書、従業員の給与計算明細・出面(日雇い労働者などの日当)をそろえるように」とアドバイス。
その後、資料をもって民商事務所にやってきた岩松さんとともに市役所に向かい、担当者と交渉しました。
交渉では国税徴収法や基本通達を示しながら「差し押さえは、第三者の権利を害することが少ない財産であることが求められている」と主張、「従業員の給与部分を返還すること」を求めました。
担当者は「課長が留守のため、すぐには判断できませんが、ご要望についてはきちんと伝え、検討します」と答えました。
交渉の翌日、岩松さんに市側から連絡があり、「従業員の給与総額は25万円で、岩松さんには預金残高が13万円あるので、不足分の12万円を返還します」と回答があり、10月9日に返還されました。
岩松さんは「本当に助かった」と胸をなでおろすとともに、「税金の未納を克服するためにも、商売を頑張っていきたい」と前向きに語っています。
全国商工新聞 2015年11月2日付
消費税納付困難で申請型換価の猶予実現
=広島・福山民商
広島・福山民主商工会(民商)城北支部に所属する川﨑則雄さん=精肉店=は先ごろ、6月1日が納期限となっていた2014年度分消費税の換価の猶予を申請し、30万5500円の納付期限猶予が認められました。川﨑さんは「換価の猶予が認められたことで、延滞税も低くなり、分納で計画的に払うことができる」と喜びの表情。同民商では初の申請型換価の猶予適用の成果です。
消費税8%への増税後、増税分を価格に転嫁することができず消費税の支払いが苦しくなっていた川﨑さんは、商工新聞の「申請型換価の猶予」の記事を読んだことをきっかけに民商に相談。換価の猶予を申請することにしました。
申請書には、売り上げ、資産、売掛金を記載。約45万円の消費税のうち15万円の支払いを6月中に済ませ、残りの約30万円を7月から10万円ずつ3カ月の分納で支払う納付計画も記入して、税務署へ行き内容を説明。毎年7~8月は卸している学校給食が休みになり、一時的に売り上げが減ることや、直前に設備の修理で86万円の不測の出費があったことなども主張しました。
対応した署員からは財産目録の記入を求められましたが、「民商で決算を学習して、自分で記帳していたので書類の作成には困らなかった」という川﨑さん。書類を提出して7日後、税務署から「換価の猶予許可通知書」が送られてきました。
「心配の種がひとつ減った。また仕事に集中することができる」と話しています。
「税金の支払いで困っている人の力になれば…」と、班会で今回の経験を報告。「換価の猶予を申請するのは、生活と営業を守るため。恥ずかしいことではない。財産目録も、払えない現状を理解してもらうために記入した。恐れずに権利を主張していくことが大切だ」と報告し仲間を勇気づけています。
全国商工新聞 2015年9月28日付
「新聞代は必要経費」否認の原処分庁に反論
=名古屋南民商
熱田税務署が税務調査で新聞購読料を必要経費と認めなかったことを不服として、名古屋南民主商工会(民商)の笠原晋さん=建設=は、名古屋国税不服審判所に審査請求をしてたたかっています。審理は「論点整理」に入り、笠原さんは8月31日、「経費にならない理由を開示せよ」と、原処分庁(税務署長等)の「意見書」に対して「「反論書」を提出しました。
「営業活動やお客さんとの意見交換で新聞は大事な資料。特に地元紙の紙面広告や折り込みなどは情報収集に欠かせない。業務上、新聞は必要不可欠で経費にならないのはおかしい」と笠原さんは断言します。
税務調査は2013年8月21日に始まり、笠原さんは支部の役員と一緒に対策を立て仲間の調査にも立ち会って学習しました。
資料をそろえて臨んだ調査で、署員は売り上げが1000万円に届かないことが分かると経費について重箱の隅をつつくように調べだし、中日新聞と中日スポーツ新聞の購読料は経費と認められないと主張しました。
調査結果は平成23(2011年)は是認、24、25年分の少額修正を税務署側は迫りましたが、笠原さんは新聞購読料を経費として認めなかったことが納得できず昨年12月8日、熱田税務署に異議申し立て。「詳細な処分理由開示の申立書」「口頭意見陳述申立書」、併せて税金対策部会や班会で署名してもらった民商の仲間の「委任状」を異議申立書と一緒に提出しました。
今年2月の口頭意見陳述で笠原さんの代理人となった板平勇会長は「必要経費が認められなければ納税者は財産権(憲法29条)を侵されることになり、処分の理由を知る権利がある」と主張。しかし、税務署は異議申し立てを却下。笠原さんは4月1日、名古屋国税不服審判所に審査請求をし、7月1日の口頭意見陳述では不服審判所に新聞購読料が経費となる具体的な資料を示し「分かりやすい言葉で処分理由を要求する」と述べました。
ところが、8月6日に原処分庁から送られてきた「意見書」は「本件購読料が必要経費に算入できないことは、答弁書で述べた通り」と誠意のないもの。「争点整理」で笠原さんは「名古屋駅開発の影響で外注さんの取り合いになり、人手が足りるか単価をどうするかなどは新聞を読んで判断をすることが多い。商売に役立つからこそ購読している。だから、当然経費になるはずだ」と担当者に訴えました。
全国商工新聞 2015年9月28日付
反面調査に抗議 仲間に支えられ脱税の疑いはね返す
=岩手・一関民商
取引先への反面調査が繰り返され、ストレスから体調不良に陥りながらも、民商の仲間と一緒に強権的な税務調査に立ち向かった岩手・一関民主商工会(民商)の佐藤省一さん=土木。脱税の嫌疑をはね返して一切の不正行為がなかったことを認めさせました。「民商の仲間を信頼してたたかって本当に良かった」と涙ながらに話しています。
統括官らが謝罪
調査結果は2011年から13年までの3年間で、所得税と消費税を合わせて4万6290円の追徴金となりました。売り上げ時期の計上ミスによるもので、過少申告加算税は課せられませんでした。
7月8日に一関税務署に修正申告書を提出した佐藤さんは「誇りを持って地域のために働き、利益を度外視して頑張ってきた。それなのに、反面調査などの仕打ちを受けたことはいまだに納得できない」と抗議。調査官と統括官は頭を下げ「長いことすみませんでした」と謝罪しました。
一関税務署から事前通知があったのは2014年5月上旬。7月2日から実地調査が始まり、確定申告の基礎となる帳簿や領収書・請求書の一式を提示し、7回目の調査までは問題なく進んでいました。ところが8回目となった10月20日、調査官は「2件のボランティア工事で金銭の授受があったのでは」と言い出しました。
「1件は近くの神社への奉納として行ったもので工事面積も1平方メートルと狭く、経費も3000円程度。もう1件は実家の庭に廃材を使って駐車場を設置したもので、持ち出しこそあれ金銭の授受は一切なかった」と佐藤さんは断言。しかし、調査官は「現場を確かめなければ」と反面調査をほのめかせました。
佐藤さんは金銭授受がなかったことの証明書と現場の写真を調査官に提出し、取引先の信頼を失う恐れがある反面調査は行わないよう要求しました。しかし、調査官は神社への反面調査を行い、「ボランティア工事以外の工事を行った形跡がある。売り上げを隠しているのでは」と疑いをかけました。調査官が指摘した工事は2014年度に受注・施工したもので全くの事実無根でした。
さらに調査官は、仕入れについて佐藤さんが提示した領収書や請求書では認定できないとして過去3年分の仕入伝票の提示を要求。「保存義務があるのは帳簿および領収書・請求書と認識していたので仕入伝票は保存していない」と説明しましたが、調査官は仕入伝票の提出をしつこく迫りました。
50人が立ち会い
佐藤さんは11月21日、民商の役員と税務署に「調査手法の民主的改善求める請願書」を提出。「『記帳や記録保存は納税者に過大な負担にならないように十分に留意し適正な運用に努める』旨を定めた第101国会付帯決議に基づけば伝票保存は全く必要ない」ことを主張し、調査の是正を求めました。
しかし、一関税務署は今年2月から5月にかけて14社の取引先に反面調査を強行。精神的なダメージを受けた佐藤さんは5月26日、小野寺喜久雄会長らと税務署に抗議。反面調査の即時中止を求め、大門みきし参院議員(共産)にも支援を要請。大門議員は国税庁の担当者を呼び出して問題を追及。同庁は一関税務署の行為について、事実関係の確認と当面の間、反面調査を中止させることを約束しました。
今回の調査では延べ50人近くの民商の仲間が調査に立ち会いました。
全国商工新聞 2015年8月31日付
所得税の予定納税減額 半年分の月1万円の分納に
=広島・福山民商
所得税の予定納税の納付ができずに困っていた広島・福山民主商工会(民商)のYさん=機械メンテナンス=は7月16日、予定納税(注)の減額を実現しました。1期(7月末)と2期(11月末)にそれぞれ9万9600円を納付することになっていましたが、1期、2期ともに納税額はゼロになりました。併せて22日に福山市の納税課と国保課とも交渉し、市民税について「換価の猶予」が実現。「これで延滞税を取られることもなく、仕事に集中できる」と喜んでいます。
Yさんはこれまで税務署の申告会場(地場産業会館)に出向いて確定申告書を作成していました。平成26(2014)年分の所得税と住民税はなんとか納付しました。
ところが、6月になって平成27年の所得税の予定納税額の通知が。住宅ローンの住宅借入金控除が終了したために所得税が大幅に増えていました。
申告納税見積額は29万9000円で1期分の9万9600円を7月31日までに納付しなければなりませんでした。しかし、妻が出産で働きに出られず、収入が減っている状況の中で納付は困難でした。
Yさんは6月23日、両親から紹介された民商に相談、その場で入会しました。「自主計算活動の手引き」で申告納税制度を学習するとともに、対応を協議。半年間の収支を計算して予定納税・減額申請書を作成して7月1日に提出し、承認されました。「これから、しっかり記帳を勉強したい」とYさんは話しています。
納税課では毎月3万円に納付額を増やすように要求されましたが、「換価の猶予を認めてほしい」と粘り強く交渉。「換価の猶予」が認められ半年間、月1万円の分納が認められました。
(注)予定納税とは
前年分の所得税および復興特別所得税の確定申告などに基づいて計算した予定納税基準額が15万円以上である場合、原則としてその3分の1相当額をそれぞれ7月(第1期)と11月(第2期)に納める制度。予定納税額の通知を受けている人のうち、廃業、休業または業況不振などによって申告納税見積額に満たないと見込まれる場合、予定納税額の減額を求めることができます。
全国商工新聞 2015年8月31日付
税務調査 みなし仕入れ率の変更強要
記帳を力にはね返す=岡山民商
税務調査を受けていた岡山民主商工会(民商)のK.Iさん=畳店=は6月30日、本人の申告を認める「是認」を勝ち取りました。会計担当の妻・Sさんが民商のパソコン教室に通いながら記帳・決算を行っていたため、税務署の求める書類にもあわてることなく、冷静に対応することができました。「初めての税務調査で、税務署からの突然の電話に動揺したが、自分の申告に対してきちんと説明することができ、納税者の権利も主張できた」とIさん夫妻は胸を張っています。
岡山東税務署の法人課税部門から「税務調査をしたい」とIさんに連絡があったのは今年2月。仕事が立て込み、Sさんの体調も優れなかったことから、すぐには対応できないことを伝え、調査日を1カ月ほど延ばしました。
2人の署員が3月18日に訪ねてきました。Iさん夫妻は、民商の仲間の立ち会いの下で国税通則法に基づいた「事前通知」が不十分だったことを指摘。「電話で伝えた」という署員に対して「相手に伝わっていなければ、伝えたことにはならない」と反論した上で、あらためて事前通知の内容を確認しました。
Iさんは調査理由の説明を重ねて求めましたが、明確な回答は得られませんでした。完全に納得することはできなかったものの「調査には協力する」と譲歩しました。
調査対象期間は平成24(2012)年度から26年度の3年間で、基本的に資料の持ち帰りは認めず、必要な資料をIさん夫妻と署員が一緒に確認するというやり方でを進め、1時間から1時間半程度の実地調査を7回受けました。
問題になったのは、消費税の簡易課税を選択した場合のみなし仕入れ率の「75%ルール」が適用されるかどうかです。「75%ルール」とは二つ以上の事業の種類がある場合は一つの事業の課税売り上げ割合が75%以上占めていれば、その事業のみなし仕入れ率が適用されるというものです。Iさんはみなし仕入れ率70%で計算していましたが、署員は「畳製造のうち表替えはサービス業(50%)にあたる」と指摘。Iさんは再度平成24年度の売り上げについて畳の表替えと製造の割合を計算し、畳製造が75%以上占めていることをはっきり示しました。
25、26年度の調査は省略させ、細かな記帳指導はありましたが、修正する箇所はないとして「更正決定等をすべきと認められない旨の通知書」が送られてきました。
全国商工新聞 2015年8月24日付
誠意を持って状況示し申請型換価の猶予実現
=兵庫・姫路
兵庫・姫路民主商工会(民商)の高橋健二さん(仮名)=空調設備・法人=は6日、申請型「換価の猶予」を実現しました(国税徴収法151条2)。「これで安心して分納ができる」と喜んでいます。
分納になり安心
換価の猶予が認められたのは、平成26年度分の消費税のうち中間納付税44万6700円(納付期限6月1日)。6月17日から11月30日までが猶予となり、5回の分納が認められました。
家族3人で仕事をする高橋さんは、消費税増税や消費不況などの影響で売り上げが減少。消費税を完納できなくなり、88万円ほどが滞っていました。
加えて昨年9月末、平成26年度分の消費税約88万円が新たに発生し、今年3月に中間申告書と納付書が届きました。冬場は仕事が減ることから資金繰りがつかず、高橋さんは「とても一括では納められない」と姫路税務署に分納を相談。3月から毎月約20万円の分納が認められ、滞納分を6月に完納しました。
26年度分の消費税は「換価の猶予」を申請することにしました。民商のアドバイスを受けながら財産収支状況書を書き上げ、6月17日に申請書を提出しました。対応した署員は当初、滞納分の消費税について高橋さんに問い合わせたとき、「連絡がなかった」と話して申請に難色を示していましたが、生活状況を詳しく話すとともに誠意をもって分納してきたことなどを訴えて申請書が受理されました。
(注)申請型「換価の猶予」
これまで換価の猶予は納税者の申請によるものではなく、それを適用するかどうかは税務署長の職権によるものだけでした。
ことし4月からは従来の「職権型」に加え、納税者の申請による「換価の猶予」ができるようになりました。換価の猶予が適用されると分納が認められ、延滞税も大幅に減免されますので、申請型・職権型の換価の猶予を大いに活用して負担を軽減させましょう。納期限から6カ月を超える滞納があれば、換価の猶予申請ができなくなりますので、注意が必要です。
要件は(1)税金を一時に納付することによって事業の継続または生活の維持を困難にする恐れがある(2)納税について誠実な意思がある(3)税金の納期限から6カ月以内に換価の猶予申請書が提出されている(4)換価の猶予を受けようとする税金以外に滞納がない(5)納付を困難にする金額がある(6)原則として猶予を受けようとする金額に相当する担保提供がある-などです。
延滞税は通常、「納期限から2カ月以内」は2・8%、「2カ月を超える日から」は9・1%で計算されますが、換価の猶予で一部免除になると「納期限から2カ月以内」も含め、猶予される期間全体を通じて年利1・8%で計算され、延滞税免除の範囲がいっそう拡大されました。
全国商工新聞 2015年7月27日付
おとり調査でやりたい放題 違法、不当調査に怒り
=山口・周南民商
税務署員がおとり調査(内観調査)をした上に事前通知もなく税務調査を始め、大がかりな反面調査を実施。所得税の青色申告を取り消した上に消費税の仕入税額控除も否認し、多額の税金を追徴するという不当な税務調査を受けた山口・周南民主商工会(民商)の佐藤都さん=飲食。納税者の権利を侵害し、事前通知を義務化した国税通則法にも逸脱した調査は違法として課税処分の取り消しを求めています。
突然の調査が
佐藤さんが経営するスタンドバー「ウィズミー」は周南市内でも有数の繁盛店です。「1人で来店するお客さんも従業員との会話を楽しんでほしい」という思いから16人の従業員を雇用し、店舗を拡大して売り上げを伸ばしてきました。
そこに目を付けた光税務署。13年10月16日、事前通知もなく突然、広島国税局の職員と光税務署の署員が佐藤さん宅に訪ねてきました。チャイムとともに何度もドアをたたき、外には他の署員が張り込むなど犯罪捜査のようでした。
駆け付けた周南民商の海田敏治事務局長が「なぜ事前通知をしなかったのか」と抗議すると「理由は言えない。これが事前通知だ」と開き直り、部屋に入れるよう要求。「日を改めてほしい」と話し1時間ほどのやり取りの末、署員はようやく引き上げました。
ツケを強要し
1カ月後の11月14日から佐藤さんは調査に応じますが、税務署は民商の仲間の立ち会いを拒否。年が明けた14年1月7日の調査で、統括官の顔を見た佐藤さんは驚きました。調査直前に来店したお客さんだったのです。
統括官は自分の誕生日プレゼントを店の女の子に要求し、ネクタイを受け取っただけでなく、酔っぱらってツケを強要。「この店はツケもできないのか」と怒鳴っていました。
常連客に反面
並行して常連客への大がかりな反面調査を実施。「勤務先に税務署員が来て迷惑した」「調査が入った店にはしばらく行けん」などの声が寄せられ、客足が遠のきました。
精神的に追い詰められた佐藤さんは眠れない日が続き、うつ病と診断。「どうしてこんな目にあわなければならないのか。生きることに疲れ、死ぬことも考えた」と声を震わせます。
青色取り消し
3月13日に更正処分が通知され、現金出納帳や売上伝票の提示がないことを理由に所得税の青色申告を取り消し、消費税の仕入税額控除も否認。平成22年(10年)から3年間で所得税と消費税を合わせて約730万円(本税+過少申告加算税)を追徴しました。
人件費で推計
署員に金額の根拠を質問しても「広島市内の給料が同等の店を参考にした」と答えるだけでした。
「広島市と周南市では物価が違うし、店の形態でも客単価が違う。うちの店は1人のお客さんにも従業員をつけているので人件費が高い。実態を無視した課税は納得できない」と佐藤さんは5月に異議申し立てしました。異議決定では23年分消費税の更正処分と過少申告加算税の一部を取り消したものの、その他は棄却されたため、14年8月に国税不服審判所に申し立てました。
裁決を前にした今年6月2日、周南民商は光税務署に抗議。佐川宏助県連会長や藤井和美民商副会長、代理人の金巨功税理士、小田隆典税理士など10人が駆けつけました。仲間は「調査経過記録書」のほとんどが黒塗りに加えて100カ所近くの誤りがあると指摘し、併せて公金(捜査費)を使って調査直前に内観調査していることを追及。総務課長は「私費で飲みに行っており、何ら問題ない」と居直りました。
不服審判所は6月30日、申し立てを棄却。藤井副会長は「違法なおとり調査の上に推計課税の仕方もおかしい。納税者の権利を守るため佐藤さんと一緒に頑張りたい」と話しています。
処分は取り消すべき 税理士・金巨功さん
税務調査に着手することが分かっている飲食店に例え自費であっても来店することは常識では考えられないこです。統括官はこの店に税務調査が行われることを知る立場、来店を控えるのが市民の常識です。にもかかわらず、5回も来店しプレゼントを要求する、ツケを強要する行為は公務員という立場をはき違えた「公私混同」の極みです。
調査経過記録書の多くが無予告現況調査前の反面調査。調査経過記録書を分析すると延べ32回、11人の職員を動員し、都合57人を調査しています。
これほど大がかりな反面調査をするならば、相当大きな脱税の疑いがあり、大きな増差税額等があるはずですが、結果として「同業者」の人件費を基礎に推計課税するという特異な方法で課税処分をしています。しかも3年間のみの更正処分で、かつ重加算税ではなく過少申告加算税で済ませています。このことからも無理な課税であったことの証左と考えられます。
さらに税務署は売上伝票、現金出納帳の提示がないことだけで推計課税をしています。仮に推計するのなら仕入金額を基礎とした推計方法、本人の記帳に基づく推計方法または資産負債増減法によるべきです。
この税務調査は憲法の要請する「個人の尊厳」(13条)、「適正手続きの保障」(31条)、「住居不可侵」(35条)が不当に侵害され、その他の憲法上の要請から大きく逸脱しており、違法な調査手続きがされたことから課税処分は取り消すべきです。
全国商工新聞 2015年7月20日付
税務調査を是認で終了 情報開示させ追及
=大阪・貝塚
税務調査を受けていた大阪・貝塚民商の中野敏宏さんは3月31日、2011年から13年までの消費税と11年から12年の所得税などの「是認」を勝ち取りました。中野さんは自主記帳を貫き、税務調査では仲間が立ち会う中で納税者の権利を主張して「税務調査ノート」を作成し、たたかいました。
税務調査は8カ月に及びました。許せなかったのは事前通知がなかったことへの抗議に対して、署員が「(不正を働く恐れがある場合などに事前通知を要しない)無予告調査に該当している」と言い出したことです。
「申告は絶対に間違っていない。なぜ、自分が無予告調査の対象なのか」と怒りがこみ上げてきた中野さん。民商の仲間と相談し「事前通知を要しない調査の適否検討表」などの情報開示を請求。ところが、ほとんどが黒塗りの上に、偽りの記載まであり、不信感を抱きました。
そのため、中野さんは署員の発言などを「税務調査ノート」に書き留めました。そして、署員が作成する「調査経過記録書」と突き合わせ、不当な記録が残されていないかをチェックしました。その後の調査で税務署は、仕入れ先の領収書がないことを理由に、25万円を追徴しようとしました。
しかし、中野さんは仕入れ先に頼んで領収書を再発行。その後、税務署は「仕入れた証明書があれば追徴はしない」と言ってきましたが、「証明書を提出すれば反面調査をされる可能性がある」と考えた中野Nさんは証明書を署員に見せるだけに。署員はコピーを執拗に迫りましたが、納税者の権利を主張してそれも拒否しました。
3月になって税務署から「是認にします」との連絡が入り「更正決定等をすべきと認められない旨の通知書」が送られてきました。
全国商工新聞 2015年4月20日付
納税の猶予を集団申請 学習重ね確信深める
=埼玉・本庄
埼玉・本庄民主商工会(民商)は3月31日、法人の会員の集団申告と併せ、6人が納税の猶予を申請しました。
3回目の申請をした渡部千代子さん(仮名)=自動車板金=は「従業員や子どもの生活を守るために必死に働いてきたが、8%への増税で消費税額が約39万円と、昨年に比べて約1・6倍に増え、利益は減少。一度に払うことはとても困難」と話しています。
本庄民商では毎年、申告時期に合わせ猶予制度の学習会を開催。パンフ『税金が払えず困っている人へ』(全国商工団体連合会発行)や、過去に納税の猶予を申請した人の申請書を参考に、担保がない場合には提供できない事情を書くなど、経験を交流しながら学んでいます。継続的な学習が、納付困難な会員に自信を与えてきました。
本庄民商で初めて納税の猶予を申請したのは8年前。最初に提出した会員の納税の猶予の申請が不許可処分となったことから、税金対策部で「納税の猶予等の取扱要領」を徹底的に学習し、異議申し立てを行いました。
しかし、結果は棄却。さらに学習会を開いて国税不服審判所へ申し立て、「原処分は違法というべきである」との採決が出され、猶予の正当性が証明されました。
採決は会内に確信を与え、毎年続く納税の猶予の集団申請の大きな力となっています。
全国商工新聞 2015年4月20日付
増税で納付困難に 換価の猶予認めさせる
=神奈川・横浜緑
神奈川・横浜緑民商の西原聡さん=飲食=は3月30日、一括での消費税納付が困難になり、納税の猶予を申請しました。営業の悪化を理由に西原さんは5年前から毎年、納税の猶予を申請し、換価の猶予を認めさせています。
西原さんの今年の消費税額は約30万円と、昨年の倍近くに増えました。「この先、消費税率が10%になったら税額は3倍近くに増える。消費税増税には絶対反対」と語っています。
街の魚料理店として20年前に店を開いて以来、おいしいと喜んでくれるお客さんの笑顔に、誇りを持って商売を続けてきたという西原さん。消費税が5%に増税された1997年から、重い負担に苦しんできました。消費税を納めるために、家賃を後回しにし、強制退去させられそうになり、親戚に頭を下げて借金をする日々でした。
5年前、どうしても払うことができなくなり、民商に相談し納税の猶予を申請しました。税務署の窓口で、署員からは「そこにサラ金がありますよ」と勧められたといいます。
換価の猶予が適用されて以来、借金も滞納もせずに税金を納めることができているという西原さん。昨年も約17万円の消費税と1.8%の延滞税を完納しました。「民商に相談して本当に良かった」と語っています。
全国商工新聞 2015年4月20日付
市県民税滞納 分納計画示し 換価猶予=鳥取
鳥取民主商工会(民商)の前村康児さん=新聞販売店=は先ごろ、鳥取市から換価の猶予の延長をかちとりました。
昨年2月、市が市県民税・国保料などの滞納を理由に前村さんの売掛金(折り込み広告代)を差し押えました。滞納税金に充当されて資金繰りに困った前村さんはインターネットで民商を検索し、昨年5月に入会。資金繰り表や家計表を作り、売掛金の入金がなければ、新聞社への支払いや人件費が払えず、事業が立ち行かなくなることを市に説明し、その後の売掛金については換価の猶予を認めさせました。前村さんの元に売掛金が入金され、事業が継続できるようになりました。
前村さんは「今後も苦しいと思うが頑張りたい。民商で自分の知らないことを学ぶことができた。私と同じように困っている人も多いと思うので、少しでも貢献できたらと思う」と話しています。
全国商工新聞 2014年6月16日付
「払いきれない!」納税の悩み 民商で解決
延滞税200万円免除へ
千葉・市原民商 藤本 二郎さん=機械加工
千葉・市原民商の藤本二郎さん=機械加工=は12月20日、延滞税約200万円について「滞納処分の執行停止」をかちとりました。
藤本さんは25年前に数千万円の手形が不渡りとなり資金繰りが悪化。法人税や消費税などがやむなく滞納になりました。経営再建にむけて頑張りながら、4年前に滞納税金のうち本税(数百万円)を完納。円高デフレ不況で仕事が激減した3年前に法人を休業し、個人事業主として商売を続けてきました。
昨年9月、千葉南税務署から突然、延滞税の滞納を理由とした差押予告書が送られてきました。困り果てた藤本さんはすぐに民商に相談。10月8日に事務局長とともに税務署交渉を行いました。交渉で藤本さんらは、法人を休業し個人事業を行っていても、一定の法律要件を満たせば滞納処分の執行停止は適用され、「国税徴収法153条に該当する」と主張。
10月末に税務署による財産調査が行われ、12月下旬に藤本さんのもとに「滞納処分の停止通知書」(国税徴収法153条1項1号「滞納処分を執行することができる財産がないとき」に該当)が届きました。執行停止が3年間継続すると延滞税は消滅します。
全国商工新聞 2014年1月27日付
税務調査で是認 自主記帳を力に権利主張=鳥取
鳥取民主商工会(民商)の福田ますえさん=美容=は先ごろ、改悪国税通則法の実施後の税務調査で、是認(本人の申告を認める)をかちとりました。
福田さん(美容室)は昨年7月下旬、鳥取税務署の署員から電話を受けました。なんの用件か理解できず、すぐに民商に相談。後日、税務調査であることが分かりました。
初めてのことに不安を覚えましたが、民商の仲間と対策会議を開催。福田さんにとって税務調査は想像以上に大変なものでした。心が折れそうになっている福田さんの力になったのは店で約20年間働くベテランの従業員でした。気落ちしている福田さんに『納税者の権利』パンフを音読し、激励しました。福田さんは再び「堂々と税務調査に向き合おう」という気持ちになりました。計4回の税務調査を終え、署員から調査終了の電話が入り、10月11日には是認通知が届きました。
福田さんは「権利を学び、民商と従業員の励ましで頑張ることができた。最初は怖かったけど、帳簿付けを学び、しっかりとした記帳で是認をかちとれた」と話しています。
全国商工新聞 2014年1月6日付