第1章 民商・全商連の理念と目的
全国商工団体連合会(以下、全商連)は、1951年8月3日、戦後の「生活擁護」や「納税民主化」を求める国民運動から、自覚的な中小業者によりつくられていた民主商工会(以下、民商)を中心に結成されました。日本の歴史上初めての中小業者の自主的・民主的な全国組織の誕生であり、歴史的な画期をなすものでした。
中小業者は、日本の社会と経済を支える重要な担い手です。しかし、アメリカと日本の大資本は圧迫と収奪を強め、自民党政治は公然と中小業者の切り捨て政策を進めています。それだけに、大企業と政治の横暴を正して民主的に規制する運動は中小業者の営業と生活、権利を守るための重要な柱をなすものです。
民商・全商連は、1947年に施行された日本国憲法の前文と平和的・民主的条項を生かして、中小業者の社会的・経済的地位の向上へ、要求の一致に基づく多彩な共同を推進しています。中小業者の諸要求実現と結び、日本社会の進歩と民主主義の発展に貢献します。
民商は、さまざまな業種の自営商工業者を広く結集した組織です。会員の要求と自覚を基礎に、会費をはじめ必要な資金はみんなで出し合い、自主的・民主的に運営します。会員の思想、信教、政党支持、政治活動の自由は尊重し保障されます。全商連は、地域で活動する民商を結集した県連合会(以下、県連)を加盟単位とした全国的な連合会組織です。
民商・全商連は結成以来の運動を通じて、次のことを運動の理念として確立してきました。
1、民商・全商連運動は会員の利益・幸せだけでなく、中小業者全体、大きくは国民全体の幸福とつながっている。道理に合った要求と活動方法を追求してこそ、さまざまな権力的攻撃に屈することなく運動と組織を前進させることができる。
2、団結こそ何ものにも勝る宝である。自らが大きく団結したときこそ、中小業者の切実な要求実現と組織拡大への展望を開くことができる。
3、中小業者の大同団結を強め、労働者や農民、国民各層とも共同してたたかうなら、要求実現の道をさらに広げ、政治経済の民主的な転換の力を高めることができる。
第2章 民商・全商連運動の歴史
民商・全商連の歴史から学び新たな前進へ
第2次世界大戦直後の日本では、アメリカ占領軍の費用をまかない、大資本の利潤を確保するために、戦前の「報国租税理念」さえ利用した、過酷な重税が国民に押し付けられました。占領軍と一体に「ジープ徴税」などの強権的な徴税が荒れ狂う中で、ムシロ旗を立てた重税反対の税務署交渉などが旺盛に展開されました。この戦闘的で毅然としたたたかいは、戦後の民主化闘争の大きな柱となり、民商・全商連運動に脈々と引き継がれています。
サンフランシスコ講和会議で「日米安全保障条約」が制定され、敗戦前の「ポツダム宣言」に沿って進められていた政治と経済の民主化は反故(ほご)にされていきました。朝鮮戦争も勃発し、再び戦争への道が画策される状況になりました。この時、全商連は「中小業者の大同団結と平和的民主的日本の建設に貢献する」決意を表明した「全国商工新聞」(当初は「日本商工新聞」)を発刊しました。レッド・パージなどの弾圧に抗し、暮らしと平和を守るために奮闘していた国民・中小業者を励ますものでした。
民商・全商連は、(1)中小業者の営業と生活を守り、発展・充実を図る運動(2)重税に反対し強権的な税務行政を正す運動(3)政治のゆがみを是正し、平和で国民が主人公となる社会をめざす運動(4)運動推進の力となる組織拡大・強化の運動、などを一貫して追求してきました。その歴史は、紆余曲折に満ちた苦難と創造の道のりでした。
民商・全商連運動は、中小業者の個々の要求実現だけでなく、税制・金融・取引などの制度や法律の改善、問題別・業種別対策と結んだ共闘、地域経済振興への運動など、多面的な前進を遂げてきました。
民商・全商連の運動を力に実現できた成果は、全ての中小業者の利益につながっています。時々に時代を象徴する諸課題の解決に、力を尽くしてきたかけがえのない歴史に学び、新たな前進をめざすことが大切です。
1、税制と税務行政の民主的改革と納税者の権利を守るたたかい
戦後、重税に反対する国民運動が展開される中で、アメリカの税制使節団による「シャウプ勧告」が出され、これが日本の戦後税制の基本となりました。その内容は、「申告納税制度」「直接税中心原則」「総合累進所得税」などの民主的な側面を持つ一方で、大衆課税を徹底させて生活費にまで食い込む重税政策を進め、大企業の急速な資本蓄積を促進する面を持つものでした。
わが国の税制度は、大企業・大資産家優遇の側面を強めようとする勢力と、戦後の憲法と民主主義を土台に国民本位の税制・税務行政を実現させようとする広範な国民との対決の中で変遷してきました。
(1)国民本位の税制をめざして
全商連は、結成直後から「個人事業税」の減税・撤廃を求めて運動を展開しました。事業主や家族の勤労実態を無視した不合理を告発し、自家労賃を保障するよう要求して基礎控除の大幅引き上げと税率引き下げを実現しました。こうした中で、自家労賃を大工・左官・とび職等に50年以上認めさせ、家内労働者に特例を設けさせました。また、所得税に専従者控除を創設・拡充させていきました。
広範な団体と共同して国税通則法の導入・改悪に反対してきました。記帳の義務化や質問検査権の強化に関する規定などをいったんは削除させました。激しいせめぎ合いで、白色申告にも記帳が義務化され、デジタル化も押し付けられていく一方で、最高裁の判例として質問検査権の限界が示され、税務運営方針で調査方法の改善を明示させました。事前通知の法定化や帳簿の自由な形式も認めさせました。
政府・財界が執拗(しつよう)に付加価値税・一般消費税・売上税・消費税の導入を画策する中で、民商・全商連は国民・中小業者との共闘を一貫して追求し、導入反対・減税・廃止をめざして先駆的にたたかってきました。「列島騒然」の運動で売上税を阻止し、その後の消費税闘争を通じて歴代政権を退陣に追い込んで、自民党政治を揺るがしてきました。
民商・全商連は、あるべき税制、税務行政の原則を示した「納税者の権利宣言案」を節々で発表し、懇談や要請に生かすことで、税の専門家を含めた幅広い共感と信頼を広げてきました。
(2)税務行政の横暴をただす
民商・全商連は、「納税者のする申告によって税額が確定する」という「申告納税制度」を生かして、国民各層とともにたたかってきました。
「税務調査についての10の心得」や「滞納処分から身を守る10の対策」を活用し、強権的な徴税を許さない力にしてきました。また、立法・行政・司法の三権分立を生かし、国会議員や公務労働者、税理士、弁護士との連携も強めて納税者の権利救済を図ってきました。
1970年以降、政府の重税政策に反対し、諸階層の納税者に呼び掛けて「3・13重税反対全国統一行動」を展開し、税制と税務行政を正す行動として力を発揮しています。
また、納税者を脅し服従を強いる徴税権力の横暴是正へ、民商・全商連は諸外国の権利保護法制にも学んで、調査と徴収、税務援助の適正手続きを示す「納税者の権利憲章案」を提案しています。
2、経営と生活を守る運動
「商売を伸ばしたい」「良い仕事をしたい」という中小業者の要求に応え、民商・全商連はにぎわいを取り戻す行事や業種別・問題別対策、地域経済振興条例づくりを推進してきました。「なんでも相談会」活動など、緊急・切実な要求解決に知恵と力を集め、中小業者の生きる道を開いてきました。
阪神・淡路大震災や東日本大震災など大規模災害時には、助け合い相談と支援策の活用、施策拡充の提案を強めて、生活と生業の再建に尽力しました。
原発事故に関しては取り返しのつかない被害を告発し、完全賠償や再生可能エネルギー(以下、再エネ)への抜本的な転換を要求してきました。
コロナ禍には「誰一人取り残さない」を合言葉にして奮闘し、797億円の給付金を獲得するなど、さまざまな直接支援策を実現し拡充させました。
国際社会の動向にも視野を広げ、欧米やアジアのまちづくりや中小企業政策、エネルギー施策などの分析・検討も進めてきました。
(1)融資獲得を権利と位置付けた金融闘争
民商・全商連は旧国民金融公庫に対して「償還組合」をつくり、支店を増設させる運動を進めました。「民商対策」の「マル経融資」も、全ての中小業者が利用できる制度として活用する運動を展開しました。「無担保・無保証人融資」なども各地の自治体で実施させました。
政府・財界の「金融システム改革」に対し、商工ローンやサラ金の違法な高利・取り立てを告発して、金利引き下げや被害者救済を実現しました。民商・全商連の「金融ビジョン」での懇談も力となって、信用金庫協会などから自己資本比率に偏重した金融検査への異議が表明されました。検査マニュアルの改定など、金融取引にも公正なルールの足掛かりを築きました。
銀行の貸し渋りに対する特別保証制度を作らせた一方、「民業を公的金融が圧迫している」との口実で、部分保証・責任共有制度が持ち込まれました。2008年の金融危機に際して「借りて商売を続けよう」の大運動を展開し、政府100%保証の制度を全業種指定にさせ、「金融円滑化法」を作らせました。同法は時限立法とはいえ、金融機関による融資実行の努力義務や謝絶理由の開示を盛り込みました。
(2)不公正な取引の是正とまちづくり
民商・全商連は、1970年代に「中小業者110番」運動を展開し、「下請代金支払遅延等防止法」「下請振興基準」「建設業法」などの活用に道を開きました。
大型店規制をめぐる法改正の節目に「流通ビジョン」を発表し、中小小売商の共闘や消費者との連携を支援しました。98年を中心に1万を超える団体との「商店街総対話」を展開し、国民本位の日本改革をめざす政治革新の高揚とともに、業者団体などとの共同を広げ、大型店の出店阻止や売り場面積の削減などを実現しました。
幅広い業種に焦点を当て、2000年に公正取引への提言を発表しました。貸し手優先の金融取引や単価切り下げ、突然の取引停止、不当廉売、納入業者への負担強要、収奪的なコンビニ・FC契約、技術のかすめ取りなどを告発し、対等な取引関係に向かう手立ても示して横暴を是正しました。大型店の秩序なき出店と撤退が広がる中で、「まちづくり3法」の抜本改正と国民本位の商業政策への世論と運動を広げました。
(3)経営・暮らしの対策と商工交流会運動
民商・全商連は、中小業者の経営発展の要求を重視し、「商売、人生、民商」を語り合う運動を進め、中小業者の社会的役割についての自覚を高め合ってきました。また、技術、経営、情報などを交流するネットワークづくりを推進するとともに、学者・研究者や諸団体とともに商工交流会運動などを全国的規模から地域までさまざまな形で取り組んできました。中小商工業研究所を通じて、独自の調査活動を充実させつつ、中小企業と自営商工業に関係する政策の分析と提案を協力・共同で強めてきました。
民商・全商連は、全会員対象の「経営と暮らし、健康」の調査活動にも取り組みました。就労や経営の実態と要求、住民自治への貢献を明らかにしました。
中小業者が無権利に近い、社会保障の現状を打開するため、社会保障拡充を求める団体共闘を強めて、国保や社会保険の負担軽減と拡充、介護や年金などで人間の尊厳を守る改善などを求めてきました。
3、平和と民主主義を守る運動への貢献
民商・全商連は「平和でこそ商売繁盛」を一貫して信条としてきました。
(1)核廃絶の署名運動から核兵器禁止条約へ
1954年のアメリカの水爆実験に対して、民商・全商連は賠償を求めた鮮魚商やすし商のたたかいを支持し、「原水爆禁止」への国際協定を求める署名運動の先頭に立ちました。この反核の世論喚起が「原水爆禁止世界大会」に引き継がれています。85年に提唱された「ヒロシマ・ナガサキからのアピール」(国際署名)で、民商・全商連として800万人目標を掲げて奮闘し、711万6千人分を集めて内外の信頼を高めました。
「核なき世界」への市民社会の奮闘で、2021年1月、核兵器禁止条約が発効し、核兵器に「悪の烙印」が押されました。24年12月には日本被団協が「ノーベル平和賞」を受賞しました。
(2)真の独立と対等な日米関係の要求へ
民商・全商連は1960年、軍事同盟である日米安保条約の改定に反対し、「閉店スト」で国民と固く団結してたたかいました。沖縄の本土復帰を求めて奮闘し、施政権の返還後は全国商工新聞を活用し、民商・沖縄県連の結成を支援しました。
日米安保条約はアメリカの治外法権を認め、日本の軍事や外交の重要部分を支配する根拠となっています。自衛隊を動員し、日本を再び戦争する国へと向かわせる危険性を高めています。
民商・全商連は、在日米軍の存在そのものが地域の安全と経済的発展を阻害している実態を告発し、安保条約を平和友好条約に切り替えて真の独立を実現するためにたたかっています。
(3)国政・地方政治の民主的改革
民商・全商連は、中小業者の切実な要求と政治の在り方が深く結びつく中で、革新・民主の自治体づくりと国政の革新をめざしてきました。
1980年1月の「社公合意」を契機とし、政党と労働組合の右翼的再編が進んでいくことになりました。民商・全商連は「平和・民主・革新の日本をめざす全国の会」(革新懇)に参加し、自覚的な民主勢力との共同行動を強めました。革新懇運動の積み重ねで無党派との連携が強まり、2015年に強行された戦争法(安保法制)に反対し、自衛隊の海外派兵を許さない世論と運動が粘り強く展開されていきました。
4、拡大での団結強化と総合的な組織建設
民商・全商連は、「組織を大きくしなければ、要求を実現できない」と、計画的に会勢を増やす努力を進めてきました。
1963年の国税当局による弾圧をはじめ、前進を好まない勢力による、デマや中傷などの攻撃が繰り返されてきましたが、道理を示し団結と共同の力を強めて、その都度、拡大で反撃し、内外の信頼を築いてきました。
民商・全商連は、商工新聞読者前面の拡大とともに、会員とその家族の要求に基づいて、婦人部、青年部、共済会の全国組織をつくり、組織の総合的な発展をめざしてきました。
47都道府県での民商の連合会結成を契機として規約改正を重ね、要求運動と組織建設を進めてきました。
第3章 中小業者の役割と新たな可能性
日本経済は戦後、大きな発展を遂げ、世界有数の巨大な経済力を持つに至っています。しかし異常な対米従属を強いられ、巨大化・多国籍化した大企業の横暴がまかり通る事態が広がっています。日本の財界・大企業はアメリカの対日支配と結びつき、政治買収と国家機構の利用で支配的地位を占めています。
大企業の横暴を野放しにする規制緩和で、工場の海外移転や逆輸入、大型店の出店調整廃止が広がり、弱肉強食の新自由主義の行き詰まりの中で「貧困と格差」の拡大が社会問題になっています。また、巨大開発優先の公共事業や歯止めなき軍事費の増加などで、国家財政が危機に立たされています。
中小企業・中小業者の圧倒的多数は、平和産業の担い手です。その私的発意が尊重されて事業機会が確保され、自由で公正な取引が行われてこそ、大資本の横暴勝手を制御できます。地域のネットワークを生かして、商店街、飲食街、地場産業の活性化を進め、経営改善策や振興策、雇用対策などを具体的に講じさせることが大切です。
ヨーロッパの小企業憲章やアメリカの地域再投資法をはじめとして、経済の発展・成長、雇用・就労の創出、地域の格差是正と持続可能な成長への中小業者の役割が評価され、政策的位置付けも明確になっています。この世界の流れの方向に、日本の政治と経済を変えていくことが求められています。
1、中小業者の社会的・経済的役割
(1)日本経済を支える社会勢力
中小企業は、事業所数で99%を超え、従事者も全労働人口の圧倒的多数を占めています。中小業者は労働者に次ぐ第2の社会勢力であり、取引や雇用、税制や社会保障で大企業に社会的責任を果たさせる運動への貢献が強く期待されています。
中小業者は自ら生きる糧を生み出しています。年齢や性別、ハンディキャップを差別なく包摂して働く場を提供するとともに、商売やモノづくりの楽しさを若い世代に継承することに力を発揮しています。
工場や店舗を持たずに委託契約などで働くフリーランスにも注目が集まっています。大企業による「優越的地位の濫用」を許さない共同の取り組みが大切です。結社権を創造的に生かして人間尊重の共生社会を形成していきます。
(2)地域と住民の生活に欠かせない存在
中小業者は地域で産業ネットワークを形成し、資金の地域内循環にも貢献して雇用や所得を生み出すなど、地域経済になくてはならない存在です。日本の風土を熟知し、災害復旧などでも地域社会の存続と安全確保に知恵と力を発揮しています。
中小業者は自らが市民、住民、消費生活者であり、ケアによる支え合いや文化の担い手としても地域社会に深く関わってきました。家電製品から住宅まで、修理・改修して再利用を可能にするなど、モノを大切にし、地域の環境保全・リサイクルにも貢献しています。
地域ににぎわいを取り戻し、コミュニティーを復活させる上で、商業振興と結んだ「まちづくり」への役割発揮が期待されています。外国籍の中小業者や労働者たちとの共生社会づくりも大切です。
2、中小業者の新たな可能性
危険性を顧みずに原発を推進し、気候危機に目をふさいで石炭・石油の火力発電に依存するエネルギー政策が矛盾を深めています。エネルギー自給率を向上させ、持続可能な社会の実現こそ求められています。
再エネを地域特性を踏まえて大規模に普及するため、電力の生産者となる市民社会の試みに協力・共同し、中小業者の知恵と力を生かすことが大切です。
感染予防の時短要請や情報技術への対応、最低賃金の引き上げなどに関連して、中小業者への直接支援が不十分ながらも行われてきました。中小業者の倒産・廃業に歯止めをかけ、活力を取り戻すためにも、暮らしと平和に貢献する施策こそ予算を拡充すべきです。
大量生産、大量消費、大量廃棄の大企業型の経済からの脱却にも、大軍拡による「死の商人」化の阻止のためにも、人間尊重の生産・流通システムづくりと中小業者の貢献が期待されています。
地域経済の振興に農林水産業と中小商工業を基幹産業として位置付けることが不可欠です。中小業者の力を生かして農商工連携も強め、食料での自給率の向上や安心・安全の確保、国土の保全を図ることが求められています。
第4章 民商・全商連運動の展望と方向
2000年代以降、中小企業振興基本条例の制定が都道府県に広がりました。2014年に小規模企業振興基本法が成立し、小規模企業に焦点を当てた条例の改正も進みました。しかし、中小企業対策予算は低水準のままで、多くの中小企業・中小業者は苦境が続きます。外交や経済・経営の在り様などでアメリカの理不尽な要求に屈従しつつ、純粋持株会社の解禁や消費税の増税・改悪など、大企業の利益を優先する経済・財政政策が続いてきました。
困難打開と運動の世代的継承へ、切実な要求実現と民商・全商連の拡大・強化に取り組むことが大切です。中小業者の大同団結を広げ、国民共同の力で対米追随・大企業本位の政治を国民本位の政治へと改めさせていくことです。力を合わせて、民商・全商連運動の新たな前進を実現し、中小業者の存在が国民の幸福と社会進歩に生かされる社会づくりに挑戦します。
1、全中小業者の要求実現をめざす運動の展望
(1)悩みや要求の相談が運動の要
経営と生活に関するさまざまな悩みや要求を相談し合う活動は要求運動の要です。また、産業構造の変化に伴う中小業者の動向や要求、国・自治体の施策の活用と分析、さらには地域の状況・変化を明らかにし、要求実現の道筋を示す政策提案活動は運動発展の力となります。
地域循環型の経済システム構築と安全で快適な住民本位のまちづくりに取り組むことが、市民社会と中小業者の経営の発展にとって重要です。
民商・全商連運動の基本は、みんなで力を合わせて運動し、一人一人の会員の要求はもとより、全中小業者共通の要求実現のために奮闘することです。地域や業界の課題を中心に中小業者団体との懇談・対話を進め、一致できる要求での共同行動に取り組みます。民商会員は所属する業界の中で積極的な役割を発揮します。
(2)国民の世論と運動こそ政治を動かす力
議会制民主主義を生かして協力・共同する国会や地方議会の議員と連携し、国民・中小業者の利益擁護を図ります。徴税権力の横暴や不公正な取引などを広く告発し、国会や政府への要請も強め、中小業者の多彩な実益獲得や取引ルールの改善、平和的生存権の拡充、人権擁護・ジェンダー平等などを迫る世論と運動を広げます。
国民・中小業者に惨禍や犠牲を強いる為政者たちの暴走を許すことはできません。商売や暮らし、平和をめぐる切実な要求に対して、どんな政治姿勢をとっているかを党派や議員別に検証して内外に知らせ、選挙の機会に政治的争点として押し出して、要求実現への対話運動を推進します。政・官・財癒着の政治腐敗の根絶へ共同を強めます。個人番号やデジタル化による国民への監視やプライバシー侵害を許さず、自己情報コントロール権の確立を求めます。
国民の世論と運動こそ政治を動かす力であることへの確信を培い、中小業者の政治的な無関心や沈黙を克服し、一致できる目標での国民的な共同行動の前進に貢献していきます。
(3)ナショナルセンターとしての役割
民商・全商連は、災害や感染症などで甚大な被災が広がる事態に際して、「生活と生業の再建」を求める運動を全国規模で推進してきました。
惨事に便乗する悪政を許さず、苦難に寄り添った助け合い運動を展開し、自治体と政府の双方へ公的支援策を提案・要求していきます。
また、「税の集め方と使い道」などに関わる重要な課題でも、全中小業者の立場に立ち、国民諸階層の団体・個人との協力・共同を推進しています。
民商・全商連が「中小業者運動のナショナルセンター」としての役割を自覚し、その力を発揮することに内外の期待と注目はいっそう高まっています。
(4)要求運動と組織建設を一体として
要求を実現する保障は、強く大きな組織づくりです。多くの中小業者と要求で結びつき、要求運動の中で組織の活力を発揮し、地域の中小業者と民商・全商連との信頼関係を強めていきます。
民商・全商連の運動と理念を多くの中小業者に伝え、共感を広げられるよう政策提案活動を強めます。要求運動と組織建設を一体として進めることで、民商・全商連の存在意義を高め、拡大・強化への展望を広げることができます。
民商・全商連は、自営商工業者の要求を基本としつつ、地域を舞台に中小企業・中小業者の全体に運動の魅力と意義を伝え、対象業者比での組織率を高めて多数派をめざします。
2、一人一人の要求実現の運動を、民商・全商連運動の理念を土台として発展させる
(1)要求運動を進める方向
(ⅰ)経済の民主化と経営改善
民商・全商連は、経営問題の研究と改善、業種別対策、融資制度の改善を図る運動などを進めてきました。経済の基本は、人々が安心して働き、その成果が公正に行き渡り、生活を楽しめる快適な環境をつくり、明日の活力を生むために、必要なものを生産・製造、輸送、販売し、さまざまなサービスを提供するところにあります。
経済の民主化と経営改善をめざし、次の点を運動の基本とします。
(1) 緊急・切実な要求解決の運動や経営力強化の運動と、地域、業界の発展につながる経営環境改善の運動を系統的に強めます。
(2) 経営対策は、産業構造の変化やその時々の社会、経済の変化に対応し、地域経済の振興と住民の暮らしと福祉に役立つ方向で推進します。
(3) 大企業本位の経済政策をやめさせ、大企業と対等の関係を打ち立てます。中小業者の団結を強め、大企業の取引姿勢を正し、交渉する力を高めます。
(ⅱ)税制と税務行政の民主化
民商・全商連は、戦後の激しい徴税攻勢に対する国民的たたかいの伝統を引き継いで、税制と税務行政の民主化をめざして一貫して奮闘してきました。これら税を巡るたたかいは国家の存立の基盤をなすものであり、財政民主主義の確立、日本経済の民主的再建にとっての要です。自家労賃要求は、税制問題にとどまらない人間としての権利の要求であり、社会の進歩につながる運動です。
税制の民主的改革と納税者の権利を守る要求については、憲法理念の徹底をめざす立場から、以下を基本とします。
(1) 生活費への課税をやめさせ、大衆的な消費課税を廃止する。
(2) 能力に応じた公平な税制を確立する。
(3) 主権在民に基づく申告納税制度を擁護・発展させる。
(4) 個人の尊厳を守り、税務行政の全般に適正手続きを貫く。
(5) 税金の使途について発言し、監視し、是正する権利を広げる。
(ⅲ)社会保障と教育の充実、文化等の振興
民商・全商連は、社会保障の改悪に反対し、医療や介護、年金、福祉の拡充を求めてきました。社会保障の基本は、全ての国民の尊厳を守るため、最低生活と生存権を保障することにあります。憲法は、そのための国の使命を示しています。
医療や介護の負担軽減と給付の差別解消、全額国庫負担の「最低保障年金」の創設、生活保護法の「生活保障法」への改正などに取り組みます。
社会保障を「自己責任」とし、財源を国民の自助や共助に求めて、分断を図る策動は許せません。子育て支援を強め、平和と民主主義を重視する教育を充実させます。非正規雇用への差別に反対し、所得配分の平等化への接近に力を合わせます。健全な文化・芸術、スポーツの振興に貢献して、コミュニティーを豊かにします。
被災業者の再起や新たな挑戦を粘り強く支援するとともに、気候危機から地球環境を守る運動や有害物質問題の解決などにも貢献します。
(ⅳ)反核・平和、民主主義の擁護と政治革新
民商・全商連は「戦争の惨禍」を繰り返させない立場で奮闘します。
(1)憲法の平和的・民主的条項の擁護と完全実施を求め、日米安保条約を平和友好条約に切り替えることを提案していきます。アメリカの先制攻撃戦略と結んだ軍国主義復活に断固反対します。
(2)人類と共存できない核兵器の廃絶と被爆者援護・連帯の運動を引き続き発展させます。核兵器禁止条約の批准を日本政府に要求し、「核なき世界」への世界的な市民社会の運動に貢献します。
(3)国政や地方政治の革新を進める運動を発展させます。戦争法・安保法制廃止を求めた「市民と野党の共闘」にも学び、保守と革新の違いを超えて国民の利益に応える政治戦での共同を探求します。
(2)要求実現をめざす運動の基本
(1)要求を持っている中小業者は、自らたたかう力を持っています。要求実現の道筋を明らかにし、展望を示すならば、知恵と力は発揮されます。
(2)一人一人の会員の要求はもちろん、地域の中小業者の共通した要求を重視し、班・支部を基礎とした営業と生活に密着した活動を強めます。道理に合った全ての要求を取り上げ、その実現のため努力します。
(3)要求ある者が運動の先頭に立てるようにし、運動を通して知った要求実現の道筋などを広く知らせて組織します。
(4)共同行動は、▽要求で一致▽対等・平等▽独自活動の尊重-という3原則を堅持することが重要です。
(5)民商・全商連は運動を推進する団体であり、組織として共同事業は行いません。民商会員が中心になって共同で事業を行う場合には、団結、連帯、自己責任を基本に自主的・民主的運営に努めます。
(6)家族一人一人の要求を大切にし、みんなで相談し、力を合わせた困難解決をめざします。
3、地域に根ざした強大な民商・全商連の建設
民商・全商連は、大企業にも、国や自治体にも、道理に基づき正々堂々と意見を述べる団体であり、地域の中小業者の営業と生活を守る運動に責任を負う立場を貫いています。組織運営も、会員主人公で役員を中心とした活動を進めています。
一人一人が困難解決の力を身に付けることが重要です。「運動しつつ学び、学びつつ運動する」という伝統を生かし、確かな方向を民商・全商連の歴史と理念、方針と規約から学ぶことです。
(1)活動の原点から班・支部活動を前進させる
民商・全商連運動は、「集まって、話し合い、相談し、助け合って、営業と生活を守る」ことを、活動の原点としてきました。
班は、会員が日常的に声を掛け合い、知恵や情報を持ち寄って助け合う場です。班活動が活発であるほど、会員同士が身近な仲間として、互いを守り合う力を高めます。
支部は班活動を土台に、当該地域での運動に責任を持ちます。要の相談活動を地域で担い、充実させる役割も期待されます。
班・支部活動の前進は一人一人の会員が自ら諸活動に参加することで実現します。
(2)全国商工新聞を運動と組織の中心に据える
全国商工新聞は、日本の機関紙ジャーナリズムの重要な一翼として、民商・全商連の理念と運動、中小業者の広範な要求運動を全国に伝えて世論を喚起し、運動の足並みをそろえる重要な役割を担っています。
この全国商工新聞を、運動、組織、財政の諸活動を統一的に前進させる中心に据え、全国と地域を結んで発展させる要とします。
商工新聞読者は、民商運動の身近な理解者です。紙面の紹介も生かして、民商運動での多面的なつながりを強めます。
(3)全会員の活動参加を民主的運営で進める
民商運動の発展に、規約を生かした民主的な運営が欠かせません。役員会は情勢に目を配り専門部も生かして必要な対策を進めるなど、極めて重要な役割を担っています。役員は、方針実践の先頭に立ち、運動の主人公である会員の力が生かされるようにします。
事務局員は、(1)要求を実現するため会員自らが活動に参加できるよう役員会と一緒になって活動する、(2)会の組織と財産を守る、という積極的な役割を担っています。
役員会と事務局の相互信頼を高め、方針に団結して実践に足を踏み出すことが大切です。
(4)実績を知らせ、拡大運動を日常的に強める
「仲間が増えてみんな笑顔」となれるよう拡大運動を強めます。民商・全商連の組織の拡大・強化は、それ自体が中小業者の営業と生活の安定向上に深く結びついています。
運動の実績や存在価値を「目に見え、耳に届き、口コミやSNSで話題となる」よう広く知らせ、会員が自らの言葉で「商売・人生・民商」を語り合って紹介の力にします。「入って良かった。良かったことは人にも勧めよう」の気風をみなぎらせます。民商・全商連に対する誹謗・中傷や反民商宣伝には直ちに反撃します。
成長・発展目標と行動計画を持ち、組織建設を目的意識的に不断に追求します。
(5)地域と全国の運動の統一と継承を図る
民商・全商連の持続的な発展へ要求運動や拡大行動での「民商間連携」を進めてきました。連合会組織の優位性を発揮し、民商の自立した運営を基礎にしながら、県連への結集を強め、全商連方針に団結してこそ、新たな前進への知恵と力を高めることができます。
県連は、民商の活動を県段階で結集して教訓を広げるとともに、全商連方針を実情に合わせて具体化する役割を担っています。会勢の前進による民商の新たな設立をめざすとともに、組織の維持・再生が必要な場合、適切な再編・統合を検討・協議するようにします。機関と支部での役員づくり、事務局員の確保・育成を全商連と協力して推進し、運動の世代的継承を図っていきます。
(6)財政活動の5点改善で運動を支える
民商・全商連は財政を政府や自治体の補助や大企業からの援助に頼らず、会費と商工新聞紙代を基盤とすることで、誰にも遠慮することなく活動しています。
(1)15日集金と当月集金で、未収の積み重ねによる退会者や購読中止者を出さないようにします。
(2)班・支部を中心に集金体制をつくり上げ、班・支部の会議でも財政問題を話し合います。
(3)財政部会を定期的に開き、毎月の予算執行率を明らかにし、未収の具体的な解決策を講じます。
(4)要求運動に見合った財政計画をその都度つくり、積極的に募金活動を行います。
(5)全ての組織が月一度は必ず送金し、民商・全商連運動を財政的に保障します。
4、共済運動を強め、助け合いの輪を広げる
民商・全商連は、劣悪な社会保障制度改善に力を合わせ、会員同士でいのちと健康を守る助け合いの共済活動を前進させてきました。中小業者にとって、経営と健康は密接不可分です。仲間への「目くばり、気くばり、心くばり」の共済会活動が民商・全商連の運動と組織を豊かにしています。
集団健康診断は早期発見・早期治療に役立ち、結果返しや健康講座で生活習慣を見直しています。また、健康の実態告発は社会保障における中小業者の無権利状態を浮き彫りにし、国保制度の改善にも寄与しています。
「自前の共済」への団体自治を強め、「民商にふさわしい共済」への探求を進めていきます。全ての会員の共済加入をめざすとともに、会員と配偶者中心の助け合いを推進していきます。
5、業者婦人と業者青年の運動・組織を強める
中小業者として、あるいは家族専従者として働く業者婦人や業者青年の要求を実現することは、性別や年齢によるさまざまな差別をなくし、単価や税金、社会保障給付の根拠となる家族一人一人の労働の社会的評価や人権を確立することにつながっています。
業者婦人や業者青年の独自要求実現とともに、民商・全商連運動の全体を豊かにし、女性や青年の共闘に貢献することができるよう、全商連婦人部協議会(全婦協)と全商連青年部協議会(全青協)の「結成の意義」に理解を深め、運動の継承・発展を援助していきます。婦人と青年の部員拡大にも力を合わせ、民商・県連・全商連の各段階で、総合的な発展に向けた懇談の機会も持つようにします。
(1)婦人部は、女性の視点から暮らしと営業を見直す運動を強めてきました。この中で、働き分を差別なく経費として認めさせる所得税法の改正や国保制度での傷病・出産の手当などを粘り強く求め、国連の女性差別撤廃委員会でも正当な要求と評価される状況を作り出してきました。消費税の減税・廃止に向けても、中小業者と消費者の立場を統一して女性の共闘を強め、業者婦人の地位向上とジェンダー平等社会への確かな力になっています。
婦人部の活動支援で、男女平等と家族経営の振興をめざす機運を高めていきます。
(2)青年部は、新規開業や事業承継の中で、商売に魅力と可能性を見いだそうとする業者青年を励まし、同世代の仲間との出会いの機会を広げています。民商・全商連の活力を高め、反核・平和運動などでの青年の共闘でも貴重な役割を発揮しています。
業者青年に魅力ある民商建設を推進します。民商・全商連と青年部・全青協の「架け橋」となる青年対策部の確立を進め、運動の世代的継承につなげていきます。
結びとして
民商・全商連は、国際的にも類のない中小業者自身の自主的・民主的な組織として築き上げられてきました。日本の社会的基盤が民商・全商連を必要としてきたからこそ、運動の歴史が作られ、積み重ねられてきました。
民商・全商連の「三つの理念」は広範な中小業者の心を捉えてきました。また、民商・全商連は中小業者の大同団結を阻もうとする勢力とのたたかいの中で鍛えられてきました。
歴史は平坦な道ばかりではなく、幾多の困難が横たわっています。しかし、民商・全商連の運動は、これらの障害を一つ一つ乗り越えてきたたたかいの歴史に彩られています。
民商・全商連運動の発展、この組織の拡大・強化こそが中小業者の営業と生活の安定・向上に深く結びついています。
中小業者の役割が正当に評価され、新たな可能性を輝かせるために、民商・全商連の新たな前進が強く求められています。
民商・全商連運動の歴史は中小業者の営業と生活を守るたたかいに根ざし、国民全体の幸せと固く結びついて前進してきた世界に誇るべき歴史でもあります。ここに確信を持って大いに奮闘しましょう。
決定 全商連第39回定期総会(1992.5.11~13)
改定 全商連第45回定期総会(2002.5.25~27)
修正 全商連第57回定期総会(2026.5.23~24)

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