セブン本部社員が実態を告発 「ブラック体質」の根絶を|全国商工新聞

全国商工新聞

 セブン-イレブン本部の社員として「ブラック体質の根絶を」と声を上げる河野正史さんにセブンの実態と改革への思いを聞きました。

セブン-イレブン長野山梨ゾーン
オペレーション・フィールド・カウンセラー(OFC)
河野 正史さんに聞く

パワハラで社員が自殺

 2013年に長野県飯田市でOFCをしていた青年が、地区マネジャーから激しいパワハラを受けて、練炭自殺をするという痛ましい事件がありました。
 「こんな会社でいいのか。誇りをもって働けるような会社にしたい」と決意し、社員でありながら、本部の人権無視のブラック体質を告発し続けています。
 24時間営業問題での社会的批判を受け、セブンは4月24日、「行動計画」を公表。オーナーヘルプ制度の拡充を掲げました。冠婚葬祭、病気、旅行などの場合に、本部社員がオーナーの代わりに店に入るというものですが、いつの間にか「旅行」の文字は削除されていました。5月23日の株主総会で追及を受けた井阪隆一社長は「優先順位がある」と弁明しました。
 加盟店の募集に際しては、ヘルプ制度もあると宣伝していますが、この制度はまったく機能などしていません。こういう体質をもった会社です。
 私は、そんな本部のやり方はおかしいと声を上げ、降格処分を受けました。その後、2年間たたかい、18年12月に勝利。OFCに復帰しましたが、担当店舗は持たせてもらっていません。
 OFCは本来、オーナーの相談に乗ったり経営をサポートしたりする仕事ですが、実態はそうではありません。

「自爆営業」は社の方針

 セブンに入社したのは01年です。新規採用は毎年400人ぐらい、ほとんどは5年ほどで辞めてしまいます。入社するとまず直営店に入り、1年間は店員として、2年間は店長として働きました。500店舗ごとに10店舗くらいの割合で本社直営店になっていて、直営店で新入社員教育をしています。直営店でも多くは赤字で、店長らの過重労働で成り立っています。自宅よりも店にいる時間の方が長かったです。深夜の1時、2時まで立ち通しで働き、家に帰ると玄関で倒れてしまうという生活でした。
 その後、OFCとなり8店舗の担当に。本部社員の「年功序列賃金は30歳まで」で、裁量労働なので残業代はつきません。出勤は8時、夜は10時、11時になるのが普通です。
 本部からは「発注を増やせ」「売り上げをどれだけ伸ばしたか」と、日々厳しい追及を受けます。「前年より必ずプラスにせよ」が至上命令です。
 恵方巻き、ひなまつり、母の日のギフト、お中元、おでんセール、年賀状、クリスマスケーキ、おせちなど予約商品のノルマがあり、販売競争をさせられます。コンビニのおせちなど、一般のお客さんから注文など取れるわけはありません。自分で買うしかないのです。5個買って友達に安く分けたことがありますし、川に捨てられているクリスマスケーキを見たこともあります。「自爆営業」は、「自己買い」という、れっきとした会社の制度・方針になっているのです。
 これはキャンペーン商品だけの話ではありません。おにぎりが重点販売方針だとなると、200個しか売れないお店に、無理に300個注文させます。社の幹部が「キャベツの浅漬けがおいしい、浅漬けは、各店1日30個ぐらいは売れるはずだ」と発言し、各店舗に30個置くことになったこともありました。実際には売れませんので、自分で買い支えをしました。

経営陣の総退陣が必要

セブン-イレブン株主総会を終え出てくる株主ら

 OFCには、毎週火曜日、今は隔週ですが、東京の本部で北海道から九州まで、全国から参加する会議があります。予約注文など、成績の悪い人は立たされて、「何で販売数が伸びないんだ!」など大声で罵倒されます。「自爆買い」をしているのに、「会長の言う通りに並べたら売れました」という人が出世していきます。
 発注が増えれば本部はもうかる、お店は損失が増える。OFCとしては会社側につくのか、オーナーさんの苦情に耳を傾けて発注を適正なレベルにするのか、板挟みになります。
 多くの人は本部の体育会系的なパワハラに負けて、もうけ至上主義に従い、オーナーを苦しめる側に立たされてしまいます。病気になったり、嫌気がさして辞めていく人が後を絶ちません。
 この仕組みでは「オーナーは生活できない」と実感しました。オーナーと店員、それに関連労働者の搾取で成り立っており、あらゆるレベルで優越的地位の乱用が横行しています。
 物流はドライバーのストライキに備えて多数の会社に外注しています。搬送車は、セブンのマークを付けていますが、みな違う会社で、基本一人乗務。14、15時間労働は当たり前です。配送中に倒れた人も出ています。専用工場でも外国人労働者が機械に挟まれるなどの死亡事故も起きています。
 今では広く知られていますがオーナーも過酷です。多額のチャージとして売り上げの半分も本部に持っていかれます。人間らしい暮らしが奪われるだけでなく倒れたり、過労死する例もまれではありません。
 今の経営陣が総退陣しないとセブンは変わらないと思います。
 株主総会でも、変わらない本部の姿勢へのいら立ちや怒りに満ちていました。オーナーも本部の従業員も、加盟店のパート、アルバイトはもちろんコンビニに関わるあらゆる人々が団結し、人間らしく働き、生きる権利があると声を上げていかないと変わらないと思います。ブラック体質の根絶に向けて力を合わせていきましょう。

購読お申込みはこちらから購読お申込みはこちらから