台頭する排外主義 誰一人取り残さない共生社会を|全国商工新聞

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 参院選で、消費税の減税とインボイス廃止が国民注視の争点となる一方、候補者らによる街頭演説で、外国人をおとしめるヘイトスピーチ(増悪表現)も相次ぎました。「日本人ファースト」を掲げる参政党が公約で「外国人参政権を一切、認めない」としたのをはじめ、自民党も、外国人を狙い撃ちにする取り締まり強化を打ち出し、国民民主党も玉木雄一郎代表が「外国人の不動産購入を抑制する」と表明しました。
 こうした事態に、外国人や難民などの人権問題に取り組むNGO(非政府組織)8団体は8日、排外主義の扇動に反対する緊急共同声明を発表。「外国人優遇論」など根拠のないデマは共生社会を破壊するものであり「極めて危険だ」との訴えは、266団体にまで賛同が広がっています。
 参院選での排外主義的主張は、国民の暮らしの困難につけ込み、「苦しいのは、外国人が優遇されているからだ」と、差別と分断をあおり、外国人を排除すれば、国民の抱えるさまざまな問題が解決するかのような錯覚を与えるものです。そもそも、日本に暮らす多くの外国人は、私たちと同様に働き、税金や社会保険料を納めています。中小企業を支える労働者として献身的に奮闘する外国人もたくさんいます。中小業者の営業難や国民の生活苦は、外国人のせいではなく、大企業優遇など、自公政権の悪政が原因です。
 排外主義の矛先は、やがて自国民にも向かっていくのが歴史の教訓です。1923年の関東大震災の際には、略奪や放火をしたというデマのもとに、朝鮮人や中国人を虐殺しました。やがて「戦争に反対するのは非国民」と、平和を求める国民を差別し、その声を圧殺しました。日本人も、外国人も、一人一人が人間として尊重される社会にしなければなりません。
 民商・全商連は、70年を超える運動の中で「一人はみんなのために、みんなは一人のために」という理念を培ってきました。全商連第56回定期総会で採択された「私たちの要求」は「性自認や国籍、人種、民族、階級などによるあらゆる差別をなくす」ことをうたっています。他者の存在や尊厳、人権を認めない排外主義の潮流を許さず、誰一人取り残さない共生社会を築きましょう。

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