国保に傷病・出産手当を 全商連・全婦協の全自治体調査に612自治体が回答|全国商工新聞

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全国の民商や婦人部は、国保に傷病手当・出産手当の創設を求めて自治体に要請しています。写真は北海道東川町の菊地伸町長(右手奥)らと懇談する旭川民商婦人部の役員ら=4月6日

 全国商工団体連合会(全商連)と全商連婦人部協議会(全婦協)は8月20日、47都道府県を含む全1788自治体の首長を対象に実施した「国民健康保険(国保)に傷病手当と出産手当の創設を要望する意見に対するアンケート」結果を公表しました。調査には、612自治体(回答率34.2%)が応じました(調査期間=6月16日~7月24日)。

病気や出産で休めない実態

 調査は、国保にも傷病手当・出産手当の創設をめざそうと、各自治体の見解を把握する目的で行われました。「2025全国業者婦人の実態調査」では「病気やけがで休めなかった」が4割超、労働基準法で出産前後の母体保護のために「産前6週間、産後8週間」は原則として就業させてはならないとされているのに対して、産前・産後ともに6割超が6週間や8週間の休みが取れず、特に産前では5人に1人が休めなかったと回答。協会けんぽのような傷病手当・出産手当がない国保加入者の過酷な実態が浮き彫りとなっていました。
 「(両)手当の必要性について」は「あった方がよい」77自治体(12.6%)、「ないのは致し方ない」337自治体( 55.1%)、「その他」198自治体(32.4%)となり、必要性に理解を示す自治体がある一方、現状では「致し方ない」とする回答が半数を超えました(図1)。
 「あった方がよい」理由として「『傷病で働けなくなり、困窮している』という相談がある」「病気や出産で働けなくなった時のリスクが軽減できる」が挙げられました。
 「ないのは致し方ない」理由としては「『正確な減収額』の証明が困難」「国保は医療給付を目的とした制度であり、所得補償を目的とする『傷病手当』『出産手当』はなじまない」「財源を国保料・税に求めざるを得ず、保険料引き上げにつながる」などが挙げられました。「国保の都道府県化が進められているため、一自治体の判断ではできない」という回答もありました。

国から制度の例示があれば

 「導入が困難な理由」としては「財政的に困難」32自治体(42.1%)が最も多く、次いで「法定要件ではない」20自治体(26.3%)、「給付算定額の決定が困難」9自治体( 11.8%)となりました。「必要予算の試算について」は、6自治体(1.0%)が「試算してもよい」と回答。「試算はできない」は516自治体(84.3%)となりました(図2)。試算できない理由として「休業補償額の推計が困難」との回答が目立ちました。一方で「国から制度や算定式などが示されれば試算は可能」との回答もありました。
 全商連と全婦協は、アンケート結果を基に、国保に傷病手当・出産手当の創設を自治体に対して求める運動を強めることを呼び掛けています。

国が主導し条件の整備を
神奈川県民要求を実現する連絡会 事務局長 神田 敏史さん

 公的医療保険制度には、大企業の従業員が加入する「組合健保」、主に中小企業に勤める人が加入する「協会けんぽ」(以上「健保」)、公務員等が加入する「共済組合(共済)」、自営業や年金生活者が加入する「国民健康保険(国保)」があり、病院を受診する時の「療養の給付」をしている。「健保」や「共済」は、疾病や負傷で仕事ができない時の「傷病手当」、出産等で休業した時の「出産手当」など、労働者の所得補償を制度の中に設け、生活水準を保障する給付が行われている。
 しかし国保では、療養の給付は義務付けられているが、所得補償や生活保障となる「傷病手当」「出産手当」は「その他給付」として、実施するかしないかは市町村の独自判断となっている。
 市町村が独自に実施するためには、その財源をどうするのかが大きな焦点となるが、ただでさえ高い保険料に上乗せすることは難しい。また、給付の受給者を「雇用者」だけにすると、個人事業主や、被保険者の半数を占める無職者の理解を得ることも困難となる。現在、国保では保険料を都道府県で統一する動きが進められている。多くの自治体は「高過ぎる保険料・税を何とかしたい」と思っているが、統一化によって保険料・税率が引き上がる市町村もある中で、さらに上がることは避けたいという事情もある。
 しかし、2020年3月以降の新型コロナ感染症感染拡大予防として、国保に「傷病手当」制度が創設されたように、健保や共済の制度を準用し、政府による財政支援があれば、実施することはできると証明された。ただ、健保や共済を準用した制度では、個人事業主は「所得の把握が困難」ということを口実として除外されてしまう、という課題は残される。
 しかし、国保を含む公的医療保険制度は社会保障であることから、給付の内容も一元化すべきである。傷病手当や出産手当も例外ではない。
 今回のアンケートでは「国保に傷病手当、出産手当がないことについて」の回答で「あった方がよい」は12.6%にとどまり、「ないのは致し方ない」が55.1%を占めた。一見すると、自治体は「傷病手当・出産手当」を否定的に捉えているように見えるが、「条件が整えば国保制度に『傷病手当』『出産手当』を設けること」は否定されていないと捉えるべきである。
 「(国が)制度設計の前提、要件、算定式などが示されれば、それに基づいて試算・検討することは可能」と回答した自治体があるが、国は基準を示そうとしない。そうであれば、住民(加入者)の要求として、具体的な算定基準を示し、それに基づいて試算するよう求めることも必要になるのではないか。
 国や自治体に対して「保険料の完全統一を目指すなどの国保の都道府県化を中止し、高過ぎる国保料・税の引き下げと『その他給付』の改善を」という声を届ける運動が求められている。

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