「法人事業所及び常時従業員五人以上の個人事業所に義務付けられる社会保険料が、小規模企業の経営に負担となっている現状」(小規模企業振興基本法の衆・参委員会の付帯決議、2014年6月19日)が一向に改善されない中、各地の年金事務所による、社会保険料を滞納した事業者の実情を無視した強権的な徴収が横行。民主商工会(民商)が、当事者らとともに年金事務所に要請し、換価の猶予など納税緩和制度の積極活用を求めています。
埼玉北部4民商 徴収の是正を初要請
年金事務所「協議に応じる」回答


「埼玉・熊谷年金事務所は、社会保険料を滞納した事業者の実態を無視して一括納付を迫り差し押さえるのではなく、寄り添った丁寧な対応を」―。埼玉県北部の行田、熊谷、深谷、本庄の4民商は6月24日、熊谷年金事務所に社会保険料の強権的な徴収の是正や滞納相談への親身な対応、猶予制度の積極的な活用など7項目を求め、初めて要請しました。深谷民商の会長はじめ12人が参加し、強権的な対応に苦しむ事業者の実態を告発しました。年金事務所側は、副所長ら3人が応対しましたた。
所側は「滞納者から相談を受けた際には、実態を見て対応している。財務状況が分かる資料を基に、納付協議に応じている」と回答。
参加者が「滞納した社会保険料を一括で納付するよう執拗に迫られる事例も寄せられている。滞納者に寄り添った対応をすべき」と述べると、「最初の協議では必ず一括納付を求めているが、財務状況を示してもらえば、協議に応じる」と応じました。
参加者らは「事務手続きに不慣れな事業者もいる。猶予申請に必要な書類を一覧にするなど、猶予制度の周知を丁寧にしてほしい」「強権的な対応をする担当者は交代させてほしい」なども要望し、「滞納者の実態に寄り添った対応を」と重ねて求めました。
社保料滞納換価の猶予で 差し押さえ解除
大阪・摂津民商会員=足場仮設・解体工事
大阪・摂津民主商工会(民商)会員の松井聡さん(仮名)=足場仮設・解体工事=は、従業員5人を雇い、毎月30万円の社会保険料を払っていましたが、一時的に仕事量が落ち込んだことから、支払いが困難に。延滞金を含め550万円を滞納しました。
5月15日に、従業員の給料を振り込むため、銀行を訪れると守口年金事務所から預金口座が差し押さえられていることが判明。松井さんは、すぐに民商へ相談しました。
民商事務所で、換価の猶予の申請書を作成して、5月19日に2人で年金事務所へ。今後の事業の見通しなどを示し、ひとまず納付可能な57万円を納付し、今後は当月分の社会保険料に加えて毎月20万円ずつ滞納分を支払う計画を示し、換価の猶予が認められ、預金の差し押さえが解除されました。
松井さんは「一人では諦めていたと思う。民商に相談して良かった」と喜びを語りました。