年金事務所が違法・不当な徴収 「社保倒産」許さない|全国商工新聞

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国税徴収法に沿った対応を

  各地の年金事務所が2023年の秋以降、社会保険料(社保料)の滞納者に対し、強権的徴収を横行させています。全国の民主商工会(民商)にも「売掛金を全額差し押さえられ、『会社をつぶす覚悟でやっている』と暴言を吐かれた」「換価の猶予を申請する条件として、『400万円払え』と言われた」など、違法・不当な言動の報告が多数寄せられています(図)。岩手県盛岡市では、「岩手中央タクシー」の営業用車両が差し押さえられ1月末に倒産するなど、「社保倒産」とも呼ばれる事態が全国に広がっています。全国商工団体連合会(全商連)は2月26日、不当徴収に苦しむ民商会員3人とともに衆院第一議員会館内で記者会見し、違法・不当な徴収行政の実情を訴えました。

追い詰められた業者が告発

800万円の完納迫る 岩手県一関市 Tさん=土木
倒産を迫るような社会保険料の強権的徴収を告発する当事者

 2021年5月までは、社保料を払えていましたが、従業員による売り上げの横領やコロナ禍の受注減で、資金繰りが悪化し、納めきれなくなりました。
 「コロナの納付猶予特例制度(特例制度)」を活用し、新規発生分と滞納分の計10万円を毎月納め、雇用調整助成金も活用して従業員に休業手当を払っていました。しかし、事業所負担分の補助はなく、滞納が積み上がっていきました。
 23年8月ごろ、年金事務所に呼び出され、「猶予が終わるので、滞納分800万円を1年で納めろ」と言われました。民商に相談すると、「換価の猶予」で最長4年の分納ができると分かり、年金事務所に分納を何度も申し入れましたが、「1年で完納しろ」と迫られるばかりでした。
 「2月1日の猶予期限を過ぎると差し押さえが始まる」と言われ、1月末、年金事務所にさらなる換価の猶予を求める嘆願書を提出しましたが、認められる様子はありません。
 売り上げや車を差し押さえられたら、商売できず、従業員10人も解雇せざるを得ません。納付を少し待ってくれてもいいじゃないですか。

虚偽の内規で脅し 東京都新宿区 Sさん=美容クリニック

 コロナ禍で来客数が減少し、社保料の支払いが厳しくなったので、年金事務所で分納の相談をすると、「内規で分納は3回まで」と押し切られ、「不履行になったら滞納処分を実施する」との書面にサインさせられました。全商連の厚労省要請に参加し、この内規は虚偽だと明らかになりました。融資のリスケジュールを強要され、遅れながらも払える額を納めてきましたが、23年6月以降、納付困難に。
 納付相談を続けているにもかかわらず、12月26日に年金事務所職員4人が突然来店し、お客さんやスタッフの前で金庫やレジを開けさせ、現金100万円を差し押さえました。銀行も営業していない年末に「1月4日までに保険料2カ月分の約800万円を準備しないと、差し押さえを続行する」と脅され、親戚や友人に電話をかけまくって、「お金を貸してほしい」と頼みました。
 1月5日に民商と一緒に年金事務所に行き、その後、納付交渉を続けています。「換価の猶予は通らない。申請するなら400万円を支払え」と言われましたが、権利として申請を行いました。
 この間の出来事で従業員が10人以上退職し、予約も受けられません。年金事務所の対応は、厚労大臣の答弁とは矛盾しています。

売掛金差し押さえ 東京都羽村市 Aさん=卸・小売り

 コロナの特例制度を活用していました。22年3月ごろ、特例制度が終わると聞き、納付相談のため、年金事務所を訪ねました。分納計画書を提出して「必ず払うが、コロナ禍が明けたばかりの今は、猶予分を払うのは難しい」と伝えましたが、「こんな計画では、日本年金機構が認めないから作り直せ」と、何度も突き返されました。「うちは債権者。1円でも多く払え」「経営者として失格」「銀行はリスケしろ」などと脅され、話を聞いてくれませんでした。
 23年9月に猶予の打ち切りが決定し、11月に差し押さえられました。大口で一番の取引先の売掛金が差し押さえられ、取引も停止に。在庫を販売しようとしましたが、取引先の信用を失い、駄目でした。12月に審査請求を出しましたが、却下されました。
 従業員6人も解雇せざるを得ず、「倒産しろ」と言われているようなものです。コロナで弱った中小業者に、こんな仕打ちは本末転倒です。

コロナの納付猶予特例制度

 2020年1月~12月分までの社保料を対象に、新型コロナの影響により、事業等に係わる収入に相当の減少があった場合、無担保・延滞金なしで1年間納付を猶予した制度。現在は終了。

換価の猶予

 職権型の換価の猶予は、納税の誠意が認められ、その財産を直ちに換価(売却)することにより事業の継続、生活の維持を困難にする恐れがある時、年金事務所の所長が職権で、財産の差し押さえを猶予、あるいは解除するもの。
 申請型の換価の猶予は、厚生年金保険料等を一時に納付することで、事業の継続等を困難にする恐れがあると認められる場合に、申請に基づいて差し押さえ財産の換価が猶予されるもの。
 申請者は、納付すべき保険料等の納期限から6カ月以内に年金事務所に提出する。
 換価の猶予が許可されると、①差し押さえの解除②延滞金は全部または一部が免除③猶予期間は最長2年(職権型の換価の猶予と合わせれば最長4年)―が可能になる。

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