優越的地位乱用是正を 全商連が財務、国税、公取に要請|全国商工新聞

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財務省、国税庁、公取委に要請する全商連の牧伸人常任理事(右側中央)ら

 消費税インボイス(適格請求書)制度が実施されて1カ月余り、免税事業者に対する取引停止や値下げ強要などの不当事例が相次いでいます。全国商工団体連合会(全商連)は2日、国会内で財務省、国税庁、公正取引委員会に是正を要請。各地で頻発するトラブルと不当事例の実態を突き付け、インボイス導入で新たな事務負担と税負担を強いられることになった中小業者の営業と暮らしを守る対策を求めました。
 全国の中小業者から「客から消費税分の値引きを強要された」「取引先から一方的に単価を切り下げられた」「経理の事務負担が増え、大変になった」などの声が上がっています。
 国税庁は、10月31日までの1カ月間に、インボイスコールセンター(インボイス制度電話相談センター)への相談件数が7万3千件に達していることを明らかにしました。
 牧伸人常任理事は「免税事業者が値引き圧力にさらされている。一方で登録すると、消費税の税負担を強いられるが、価格転嫁する余地はない。岸田首相は『コストカット型経済からの転換』を掲げるが、さらに強化するものではないか」と批判しました。
 インボイス制度が地方経済の衰退を招き、伝統産業が立ち行かなくなる実態も示しました。
 公正取引委員会は「相談窓口などを設置し対応している」と回答。牧常任理事は、小規模事業者の事務負担軽減など免税点制度が設けられた趣旨を踏まえ、「事後対応ではなく、事前のトラブル防止策、不当事例から免税事業者を守る対策を」と求めました。
 免税事業者が消費者から消費税相当分の値引きを強要されていることについて、財務省は「政府はインボイス導入を『益税対応のため』などと言ったことはなく、反対派が益税に焦点が当たっている状況を作っているように見える」などと責任転嫁しました。
 牧常任理事らは「現場では、免税事業者がつるし上げられている」と抗議。「インボイス制度が導入されなければ、問題は起こらなかった。インボイスは廃止するしかない。景気対策として消費税減税を実施すべきだ」と強く求めました。

「10%値引き強要」も 東京南部の3民商婦人部が交流会

 東京南部の大田、蒲田、玉川の民主商工会(民商)婦人部は10月26日、4年ぶりの交流会を開催。10月に始まった消費税インボイス(適格請求書)制度を巡り、混乱と困惑、トラブルが起きていることが報告されました。交流会には、3民商から7人が参加しました。
 蒲田民商から参加した清水久美さん=飲食=は「母とスナックを経営しているが、多くのお客さんから『インボイスは登録しないの?』と聞かれ、母が心を痛めている」と報告。「先日は、初めて来たお客から『インボイスの登録をしてないなら、10%値引きしろ。登録してなければ、値引きしてもらえると分かっているんだぞ』とすごまれ、毅然とした態度で値引きできないことを伝えたが、傷ついた。登録も考えたが、消費税額が高く、とてもじゃないが、払えない」と話しました。

「増税で旅行も行けない」

 「やむを得ず登録したが、消費税額は概算でも12万~13万円。年に一度、楽しみにしていた旅行にも行けなくなった」(蒲田・機械彫刻)、「もうけがないから、手元に残るお金がない」(大田・賃貸)など、インボイスや物価高に対する思いが語られました。
 「インボイスの学習会に何度も参加しているけど、本当に難しい」との悩みや「インボイスを自分の言葉で分かりやすく説明して、廃止の声を広げたい」との決意も語られました。

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