トラブル相次ぐ インボイスは廃止しかない|全国商工新聞

全国商工新聞

相談・対話・署名広げ 各地の民商

 岸田政権が強行した消費税インボイス(適格請求書)制度を巡り、各地でトラブルや相談が相次いでいます。民主商工会(民商)は相談活動や商店街訪問などを行い、「ガソリン税凍結、消費税減税、インボイス廃止」の新署名を進めています。

会員拡大で反撃しよう 大阪・摂津民商商店や工場700軒訪問

摂津民商が開いてきたインボイス相談会の様子
大商連作成の店舗掲示用ミニポスター

 大阪・摂津民商は、「消費税のインボイス制度を中止に追い込むには、会員拡大で反撃しよう」と話し合い、チラシのポスティングや商店街訪問に取り組んできました。インボイスが導入された10月に入ってからも、宣伝・対話を進め、会内外から相談が寄せられています。

チラシ使い対話

 10月15日の拡大統一行動では、役員・事務局員ら9人が「ストップ・インボイス」のチラシを持ち、商店・町工場を訪問。会外の業者を中心に約700軒を訪問し、50軒と対話しました。
 「民商です。チラシを持ってきました」と声を掛けると、一様に「ありがとう。またチラシ読んどくわ」との言葉が返ってきました。副会長の後藤三男さん=食品卸=は、飲食店と対話した際に、大阪商工団体連合会(大商連)作成の店舗掲示用ミニポスターを紹介。「経過措置の少額特例で、インボイス未登録でも1万円未満の領収書なら、お客さんが経費として全額控除できます」と知らせ、「分からないことがあれば、いつでも民商に連絡してください」と声を掛けました。

一人親方も困惑

 同3日に開いたインボイス相談会には、会外業者2人が参加しました。一人親方の建設業者は、親会社から「登録しといてな」と言われ、意味も分からずインボイスに登録。9月末になってから「インボイスに登録しなくてもいいかもしれない」と指摘され、困惑したと言います。相談会では、自主計算・自主申告に取り組む民商の活動についても説明を受け、「相談できて良かった。入会も検討します」と笑顔で話しました。
 もう1人は、一人親方を2人抱える建設業の親方。その2人にインボイス登録をしてもらうか迷っていました。自分の事業の将来に対する不安もありますが、「インボイス制度は、一生懸命働いてくれている2人に納税を迫るもので、『登録しろ』とも言われへんなあ」と悩みを吐露。「民商に入会して、インボイス制度廃止の運動に参加してください」と訴え、この日の相談を終えました。
 民商では、「インボイス相談は民商へ」と宣伝を続けていこうと話し合っています。

「反対」の意志を貫いて 沖縄民商集団で登録申請

インボイス登録申請書を集団提出する沖縄民商の会員ら
インボイス登録申請書の集団提出前の集会

 沖縄民商は先ごろ、インボイス実施を目前にして、会員118人がインボイス登録申請書を沖縄税務署に集団提出しました。提出したのは、インボイスに反対し、ぎりぎりまで登録しなかったり、取引先からどうしても登録を求められた会員たちです。提出前に民商事務所で集会を開き、山川睦事務局長が「インボイスが実施されても反対の声を弱めることなく廃止の新署名に取り組もう」と呼び掛けました。
 登録申請書を提出した後、税務署に9月11日に提出した請願書への回答に基づいて要請しました。「インボイス廃止を国に求めること」との要請項目に署側が「執行機関なので国に意見する立場にない」と答えたのに対し、「納税相談を受けて、納税者の苦労が分かるはず。税務署が国に意見してくれないと納税者の声はどうなるのか」など怒りの声が上がりました。
 集団提出に参加したUさん=建設=は「『インボイス番号の無い業者は使えない』と言われ、やむなく登録した。番号が無かったら、仕事がなくなり、他を探すか、廃業するかの瀬戸際だ。今の現場を中途半端に抜けたくない。インボイスは廃止してもらう方がいい」と話しました。

業者の悩みの深さ痛感 兵庫・明石民商 商店街で訪問対話

 兵庫・明石民商は10月15日、明石市内のJR大久保駅北側の商店を訪問。役員ら4人が2組に分かれ、新署名を訴え、商工新聞を拡大する街角ウオッチングに取り組みました。
 すし店の店主は「これ以上、どの経費を削ろうかと思っている。新聞も、やめたしなぁ」。「商工新聞は、小さい商売人の新聞です。インボイスのことも載ってますよ」と宣伝紙(インボイスを特集した10月9日号)を渡すと、「インボイスは登録したけど、これ以上の負担は無理!インボイスの取り消し書を出そうかと思っている」と話しました。
 洋品店の女性店主は「取引先から『登録して』と言われたから、登録したけど本当に嫌っ。フリーランスの人たちも『中止せぇ』って頑張ってくれているね」と、署名に応じました。
 美容室の店主は「個人客ばかりやから関係ない」と話していましたが、「スナックのママさんらは、経費に入れている場合があるから『欲しい』と言う人がいるかもしれない」と話すと、宣伝紙を「これ読んでみます」と受け取りました。
 森川裕司会長=二輪修理・販売=は「対話した人の多くは”登録しないといけない空気”に流されて申請したものの、納税などの不安が大きく、悩みは深い。地域で、学習や対話を続ける必要があると痛感した」と話しています。

会内外から相談次々と

「民商が親切」と紹介で 名古屋北部民商 水道検針員4人

 名古屋北部民商では10月6日、名古屋市の水道メーター検針員の女性4人が来所。一人が、民商会員の友人から「インボイスなら、民商が親切に教えてくれるよ」と紹介されてのことでした。
 約100人が同じ会社に雇用され、半数以下が個人請け負いで青色申告とのこと。1年前、スマホによる業務効率化を名目に報酬が4%削減され、インボイス実施を機に、さらに1%切り下げると通告されたそうです。
 4人は「インボイスの内容がよく分からない」と話すので、事務局員がインボイスの仕組みや8割控除などの経過措置を説明。「なぜ4%下げられたのか、内容を明らかにした方がいい」と助言すると、「”便乗値下げ”だったのでは?」との話になりました。
 全員が年収300万円前後で「死活問題だ」と涙ぐむ人も。名古屋市水道労働組合とも相談し、団体交渉を行っています。

きっぱり「登録しない」 佐賀民商建設業の会員

 佐賀民商には会内外から相談が舞い込んでいます。
 免税事業者の設備業者は「今まで税込みで支払われていたが、インボイス実施後は10%分がもらえなくなった」と告発。複数の会員が「インボイスを機に、売り手が負担していた振込手数料を買い手側に求める通知が届くのはなぜ?」「振込手数料の押し付け合いが始まっている」と指摘しました。
 小売業者の会員は、仕入れ先から「10%もらってよかとやろうか」と尋ねられ、「消費税は”預かり金”でなく対価なので請求していいんですよ」と答え、喜ばれました。取引先から登録を求められた建設関連の会員は、「登録はしません。仕事は、やめていいですよ」ときっぱり伝えました。後日、取引先から「税理士に『8割引ける』と聞いたので、登録しなくていいから」と連絡がありました。

経過措置などを説明し中古機械業者が入会へ 群馬・吾妻民商 

吾妻民商では金澤敏会長(右端)を先頭に、インボイス廃止をめざして宣伝などに取り組んでいます

 群馬・吾妻民商では、インボイスのトラブル相談を通じ、入会者が生まれました。
 中古の建設・農業機械を販売するWさんが、草刈機(消費税込み30万円)を販売したところ、購入客が「インボイスの登録はしているか」と質問。「登録していない」と答えると、「それでは、私が消費税3万円を負担することになる」と、2万円の値引きを要求し、Wさんは差し引き28万円を受け取りました。
 釈然としない思いを持ったWさんは、4月に入会した会員に相談し、民商事務所を訪問。金澤敏会長=木工=らが応対し、「仮に相手が課税事業者で本則課税としても、税抜き価格で30万円、消費税が3万円の場合、3年間は『8割控除』の経過措置があるから、相手の負担は3万円×20%=6千円。2万円はまけ過ぎだ」と説明し、今後の対応をアドバイスしました。
 所得税の申告でも、民商は毎年3月に集団申告していることや、税務調査でも仲間が立ち会ったり、経営や金融などの困り事も相談できると説明すると、民商に入会。共済にも加入しました。

購読お申込みはこちらから購読お申込みはこちらから