マイナ保険証 破綻明白 紙の保険証残せ|全国商工新聞

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 他人の口座への誤入金や医療情報の誤ったひも付け、患者負担割合の誤登録に、資格確認ができず10割負担を強いられる…。マイナ保険証を巡るトラブルが収束しません。協会けんぽでは、約40万人分の資格情報が、ひも付けされていないミスも発覚しました。マイナンバー(個人番号)制度への不信と、2024年秋の健康保険証廃止への怒りが広がる中、岸田政権は、なぜ廃止に固執するのか。トラブルの現状とその根源、諸外国との比較や解決策などを考えました。

トラブル多発も責任転嫁 岸田自公政権へ怒りと不安

健康保険証の廃止やめよと訴える民商会員ら

 トラブルの原因を「健保組合のせい」「システム会社のミス」「地方自治体のミス」と言い逃れる岸田文雄政権への怒りと不信が強まっています。

他人へ振り込みも

 埼玉県所沢市は7月14日、後期高齢者医療制度に加入する80代の女性に対する医療・介護関連の給付金約5万7500円を、他人の公金受取口座に振り込んだことを明らかにしました。その女性の情報が他人のマイナンバーと、ひも付けられていたことが原因です。この間、マイナンバーカードを巡っては、コンビニ交付での住民票の誤交付や、他人の医療情報の誤登録、マイナポイントの別人への付与、家族名義の口座への登録などのトラブルが相次いでいます。

医療現場は大混乱

 とりわけマイナ保険証によるオンライン資格確認がが4月から原則義務化された医療現場でのトラブルは深刻です。
 マイナ保険証へ他人の医療情報が、ひも付けされている事態も発覚。命に関わる事故を招きかねません。
 医療機関の窓口でオンラインで資格確認できないエラーも多発しています。その際、保険診療ができず、いったん窓口負担が10割となるケースも。患者が必要な診療を辞退するケースや、「最小限の診察を」「お薬だけ」と泣く泣く求めるケースも生じています。
 大阪保険医協会のアンケート調査(3日公表)では、6月1日以降も、オンライン資格確認・マイナ保険証によるトラブルがあったと回答した医療機関は68.9%(196件中135件)に上りました。内訳は「資格が無効」が最多の82件、医療保険情報の根幹である「負担割合の齟齬」「限度額認定の誤り」も、それぞれ10件報告されています。
 障害を持つ人の中には、マイナ保険証を申請できないケースもあり、国民の誰もが医療を受けられる国民皆保険制度を崩壊させる事態を招いています。

財界が「発注元」

 国民の中に高まるマイナ保険証への不信と健康保険証廃止への不安を前に、岸田文雄首相は4日の記者会見で「廃止時期の見直しありきでない」と、あくまでも2024年秋の健康保険証の廃止に固執しました。
 一方、カード未取得者などの保険証代わりとなる「資格確認書」は申請を必要としない考えを表明。有効期限を「5年以内」で延長可能とする方針を示しました。しかし、こうした方針に、メディアからも「現行の健康保険証と変わらない」「保険証を廃止しなければ済む話だ」との批判が出る始末です。
 岸田政権が、ここまで健康保険証の廃止に固執するのはなぜか。東京新聞は8月15日付「こちら特報部」で、経済同友会の新浪剛史代表幹事が、健康保険証の廃止時期について「納期を守るのは日本の文化」と発言したことを紹介。「マイナンバー財界まるで発注元」と報じました。
 マイナンバーやマイナンバーカードの導入が、大企業の社会保障負担の軽減や、国民の個人情報の利活用をもくろんだ財界発であることが明らかになっています。
 日本経団連は2004年の提言「社会保障制度等の一体的改革に向けて」で「社会保障・福祉制度に共通する個人番号の導入」を提唱。「社会保障制度の適用面・負担面での不公正をなくす」ことを口実に、個人番号を導入するとともに、消費税インボイスの導入を早々と提唱していました。

各地で「健康保険証の廃止撤回を求める」意見書採択

 マイナ保険証を巡るトラブルが多発する中、「健康保険証の廃止撤回を求める」意見書が、岩手県をはじめ、各地で採択されています(図1)。

「現行保険証の存続を」 全商連も参加する反対連絡会 署名呼び掛け

 全国商工団体連合会(全商連)も参加するマイナンバー制度反対連絡会は4日に総会を開き、「現行の健康保険証を残してください」と求める署名(写真)に取り組むことや、各地の自治体が国に意見書を上げる運動を呼び掛けました。署名は「国民も、患者も、医療機関も望んでいないマイナンバーカードとの一本化はただちにやめて、現行の健康保険証を残してください」と訴える内容です。

存続へ運動を強めよう 各地の取り組み

 各地の民主商工会(民商)などは「マイナ保険証」の問題点や狙いなどを学び、紙の健康保険証の存続を求める運動に立ち上がっています。

「残して」署名取り組む 岐阜県婦協

オンライン併用で30人が参加した岐阜県婦協の学習会

 岐阜県連婦人部協議会(県婦協)は7月22日、岐阜南民商でオンライン併用で学習会を開き、約30人が参加。全国保険医団体連合会(保団連)の竹田智雄副会長が保団連の実態調査を示し、「保険証廃止は医療や介護の現場を疲弊させ、医療崩壊を招く」と強調。マイナ保険証に固執する政府の狙いが「国民一人一人に社会保障の負担と給付の“適正化”を図り、安上がりな医療をめざしている」と述べ、現行の保険証存続を求める署名を広げようと訴えました。
 参加者から「保険証廃止に納得できない」「学んだことを周りに知らせよう」「消費税減税とインボイス中止の署名と併せて『現行の保険証を残してください』署名も集めよう」との感想が出されました。

一体化方針は白紙こそ 京都・南民商

京都・南民商のマイナ保険証の学習会

 京都・南民商は7月9日の学習会に15人が参加。京都社会保障推進協議会の髙梨輝子次長が「健康保険証は『命のバトン』保険証廃止を撤回させよう」と題して解説しました。
 マイナポータルの利用規約では「個人のあらゆる情報を、国や行政機関が照会できると同意したとみなされる(4~17条)」と指摘。「個人情報が丸裸にされ、トラブルが発生しても国は一切責任を取らないことに同意させられている(26条)」と強調し、「紙の健康保険証の存続を求めよう」と呼び掛けました。
 参加者は「イギリスなどは個人番号と健康保険証との一体化を廃止させた。日本でも、マイナンバーカードの運用をいったん白紙に戻し、保険証廃止を撤回させよう」と確認しました。

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