福島第1原発の処理水海洋放出 撤回し、納得できる処分方法を|全国商工新聞

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 原子力規制委員会は7日、東京電力福島第1原発の放射性物質トリチウムを含む「アルプス処理水」の海洋放出の設備について、運用開始前の検査において「合格」を示す終了証を交付しました。
 国と東電は、2015年に福島県漁業協同組合連合会(県漁連)と「関係者の理解なしに、いかなる処分も行わない」との約束をしていたのに、21年4月に菅義偉首相(当時)が、2年後の海洋放出を決定。岸田首相は今年1月に、春から夏にかけて海洋放出すると明言しました。国は昨年1月から、「トリチウム水は安全」とのPRチラシを作製して全国の小中学校へ送付し、高校には出前授業を募集。同12月からは新聞折り込みやテレビCMも流すなど、風評被害の払拭に躍起になっています。
 こうした動きに対して、全漁連と県漁連は6月に、「海洋放出には反対であることはいささかも変わるものではない」とする特別決議を上げています。
 今年3月のマスコミによる全国世論調査や県民世論調査、4月の福島県内市町村長へのアンケート調査でも「海洋放出すれば風評被害が起きる」との懸念の声がいずれも90%を超えています。
 岸田政権は、今回の処理水の海洋放出計画について、国際原子力機関(IAEA)が4日に「国際的な安全基準に合致している」と結論付けたとの包括報告書を公表したことをもって、「安全なアルプス処理水の海洋放出」であり、原発を有する国では「どこでも同じようにしている」と、放出ありきの姿勢をより鮮明にしました。
 IAEAは、原子力の平和利用を促進する国際機関ですが、4日の公表の際には「(福島第1原発の)放出は、日本政府が判断することで、報告書は政策を推奨したり、支持したりするものではない」と留保を示しました。
 処理水の処分方法について、大型タンク建設やモルタル固化など海洋放出しない方法や「広域遮水壁」を設けて汚染水の増加を止める提案が専門家から出されています。
 国も、東電も、漁業者らとの約束をほごにするのではなく、漁業者・市民が納得できる処分方法を検討し直すことが求められています。

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