アニメ関連業界は苦境 インボイスで廃業危機 外国特派員協会で会見|全国商工新聞

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記者会見する(左から)西位輝実さん、植田益朗さん、岡本麻弥さん、湖東京至さん

 スクリーンに映し出された30%の数字。「なぜ業界の3割もの人間が廃業の危機にさらされるのか。それは、消費税のインボイス制度が『クールジャパン』の山の裾野を削る税制だからです」。アニメプロデューサーの植田益朗さん(「アニメ業界の未来を考える会」代表世話人)は、国内外のメディアを前に、こう告発しました。
 声優の岡本麻弥さん(「VOICTION」共同代表)、植田さん、アニメーターの西位輝実さん(「アニメ業界の未来を考える会」世話人)、税理士の湖東京至さんが登壇した6月20日の日本外国特派員協会での記者会見です。配られた資料には、インボイスが実施されると、アニメ、声優、漫画、演劇のいずれの業界でも2~3割が廃業を検討している実態が示されていました。
 「機動戦士ガンダム」などの作品に関わってきた植田さんは「世界に誇る文化であり、クールジャパンと呼ばれる輸出コンテンツの目玉であるアニメや漫画をシュリンク(縮小)させる自殺行為」と批判。岡本さんは時折、ハンカチで目尻を拭いながら、「愛すべき日本のポップカルチャーが失われる」と訴えました。
 湖東税理士は、世界では当たり前になっている納税者権利憲章をいまだに制定していない日本の現状を告発。「納税者の権利が守られない下で、なおさら導入すべきではない」と強調しました。
 4人が口をそろえて嘆いたのは、インボイス制度の悪影響が多くの国民に伝わっていない現状と、それを報じないメディアへの苦言でした。
 岡本さんは「課税事業者になるか免税事業者のままでいるか、インボイス制度の怖いところは、どちらのボタンも正解のボタンではない。“どちらを選んでも地獄”です。その選択を迫られている」と述べ、「Please help us. Please support us.(助けてください。支援してください)」と海外メディアに訴えました。
 「個人的なコメントをしたい」。司会を務めた同協会の西村カリン氏(ラジオ・フランス&リベラリオン紙)は会見の最後にこう述べ、「日本政府は、日本のアニメ、漫画、映画をクールジャパンと言ってPRしているのですが、業界の現場の状況を全く知らずに、今、全てのアーティストをいじめている状況です。海外で輝く日本の文化が変わらないよう、業界を支援すべきです」と語りました。

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