『高過ぎる国保』 独自に減免・引き下げ 「都道府県化」に抗い、各地で改善|全国商工新聞

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国保引き下げも訴えた業者婦人決起集会のデモ行進=5日、東京都内

 国民健康保険(国保)制度が2018年4月に「都道府県単位化」されてから5年。市町村が国保料・税の額を独自に決めていた仕組みが大きく変わり、都道府県が国保の財政運営に責任を持ち、市町村ごとの標準保険料率の算定・公表も行うようになりました。その下でも、各地の民主商工会(民商)などが「高過ぎる国保料・税の軽減」を求めて運動し、独自に国保料・税の減免や保険料引き下げに踏み切ったケースを追いました。

名古屋市 均等割一律5%軽減 名古屋北部民商会員 総額30万円減額に

名古屋北部民商の山本さんが営むカラオケ居酒屋

 名古屋市では、「高過ぎる」国保料を抑制するために、被保険者全員の均等割を2023年度から一律5%軽減しています(22年度まで一律3%軽減)。
 大阪、京都、神戸、名古屋、横浜の「5大都市」の中でも高い国保料となっていた名古屋市。「誰でも無理なく払える国保料に」は、市民の切実な願いでした。2010年度から実施された「被保険者全員の均等割3%軽減」は、「名古屋市国保をよくする会」や社会保障推進協議会(社保協)など市民の粘り強い運動と、日本共産党の市議らによる論戦で勝ち取った成果でした。
 同市の国保料の独自軽減制度(図)は、被保険者全員の均等割一律5%軽減(申請不要)に加え、所得135万円以下の障害者・ひとり親の均等割3割軽減や、所得が激減した場合の減免などが設けられています。
 これらは、市の一般会計予算からの繰り入れである「法定外繰り入れ(決算補填目的以外)」を財源にして実施されています。
 名古屋北部民商の山本由起子さん(仮名)=飲食=は22年7月、所得が激減した場合の国保料減免措置を受けました。
 民商の松原裕子事務局長と一緒に、市の北区役所に行き、国保料の減免申請と国民年金の免除申請を行い、国保料が毎月3万円、総額約30万円が減額されることになりました。
 山本さんは「毎月の国保料が8万8千円から5万4300円に下がり、ホッとしました」と喜びつつ、「コロナ禍は落ち着きましたが、お客がまだ戻ってきていないので、国保料の高さは厳しい」と話しています。

臼杵市 基金活用し引き下げ 大分・豊肥民商会員 物価高騰下で「うれしい」

国保税が引き下がってうれしいと話す豊肥民商の村上勇さん

 「職場などの健康保険(社会保険)の倍近い国保税が、年間約1万5千円引き下げに(事業所得400万円で夫婦と子2人の場合)」―。大分県臼杵市は3月議会で、2023年度の国保税を減額する議案を全会一致で採択しました(3月23日)。これにより、7月末から納付または年金から天引きされる国保税が軽減されることになりました。
 市側は「この間、積み上がった国保基金を活用して引き下げた」と説明します。軽減されるのは、全世帯に一律3万6千円(支援分と介護分含む)課税される平等割と、所得に応じて課税される所得割で、平等割は年間2千円、所得割は税率が0.4%軽減されます。
 臼杵市在住の豊肥民商会員、村上勇さん=不動産=は「うれしいですよね。物価とか税金とか高くなる話ばっかりなんで。家族の負担が減るのは良いこと」とニッコリ。
 日本共産党の広田せいじ市議は「同じ所得でも、国保税は社会保険料の倍近い高額になっていることが大問題でした。所得割に加えて、均等割で3万7900円(支援分と介護分含む)に被保険者数を乗じた額が負担される仕組みです。生まれたばかりの赤ちゃんにまで課税される均等割を減免できるよう、引き続き、民商の皆さんと頑張りたい」と話しています。
 民商は、広田市議が子どもの均等割廃止を求める議会質問の資料作成に協力し、被保険者の厳しい生活実態を伝えていました。

国保料「高い」が83% 千葉県連ら 1082人から実態調査

 国民健康保険(国保)料・税を「無理して払っている」人は53.9%、そのうち「生活費を削って」払っている人は61.8%に上る―。千葉県商工団体連合会(県連)も加わる千葉県社会保障推進協議会(県社保協)の調査で、重い国保料・税負担の実態が明らかになりました。
 国保料が「高い」と答えたのは82.8%。後期高齢者医療保険では78%でした。保険料を「無理して支払っている」は国保で53.9%(図1)、後期で46.9%(図3)。そのうち「生活費を削って支払う」が国保で61.8%(図2)、後期で50.6%(図4)となりました。
 暮らしで困っていることは、国保では「食費・光熱費など」が49.5%で、次いで「税金の支払い」39.4%。後期でも「食費・光熱費など」がトップで45.7%。「老後の暮らし」が39.4%、「病気」30.2%と続きました。

 550人以上が「意見・要望・声」を寄せ、「高過ぎる国保料・税を下げてほしい」「少ない年金で生活が大変」「保険料が天引きされて困る」「税金は軍事費に使うのではなく、医療、年金に使ってほしい」などと訴えています。
 調査は2月から、各地の民主商工会(民商)や新日本婦人の会、年金者組合、生活と健康を守る会、農民連と地域の社保協が共同で取り組み、1カ月半で1082人分(国保572人分、後期510人分)を集め、民商も470人分を回収。10日の県社保協第29回総会で結果を報告しました。
 県社保協は「アンケートを冊子にまとめ、8月以降の自治体キャラバンや9月の県交渉で示し、国保や後期高齢者医療を、社会保障にふさわしく改善させよう」と話し合っています。


 >> 都道府県単位化から5年が経過 国保改善をどう進めるか 国保法は市町村が賦課決定

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