【2023年上期営業動向調査】物価高騰が打撃に 売り上げ回復に利益追い付かず|全国商工新聞

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 「物価高騰が長期化し、仕入れ高・経費増で、売り上げの回復に利益が追い付いていない」―。全商連付属・中小商工業研究所はこのほど、2023年上期営業動向調査の結果を公表しました。コロナ禍からの回復を図る中小業者に物価高騰が厳しくのしかかっている実態が明らかになっています。

 23年上期の「売上DI値」は▲38.4、「利益DI値」は▲49.5と、22年下期と比べ、改善しているものの、両DI値の「差」は11.1ポイントに拡大しています(図1)。これは、売り上げの回復に利益が追い付いていないことを意味します。23年上期の「原材料・商品の仕入値DI値」(85.1)が高止まりし、「経営上困っていること」のうち「経費の増大」(34.9%、18選択肢中、複数回答可)が3期連続で過去最高を更新していることが要因です。
 物価高騰の影響が依然として深刻な中でも、「単価・マージンDI値」(1.8)は上昇しており、経営対策として、「販売価格(単価)引き上げ」(40.4%)と「経費節減」(33.0%)が強まっています。しかし、価格転嫁が十分にできず、売り上げの回復に見合った利益を生み出すことが難しくなっています。このことは「ひとこと欄」に寄せられた、「売り上げを伸ばしても仕入れ値の高騰で利益が出ない」(家具・木工・紙製品業)、「総売上額は増えているのに利益は増えていない」(職別工事業)といった声からも明らかです。経営努力を超える物価高騰が続く下で、国と自治体による有効な支援策が求められます。
 また、図2の通り、10月から実施予定の消費税インボイス(適格請求書)制度に関して、「取引先からインボイス発行事業者の登録申請をするよう要請されたことがある」と回答した免税事業者が顕著に増え(4.0%↓20.7%)、取引停止の通告や工賃引き下げを迫られているといった不公正取引の実態も寄せられています。インボイス制度の実施中止が必要です。

業者の切実な声 「ひとこと」欄より

○灯油代、電気代が2倍くらいになり大変(北海道、洗濯・理容・美容・浴場業)
○仕入れ価格の値上りがひどく、見積もりから着工までの間に値上がりすると、どうにもならない(新潟、総合建築業)
○仕入れ値の高騰がつらい。販売価格を上げたいが、客足が心配でできない(群馬、食料品製造業)
○車のオークションを開催する業者から、「早くインボイス番号の取得を」と迫られた。取得しなければ、10月1日以降は一切取引しないとの通告があった(千葉、廃棄物処理・修理・整備業)
○インボイス登録をしないと伝えると、工賃が下がると言われた。廃業が増えて困るのは取引会社も同じはず(京都、繊維工業)

2023年上期営業動向調査

〈調査期間〉2023年2月15日~3月18日
〈有効回答〉650人(調査対象モニター人数:47都道府県1161人、有効回答率56・0%)
〈回収方法〉郵送記入

DI値

 ディフュージョン・インデックスの略語。企業の景況感などを「良い」「悪い」といった定性的な指標で数値化したもの。「良い」と回答した企業割合(%)から「悪い」と回答した企業割合(%)を差し引き、プラスなら改善、マイナスなら悪化等と判断する。景気局面等の判定に用いる。

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