【第54回3・13重税反対全国統一行動】地方選で政治動かそう 納税者権利憲章は急務 中央各界代表者集会|全国商工新聞

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 岸田政権が中小業者の営業と暮らしを押しつぶす大軍拡・大増税に突き進み、自主申告運動に国が介入する「税務相談停止命令制度」(命令制度)の創設が狙われる中で取り組まれた第54回3・13重税反対全国統一行動。13日午前、衆院第1議員会館では「中央各界代表者集会」が開かれました。主催は、全国商工団体連合会(全商連)も参加する「同中央実行委員会」。64人が参加し、オンラインでも配信されました。大軍拡・大増税と命令制度創設をはね返そうと決意を新たにし、終了後、代表者が財務省・国税庁、総務省に要請しました。

「重税に反対し、平和を守るため、今日の行動を大きく成功させよう」と訴える全商連の太田義郎会長

 全商連の太田義郎会長が主催者あいさつ。「憲法が保障する基本的人権は人類の努力の成果であり、侵すことができない国民の永久の権利だ。平和でこそ商売繁盛。重税に反対し、平和を守るため、今日の行動を大きく成功させよう」と訴えました。
 田村貴昭衆院議員(共産)が激励に駆け付け、国会情勢を報告。「41年ぶりの高水準となる物価高騰の中で、岸田政権は景気対策として最も有効な消費税減税に背を向けている。中小業者の営業と暮らしが大変なのに、10月から消費税インボイス制度を強行しようとしている。命令制度は納税者の自主申告権を奪いかねない。国の介入を許さず、消費税減税、インボイスの中止・延期を実現するため共に頑張ろう」と呼び掛けました。
 立命館大学の望月爾教授が「納税者の権利をめぐる世界の動向」について、オンラインで講演。「国際的には、税務行政は納税者の自発的協力に基づいて行われ、『お客さま』である納税者へのサービス提供と位置付けられている。納税者の権利を保護する内容は、税務調査や徴収手続きによる権利、デジタル化に伴うデータ保護、プライバシー権に広がっており、日本でも納税者の権利憲章を制定させることが急務だ」と訴え。命令制度は「規制対象が広範かつ曖昧で、財務大臣や国税庁長官に過大な裁量権を与え、申告納税制度や税務行政の世界の流れにも反する」などと批判。「規制や罰則ではなく、税制や税法への正しい理解、適正な申告を推進する納税者教育にこそ力を入れるべき」と強調しました。
 各団体との意見交換では、全国生活と健康を守る会連合会の西野武事務局長は「軍事費に注ぎ込む43兆円があれば、どれだけの国民が幸せになるか。憲法が生かされる社会をめざしたい」。「インボイスを考えるフリーランスの会」の小泉なつみさんは「インボイスに抗議するオンライン署名は19万人分を超えた。統一地方選ではインボイスに反対する人にしか投票しない。足元から政治を動かそう」と訴えました。
 湖東京至税理士は「10月からインボイスが実施されると、経済がめちゃくちゃになり、滞納も増える。太陽光発電や自動販売機、ピアノ教室など事業者と関係ないところにも影響が出てくる」と指摘。全日本年金者組合の高山由孝さんは「物価高で年金生活者は、3食のところを2食や1食にして食費を切り詰めている」と声を詰まらせ、全国労働組合総連合の原英彦さんは「大手石油元売りに2022年度補正予算で、ガソリン補助金約3兆円が注ぎ込まれたのに、中小業者や畜産農家に、なぜ支援できないのか」と憤慨。東京土建一般労働組合の大木栄一さんは「『増税は嫌だ』という草の根の声と運動を広げよう」と呼び掛けました。

省庁交渉 民主的な税務行政を

【財務省・国税庁】公金受け取り口座 記載は任意を確認

「税務相談停止命令制度」の撤回などを求めた財務省・国税庁交渉

 財務省には、命令制度を創設しないことや納税者権利憲章の制定、インボイス制度の実施中止、消費税5%への引き下げを要望。参加者は「取引先からインボイス発行事業者への登録を強要される事例が増えている」「建築関連では、“物価高倒産”が増えている。最も有効な景気対策は消費税減税だ」「軍事費に43兆円も注ぎ込む一方で社会保障費を削ろうとしている。とんでもない」などと訴えました。
 省側は「社会保障費が増加する中で消費税は必要な財源。引き下げは考えていない」「インボイス制度は、複数税率の下で必要な制度」と聞く耳を持たず、「納税者の利益を保護するための措置は税制上で行っている」と納税者の権利憲章制定にも背を向けました。
 命令制度について「納税者同士が学び合うことを取り締まるものではない。『税務相談』が税理士法に違反するかどうかは個別に判断する」と、この間の回答を繰り返しました。
 国税庁では、申告納税制度と納税者の権利を擁護発展させる立場を堅持し、納税者同士の税金相談に介入しないことや、預金口座とマイナンバーのひも付けにつながる確定申告書の記載の在り方を見直すこと、税務調査における事前通知を徹底して調査理由を開示し、日時変更など納税者の要望に誠実に応えることなどを求めました。
 還付申告などで公金受け取り口座の記載欄が設けられた問題で、参加者は「口座を登録しなければ、税金の還付を受け取れないような印象を与える」と指摘。庁側は「登録はあくまで任意」と回答しましたが、同庁が作る「確定申告の手引き」では「任意」という説明がされていないことから改善を要望。庁側は「要望は関係部署に伝える」と答えました。
 命令制度について、参加者は「脱税や不正還付を広く指南する行為を取り締まることが目的か」と念押ししたのに対し、庁側は「法案成立後に検討することになるが、行われている税務相談が税理士法に違反しているかどうか、個別に判断することになる」と答えました。

【総務省】カード取得有無で差別行政を行うな

「マイナンバーカードの交付率を地方交付税の算定根拠にする仕組みを撤廃すること」などを求めた総務省交渉

 総務省では「地方交付税の算定根拠に、自治体のマイナンバー(個人番号)カードの交付率を反映する仕組みは撤回を」「カード取得の有無で、行政サービスを受ける権利に差が出ないようにすること」などを要望しました。
 省側は「カードの交付率を地方交付税に算定するのは、カードを活用した住民サービス向上の財政需要が増えるからだ。決して交付率を政策誘導しているものではない」と回答。参加者は「実態は、取得しない人への罰則、切り捨てにつながっている」「原因となったのは、交付率によって差をつける国の施策のせいと理解すべきだ」と指摘しました。
 また「地方税を分納している納税者に対し、強権的な徴収はやめ、納税緩和制度を積極的に説明してほしい」との要望に対し、「滞納処分によって生活を著しく窮迫させる恐れがある場合は、執行を停止することができる」「毎年、地方税関係の留意事項を発出し、納税相談の充実などを推進するよう示している」と回答。
 換価の猶予の適用の際に、市税の窓口で「1年後には全額納付を」と無理な計画を迫られた事例を示し、「納税緩和制度のコロナ特例は終わったが、中小業者の売り上げは回復していない。相談者の実情を見て柔軟な対応を」と適切な運用を求めました。

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