「インボイス制度の実施中止・延期」を求める意見書 9月議会で次々と採択|全国商工新聞

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高知県内3町 県内4分の1超す自治体で

土佐町で県内初のインボイス制度の実施中止を求める意見書が採択されて笑顔を見せる南国民商の役員ら

 高知県の土佐、大豊、四万十の各町議会は、9月議会で「インボイス制度の実施中止・延期」を求める意見書を採択しました。これで県内35自治体のうち、4分の1を超す9自治体が意見書を採択。力になったのは、町議(共産)が集まった学習会や、DVD「教えて湖東先生!消費税の複数税率・インボイスってな~に?」(全商連作成)の視聴です。県商工団体連合会(県連)は、共産党を中心に県内の議員や予定候補者を合わせて60人ほどにDVDを送付。土佐町議会では全9議員が視聴しました。

土佐町 全商連DVD視聴

 土佐町議会は9月13日、インボイス制度の「実施中止」を求める意見書を全会一致で採択しました。「実施中止」を求める意見書採択は県内で初。南国民主商工会(民商)が陳情書を提出したものです。
 四国のほぼ真ん中に位置する、土佐町を含む嶺北エリアでは5月10日、日本共産党の議員が集まり、インボイス制度の学習会を開催。県連の入江博孝事務局長が講師を務め、制度の内容や問題点、中小業者に与える影響などを説明し、「実施延期・中止を求める自治体での意見書採択を広げよう」と呼び掛けました。
 南国民商は理事会などでインボイス制度の問題点を話し合い、9月議会に向けて土佐町、本山町、大川村に「実施延期」を求める陳情書を提出しました。
 土佐町議会では、和田賢二議員(共産)の提案で、全9議員が集まり、DVDを視聴。「実施されたら、小さな事業所や農家はやっていけなくなる」「地域経済に及ぼす影響も大きい」などの意見が出され、全員が提案に賛成しました。
 保守系の和田義嗣議員(無所属、農業)が提出者になり、鈴木大裕議員(無所属、教育研究者)が賛同者となって、「延期」の意見書を提出しました。しかし、採決前の昼食時に鈴木議員が「延期だと、実施が前提になる。インボイスは中止にすべき制度だ」と提案。提出者の同意も得て「実施中止」を求める意見書に差し替えて提出。本会議で、全会一致で採択されました。

大豊町 対話で理解広げて

 同じ地域の大豊町議会でも9月16日、「実施延期・中止」を求める意見書が採択されました。「消費税をなくす会」に所属する前野由和議員(共産)が呼び掛けたものです。
 大豊町では、大手旅行会社を通じて60軒近い農家が「教育民泊」を受け入れています。最近、町の担当者から「インボイス発行の登録事業者になってほしい」旨の話があり、農家は困っていました。
 また、西豊永地区の農家は、「不老長寿の豆」として知られる特産の「銀不老豆」を生産し、お菓子の原料として高知市内の旅館などに納入しており、「旅館からもインボイスを言ってくるのではないか」と不安の声が上がっていました。
 しかし、町議会の中ではインボイス制度の内容が理解されず、前野議員は3月議会、6月議会でインボイス制度の問題を取り上げ、町の対応を質問してきました。議員の中には、民泊や銀不老豆の生産に携わっている人もいます。インボイス制度が、地域の事業者や経済に弊害を与えることが具体的になる中で、少しずつ理解が深まりました。
 前野議員は全議員と対話を重ね、自民党の議員が提案者になり、5人の議員が賛同者に署名しました。賛成討論で、具体的な事例を示し、1人の反対がありましたが、7人が賛成し、意見書が採択されました。

四万十町 全会一致で採択に

 四万十町議会は9月22日、「個人事業主などの負担が増え(現状で)対応できる状況にない」などとして、全会一致で意見書が採択されました(議会の内訳は共産2、公明1、無所属13)。

県連 さらに広げたい

 県連の東谷勝喜会長=木工機械工具販売=は「インボイス制度が実施されると、中小業者だけでなく農林水産業の従事者、フリーランスなども打撃を受け、地域経済にも深刻な影響を与える。さらに、意見書採択を広げたい」と話しています。

山形県庄内町 「実施中止」で採択実現 鶴岡民商 担当全1市2町で

庄内町議会を傍聴した(左から)酒田民商の渡部均常任理事、鶴岡民商の山田美加事務局長、農民連の梶昇司事務局長

 「やった!これで担当する1市2町全てで意見書が採択された」―。山形県庄内町議会は9月20日、「消費税インボイス制度の実施中止を求める意見書」を賛成多数で採択しました。本会議を傍聴していた酒田民主商工会(民商)の渡部均常任理事=冷凍機設備製造=と鶴岡民商の山田美加事務局長、農民連の梶昇司事務局長は、ガッツポーズをして喜び合いました。
 鶴岡民商も加わる「消費税廃止田川地区各界連絡会」(各界連)と、同町の一部を担当する酒田民商が共同で請願書を提出していました。鶴岡民商が担当する庄内エリアでは鶴岡市と三川町に続く採択で、「実施中止」を求めた意見書採択は、庄内エリア初です。
 9月15日の総務文教厚生常任委員会には、菅原健一会長と余目支部の長谷部隆一理事、山田事務局長、農民連の梶事務局長、酒田民商の渡部常任理事が出席し、菅原会長と渡部常任理事が請願趣旨を説明。菅原会長は「コロナ禍で懸命に商売を立て直しをしている時に物価高が加わって中小業者は苦しんでいる。インボイス制度によって2480億円が新たに増税になるのは、再起を図る中小業者にとって重い足かせになる。中小業者や商店街の実態に心を寄せ、意見書を採択してほしい」と訴えました。
 質疑では「課税事業者の負担はどう変わるのか?」「免税事業者が選択を迫られるとはどういうことか?」「消費税の仕入税額控除とは何か?」などの質問が出され、紹介議員の小野一晴町議(無所属)が丁寧に答えました。
 さらに「国で決まっていることなのに、意見書を採択して効果があるのか」と疑問の声が上がりましたが、小野町議は「請願権は、憲法で保障している国民の権利だ。一つ一つの積み重ねが大切で、意見書採択が広がれば、大きな力になる」と話し、委員会では全員賛成で採択。本会議では1人が反対しましたが、12人が賛成しました。
 菅原会長は「インボイスを知らせるために、学習会や署名行動を強めていきたい」と話しています。

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