全国商工新聞

すいどうばしはかせ 本名=小野正芳(おの・まさよし)。
1962年8月18日生まれ、岡山県出身。1987年に玉袋筋太郎氏と漫才コンビ「浅草キッド」を結成。テレビ朝日「ザ・テレビ演芸」で10週勝ち抜き、テレビ東京「浅草橋ヤング洋品店」で人気を集めます。現在は、ライブイベントやネット番組で活動し、「博士の異常な対談」や阿佐ヶ谷ロフトAで開く「アサヤン(阿佐ヶ谷ヤング洋品店)」などをユーチューブで配信。『藝人春秋』『はかせのはなし』『本業』など著書多数。

 「インボイス制度は中止・廃止に」の声が大きく広がっています。影響を受ける収入や売り上げが1千万円以下のフリーランスや個人事業主の数は1千万人ともいわれ、多くの芸人も含まれます。「『ONボイス』で、インボイス反対の声を上げよう」と訴えるのは、お笑いタレントの水道橋博士。消費税にも「NO」を突き付けています。連日、早朝から発信するブログ「博士の悪童日記」に「戦争反対!維新反対!インボイス反対!」と記し、弱者を切り捨てる政治に抗議しています。

芸人シンポ開催

3月13日に東京・高円寺のカフェで開いた「インボイスを考える芸人シンポジウム」

 3月13日、東京・高円寺のカフェで「インボイスを考える芸人シンポジウム」が開かれました。その2日前、ライターの小泉なつみさんから「インボイス制度について話し合いをしてもらえませんか」とのメールが届き、急きょ開催を決定。「制度について全く無知だった」博士は、猛勉強しました。
 「インボイスも三杯酢も区別がついていない」と、博士のボケで始まったシンポジウム。出席者は、小泉なつみさん、湖東京至、佐々木淳一の両税理士と若手芸人のエル上田さん、ドルフィンソング・三木さん、阿佐ヶ谷ロフト山崎さん。博士が司会を務め、湖東税理士がインボイス制度の問題点を熱く語りました。
 「インボイス制度は貧しい人たちが虐げられる制度」「免税事業者のままでいれば、発注者が仕入税額控除ができないので、ギャラから消費税分を値引きされる恐れがある」…。出席者はインボイス制度が直接、降りかかってくる問題だと実感しました。
 「湖東税理士の話を聞いて、反対するのは当然だと思いましたね。芸人は1千万円を稼ぐような人は一握りで、9割は1千万円以下じゃないかな。僕は地上波のレギュラーがゼロになり、収入は半分以下になったけど、それでも1千万円以下になったことはない。だけど、免税の人たちに思いをはせないことはあり得ない。何の保障も得ず、政治によって切り捨てられようとしていることに抗議したい」

せざるは勇なき

 「義を見てせざるは勇なきなり」―。博士が心に刻んでいる言葉です。目の前に困っている人を見かけたら手を差し伸べることができる人こそ勇気を持った人。インボイス制度でも実践しています。
 芸人仲間は、インボイス発行事業者に登録するか、免税事業者のままでいるかの選択が迫られます。ところが、制度の内容はほとんど知られていません。
 「税金のことは何も分からず、一度も申告をしたこともない若手芸人もいる。僕も26歳ぐらいまでは、そうでしたね。申告しなければという意識さえなかった。ただ、僕は実家が商売をやっていたから、税理士を紹介され、申告の仕方を教えてもらった。インボイス制度は問題点が浸透しづらいように作られている」
 消費税にも異議を唱えます。
 「消費税を導入したから日本経済の“中折れ”が始まった。先進国の中で成長していないのは日本だけ。政策を間違えたから、国民の富が失われた。消費税は社会保障に使われていない」と批判します。
 「大企業がもうかれば、国民に滴り落ちる『トリクルダウン』は全く起きてねえじゃん。よく言うよっていう気持ちですよ。この30年間、日本は経済がほとんど成長せず、先進国と比べても最低クラス。だったら責任を取るのは当たり前で、政策を転換すべき。持たざる者のために政治があるわけだから、そこに対しての政治不在は許せない」

子どもに胸張り

 政治に厳しい目を向けるようになったのは、「アサ秘ジャーナル」(TBS制作・2001年スタート)というバラエティー番組に出演したことがきっけでした。2年間で与野党の政治家延べ200人ほどにインタビューし、それまで選挙にもほとんど行かなかった博士は、政治や社会のことを深く考えるように。
 しかし、芸能界では政治的な発言はタブーとされています。それでも博士は自らの考えをSNSで発信し、理不尽なことに声を上げました。
 「在日コリアンを差別した『DHC』の吉田嘉明会長の発言を真っ向から批判したのは僕だけですよ。テレビのめちゃめちゃ大きなスポンサー。10年以上務めたレギュラー番組を突然、降ろされましたね」
 悔しさをにじませる博士は現在、松井一郎・大阪市長(維新)から訴えられています。
 「2本しかないラジオ番組の1本から休んでくださいって言われましたよ。『そうなるから黙ってください』と言われても『いや黙らないので。僕はやめられません』って、ラジオ局にも言いますね。後ろめたい人生を送りたくないからね。3人の子どもたちに胸を張った生き方を示したい。今は、僕の行動が理解できないかもしれないけれど、いつか父親の生き方を理解できる時が来る」。毅然とした態度を貫いています。

「ONボイス」で

 これから日本社会はどんな未来を築くべきか―。
 「売れない芸人は自己責任って言う人がいる。だけど僕は『努力しようにもできない人はいるんだよ』と言いたい。社会的な要因で、泥沼から抜け出せない人たちがいる。だから、もっと弱者に優しい社会になってほしいし、できると思っている。そういう信念を持ってやっているんですよ。左翼芸人っていわれるけど、そこは揺るがない。一緒にライブをやった沖縄の喜納昌吉さんの言葉だけど、『右翼でもない、左翼でもない、みんな中翼(仲良く)』」。そう話す博士は、交差させた手を胸に当て、にっこりと笑いました。
 「世界の歴史が民主的な方向に変わっていった一番の要因はデモ。民衆がスクラムを組んで声を上げた。インボイス制度も『反対』と『ONボイス』で声を上げなきゃ、止められない。参院選で『消費税ゼロに』という政策は絵空事と思ってない。諦めずに、みんなで声を上げよう」。大きく胸を張って呼び掛けました。

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