新型コロナ 対象なのに持続化給付金が受けられない ―― 「年越せない一刻も早く」「営業実態踏まえ給付を」全商連が経産省、中企庁に改善迫る|全国商工新聞

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「コロナ収束まで給付金を継続すべきだ」と強調する全商連の橋沢政實副会長

 営業実態があるにもかかわらず「事業開始から1カ月以内に開業届の提出がない」「人格なき社団だから」など、しゃくし定規な運用で持続化給付金が受けられない事態の改善を求め、全国商工団体連合会(全商連)は9日、経済産業省・中小企業庁と交渉。全商連からは橋沢政實副会長はじめ静岡、大阪、兵庫など8都府県から22人が参加しました。形式的な審査から脱し、実態を見る審査への転換を求めるととともに、「対象者に一刻も早く届けきること」「第3次補正予算ではGoToではなく、持続化給付金の継続など直接支援を」と要請しました。

「開業届がない」と形式的に拒否され

 富山県で石材業を営む事業主は、4月1日に父から事業を継承。売り上げが前年比50%以上減少したので、7月上旬から持続化給付金の申請をしていますが、支給されるに至っていません。「代表者名義が変わっただけ。名義の書き換えを受理した商工会議所の書類(4月27日付)なども添付し、継承事実を明らかにしてきたが、『開業届がない』の一点張りで認めないのは、おかしい」と訴え。「コロナ禍でもあるし急ぐ必要はないと言われたから、税務署には6月23日に開業届を提出した。税務署が営業実態を認めているのになぜ、給付が認められないのか」と憤ります。
 開業届は、個人事業の開業を税務署に知らせるもの。事業を開始してから1カ月以内に提出することが推奨されていますが、出さなくても罰則等はありません。また、営業許可が開業の条件でない職種も多く、税務署は柔軟な対応をしています。
 昨年12月1日に兵庫県内で理美容を開業したケースでは、店の方針転換で、従業員から店の椅子を借りて営業する個人事業主・フリーランス扱いになり“独立”。「店とは契約書を交わしていないし、開業届に代わる公的機関の証明を出せと言っても、何を出せばいいのか」と訴えます。
 中小企業庁の担当者は、「星の数ほどある事業所を個別に回ることはできない。個々の事情を見ていけば(営業実態があるという)確からしさが積み上がっていくことは理解できるし、気持ちとしては同じ立場」と述べながらも、あくまで公的機関の証明(開業届等)に固執する方針を変えませんでした。また、「人格なき社団」問題でも、「壁があり、乗り越えることが難しい。役所の都合に帰因するところと痛感している」と弁明しながらもと態度を変えませんでした。

給付金の継続など業者支援拡充求め

 橋沢副会長は、8日に発表された政府の追加経済対策に「Go To」事業の延長などが盛り込まれる一方、持続化給付金の継続といった中小業者支援がないことを問題視。「国の中小企業憲章は、中小企業を支えるために政府が総力を挙げると明記している。コロナ収束まで給付金を継続すべきだ」と強調し、改善を強く求めました。
 京都府商工団体連合会の久保田憲一会長は、福川町商店街振興組合、京都三条会商店街振興組合など37団体から集めた「新型コロナウイルス対策の抜本的強化を求める緊急要請」への賛同名簿を提出。「年を越せないという業者の声を受け止めて」と要望しました。
 同席した日本共産党の笠井亮衆院議員は「一つ一つの実態を見て、中小企業庁が責任をもって判断するべきだ」と述べ、同党の岩渕友参院議員は「事業が継続できない業者を生まないよう全力を挙げてほしい」と述べました。

解説

大企業支援を優先 逆さまの追加経済対策

 菅義偉内閣は8日、新型コロナウイルス感染の急拡大を受けて追加経済対策を決定しました。「医療崩壊が始まった」「このままでは年を越せない」という厳しい実態が広がる中、医療や暮らし、営業の危機に対応する支援になっていません。
 全国商工団体連合会(全商連)の集約では、持続化給付金の申請に対する給付認定率は89.4%、家賃支援給付金は64.9%です(12月14日時点)。
 「営業実態」を見ないしゃくし定規な書面審査で、持続化給付金事務局から5万6千通もの「不備解消依頼書」が申請者に送付されており、本来、給付金が届けられるべき業者に支援の手が届いていません。それどころか、感染拡大の広がりで「忘年会も新年会も消えた」「休業要請に応えたいが補償がなければ続けていけない」などの悲鳴が上がる状況下で、持続化給付金、家賃支援給付金は打ち切る方向です。
 その一方で感染拡大の要因になっていると指摘され、政府分科会の尾身茂会長が「一時停止するのが望ましい」とする「Go To トラベル」は延長を決めています。
 追加経済対策の中身も「ポストコロナ」の経済対策が中心です。「やることが逆さま」と言わざるを得ません。

感染対策費1割以下

 追加経済対策の事業規模は73.6兆円、財政支出40兆円です。
 足元で感染拡大が進む中でも、事業規模の7割を占めるのは「ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現」(18.4兆円)で、国土強靭化にも5.9兆円を計上する一方、コロナ感染防止対策は6兆円にすぎません。
 売り上げと収入が激減する中、営業継続の瀬戸際にある中小企業や個人事業主が求める追加支援には背を向け、「淘汰を目的とするものではない」と、わざわざ言いながら新事業の展開や業態転換への補助金創設をはじめ、「生産性の向上」「事業再構築」などを進める中堅企業への設備投資を支援しようとしています。
 休業手当の一部を助成する雇用調整助成金の特例措置は来年3月以降、段階的に縮減されます。
 「ポストコロナ」として特に重点を置くのが、「デジタル改革」と「脱炭素」です。次世代通信規格「5G」以後の技術開発促進をはじめ、大企業への支援策がずらりと並んでいます。
 個人情報保護の点でリスクが指摘されるマイナンバーカードの普及も「一気呵成に進める」としています。マイナンバーカードと健康保険証の一体化も明記しました。住民の個人情報を集積、管理する「スーパーシティ構想」や国土強靭化を口実に大型公共事業も推進します。
 コロナ対策とおよそ無関係な、大企業が求める政策や自らの看板政策をコロナ禍の混乱にまぎれて姑息にも盛り込んだと言わざるを得ません。
 第2次補正に続く、10兆円の予備費計上も、政府の独断とお手盛りを生み、財政民主主義に反します。

全商連が新署名提起

 全商連は10日、三役会を開き、「中小業者の新型コロナ危機打開を!」緊急署名に取り組み、2021年度予算案と20年度第3次補正予算案を「暮らしと営業を守る予算へ」根本的に転換することを求めて運動を強めることを呼び掛けました。

新署名はこちら

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