「学問の自由」も法律も侵す暴挙 菅政権が学術会議の会員任命拒否|全国商工新聞

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 日本学術会議が推薦した新会員のうち、6人の任命を拒否したことについて菅義偉首相は5日、内閣記者会で説明しました。しかし、その具体的な理由は明らかにしていません。
 菅首相は日本学術会議について「省庁再編の際、その必要性を含めてその在り方について相当の議論が行われ、総合的、俯瞰的活動を確保する観点から、今回の人事も判断した」と、自身の関与を認めました。
 また、学術会議は「政府の機関であり、年間約10億円の予算で活動している。任命される会員は、公務員の立場だ」と述べました。拒否された6人が、安倍政権が強行した安保法制や共謀罪、辺野古新基地建設などに反対を表明してきたこととの関連を聞かれ、「学問の自由とは関係ない」と強弁しました。
 しかし、同会議の法学委員会が推薦した科学者3人が任命を拒否されたため、憲法学を担当する会員が不在となり、業務遂行に支障が出る事態です。
 学術会議が推薦した105人のうち、なぜ、6氏だけを任命しなかったのか、菅首相にはその根拠を国民に説明する責任があります。
 日本学術会議は「わが国の科学者の内外に対する代表機関」(日本学術会議法2条)であり、「独立して職務を行う」と規定されています(同3条)。戦前の天皇制政府によって科学者の自由な学問が弾圧され、戦争に加担させられたことへの深い反省によるものです。
 そもそも、「会員は同会議の推薦に基づき、総理大臣が任命する」とした学術会議法7条2項の解釈について政府は、1983年11月24日の参院文教委員会で、「推薦していただいた者は拒否はしない。形だけの任命をしていく」と答えていました。
 憲法6条1項の「天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する」の「基いて」と同義であると指摘されています。その考えを変更したのなら、いつ、だれが、どういう手続きで行ったのか、明確にすべきです。
 憲法や法律の解釈を国民に隠れて勝手に変更することは許されません。変えるべきは、歴史の教訓を顧みず、強権で学問の自由を脅かす菅政権の方です。

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