政府が「敵基地攻撃能力」検討 軍拡ではなく憲法生かす外交を|全国商工新聞

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 政府と自民党は、山口、秋田両県の陸上配備型ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画断念を受け、「敵基地攻撃能力」の保有に踏み切るかどうかの検討を開始しました。
 安倍首相は6月18日の記者会見で、「わが国の防衛に空白を生むことはあってはならない」と必要性に言及しました。国家安全保障会議(NSC)で議論し、9月にも方向性を出すとしています。
 「敵基地攻撃能力」とは、北朝鮮・中国などを仮想敵として、日本に向けてミサイルが発射される前に、弾道ミサイル発射基地やミサイルを攻撃すること。国際法上も認められない「先制攻撃」と紙一重の行為であり、相手国の攻撃態勢の見極めが難しく、ひとたび戦争状態になれば、非難と報復合戦は止められなくなると、多くの識者が危険性を指摘しています。自民党の中からも「(国是としてきた)専守防衛を変える論理の飛躍がある。持つべきではない」(岩屋毅・前防衛相)など批判の声が上がっています。
 政府はすでに、敵基地攻撃を可能にする巡行ミサイルやF35ステルス戦闘機の取得、「いずも」型護衛艦の空母化などをなし崩し的に進めてきました。今後本格的な敵基地攻撃能力の保有に乗り出せば、中・長距離ミサイル、空母、爆撃機、情報収集などの防衛装備・体制が必要となり、軍事費の膨張には際限がありません。
 そのことは、限られた国家予算の中で、緊急に必要な新型コロナウイルスや災害対策など、国民の命・暮らしに必要な予算が削られることを意味します。
 敵基地攻撃能力保有の最大の狙いは、戦争法(安保法制)の成立(2015年)を踏まえ、この機に乗じて日米同盟を強化し、軍拡を推し進めることにあります。政府はそれによって「抑止力」が強化されると言いますが、実際には周辺国との緊張を高め、アメリカが起こす戦争に巻き込まれる危険性につながります。
 日本国民を守るために日本政府がやるべきなのは、軍備増強ではなく、日米同盟一辺倒の外交を改め、平和憲法の精神を生かして戦争を起こさない外交を積極的に展開することです。

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