確定申告のワンポイントアドバイス(11)不動産を売った場合の確定申告|全国商工新聞

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 土地等(借地権を含む)・建物を売却し所得(売却益)が生じたときは、譲渡所得(分離課税)として、事業所得などの他の所得と分離して税額を計算します。
 所得に対する税率は譲渡した年の1月1日現在の所有期間で異なり、5年超は15・315%(長期譲渡)、5年以下は30.63%(短期譲渡)で計算します(住民税は5%、9%)。
 なお、譲渡損が生じたときは、他の分離課税の譲渡所得における譲渡益から控除することはできますが、他の所得との損益通算はできません(宝石、書画、骨とう、機械器具、ゴルフ会員権、特許権などの売却は、総合課税の譲渡所得となりますが、その計算は省略します)。
 譲渡所得は、「収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額」により計算しますが、うち、イ.取得費の計算方法、ロ.特例の活用の二つを紹介します。

イ.取得費の計算方法

 土地等の取得費は造成費などがない場合は購入価額(不動産業者の仲介手数料などを含みます)で、建物の取得費は購入(建築)価額から経過年数に応じた減価償却費または減価の額(非業務用資産の場合の減価償却費相当額)を控除した金額となります。
 購入時の契約書に建物と土地の価額が別々に記載されていれば、それが取得費の計算の基礎となり、別々に記載がない場合でも消費税額の記載があれば、購入当時の消費税率で割り戻すことで建物の購入価額の計算ができます。
 購入価額が分からない場合は、売却価額の5%を取得費(概算取得費)にすることができますが、取得時の時価相場を調べることで取得費とすることも可能です。取得時の時価の調査は一般社団法人日本不動産研究所が発行している「市街地価格指数」を参考にすると良いでしょう。
 建物については、国税庁が公表している、建物の購入当時のおおよその金額が分かる「建物の標準的な建築価額表」などを参考にしてください。

ロ.特例の活用

 譲渡所得の計算において、要件を満たした場合には表の特例を活用できます。マイホームを譲渡した場合の3000万円の控除の特例はその代表例です。
 譲渡所得は取得費の算定や特例の要件などを細かくチェックして申告しましょう。
(税理士・佐々木淳一)

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