食品表示法2020年4月完全施工に
「表示は任意にすべき」

全国商工新聞 第3387号2019年11月25日付

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落花生を油で揚げる浅井さん

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「浅井総合食品加工」の商品が並ぶ地元の委託販売所。数々の地産の商品が並ぶ

 2020年4月から、食品表示法の完全施行により加工食品に栄養成分表示が義務付けられ、加工食品を製造、加工、輸入、販売する中小業者に大きな影響をもたらします。「表示は義務ではなく任意にすべき」と話す「浅井総合食品加工」代表・浅井憲久さん(宮崎県商工団体連合会会長・全国商工団体連合会常任理事)に聞きました。

浅井憲久さんに聞く

 食品表示法に基づき、栄養成分表示が義務付けられることは事業者に周知されていません。
 私は食品衛生指導員で、食品安全に関して指導する立場にあるのですが、知ったのはこの夏でした。私自身も事業者として、約40品目の郷土料理、お菓子、漬物などを作り、生産者販売所や地元スーパー等に卸して販売しています。食品加工事業者として、この栄養表示義務化の問題について私が考える問題点は大きく以下の3点です。
 第一は、栄養表示は専門機関に分析に出すと1件2万円(税込み2万2千円)にもなることです。私のところでも全品出せば80万円を超えます。
 表示シールを貼るためラベルプリンターを買うと40~50万円はします。数百に上る商品にラベルを貼るのは手間のかかる作業です。自分でパソコンの簡易ソフトを使い計算したり、電卓をたたいて成分表を作成することもできますが、正確な値ではなく、いずれにしても手間がかかります。
 第二は、そもそも成分表示にどれだけの意味があるのかということです。
 法律は、目的に「食品…の安全性」および「(消費者の)自主的かつ合理的な食品の選択の機会の確保」のためとあります。表示の免除規定(容器包装の表示可能面積が30平方センチ以下の商品など)があることからも前者の「安全性」に目的があるとは考えられません。後者の「選択の機会の確保」にあることは明らかです。
 分析に出せば別ですが、「推計」表示では、正しい値の表示にはなりません。何万点もの商品を製造する大企業ならできますが、中小企業にそのようなことは困難です。
 しかも、原材料・原産地表示やアレルギー表示などを見る人はいるでしょうが、栄養成分表示を商品選択の基準にする消費者がどれだけいるでしょうか。たとえ、「いる」としても、食品の差別化を図り、付加価値をつける表示と考えるべきではないでしょうか。そうであれば、義務付けをする必要はありませんし、すべきではありません。

取引停止の恐れ

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 第三は、栄養成分表示をできないような小規模業者が取引から締め出されることです。
 消費税免税業者には表示の義務はありません。免除を受ける事業者であっても、自分の店で直販する場合以外、例えばスーパー等で販売する場合は、義務が発生します。「販売者」であるスーパーが表示することもできるのですが、製造業者や加工業者に代わって栄養成分の計算などはしてくれません。「表示がなければ出してもらっては困る」と取引停止を迫ることが考えられます。
 地域の特産品を使い、地場で製造加工している業者の販売先は、道の駅や委託販売所、地場スーパーなどです。地域資源を商品化している業者が販売先をなくすことになれば、地域経済循環が阻害されてしまいます。
 問題の多い「栄養成分表示」は「義務ではなく任意制度に改めること」を柱とする同法の見直しの検討を求めるとともに、消費者庁に運用改善(右記)を求めていきたいと考えます。

5成分表示等義務付け

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農民連食品分析センター」で分析作業を見守る八田純人さん(右)

 食品表示法は、消費者が食品の安全性等を合理的に選択できるようにするために、それまであった「食品衛生法」「JAS法」「健康増進法」の三つの法律を一元化した法律で、2015年4月に施行されました。
 同法表示の猶予期間は間もなく終了し、20年4月からは完全施行となります。
 大きな変更点は、(1)一般用の加工食品および一般用の添加物の栄養成分表示の義務化(2)アレルギー表示の変更(3)「機能性表示食品」制度の新設(4)全ての加工食品(輸入品を除く)に原料原産地の表示-が義務付けられたことです。

小規模業者免除も

 食品関連業者が特に注意を要するのは、(1)の「栄養成分表示の義務化」です。
食品表示基準では、一般用加工食品に栄養成分表示が義務付けられました。必ず「熱量」「タンパク質」「脂質」「炭水化物」「ナトリウム(食塩相当量に換算したもの)」の5成分を表示します。表示方法にも、決まりがあります。食品は単位(100ミリリットル、1食分、1包装、その他の1単位のいずれか)を明示し、熱量から順番に記載しなければなりません。
 表示する値は、分析を行う機関に出すか、自ら計算するかのいずれかよって得ます。
 日本食品分析センターなど分析を請け負う機関があり、2万円程度で表示表を作成してくれます。また、『日本食品標準成分表2015年版(七訂)』が公表されており、多少手間はかかりますが、その値を元に電卓をたたき、計算することも可能です(下の図)。

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 推定値を出した根拠資料(レシピ、データ、含有量など)は保管しておかなければなりません。
 この表示義務は、消費税法第9条に規定する小規模事業者(課税売上が1000万円以下の事業者)、そして中小企業基本法に規定する小規模企業者(従業員20人以下、商業またはサービスは5人以下)の小規模の事業者には、栄養成分の表示が免除される場合もあります。
 消費者庁が「食品表示法に基づく栄養成分表示のためのガイドライン」を公表していますので、ウエブサイト等で確認するか、消費者庁食品表示企画課(TEL03・3507・8800、大代表)、最寄りの保健所に問い合わせてください。

農民連で分析可能

 民商・全商連と協力・共同している農民運動全国連合会(農民連)には「農民連食品分析センター」があり、残留農薬や遺伝子組み換え食品の検査などを行っています。同センターでは、栄養成分表示の分析も行うことが可能。八田純人同所長は「2~3週間で結果を出したい。全商連からのカンパも得てつくられた機関なので、どんどん利用してほしい。民商・全商連からの依頼には、3千~5千円で対応できるよう相談している」と話します。

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