参議院で審議中の「重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律」案(ネット監視・サイバー先制攻撃法案)は、憲法に反する悪法です。危険性を糊塗する小手先の修正ではなく、きっぱり廃案にすべきです。
法案の目的について政府は、インターネット上のサイバー攻撃から国や企業などを守るためと説明しています。しかし、同法案は政府による国民の通信情報の監視やサイバー先制攻撃を認めるなど、見逃すことのできない問題点を含んでいます。
自治体をはじめ、電気・ガス・水道・鉄道・航空・金融といった社会基盤にかかわる多くの事業者がやり取りする個人情報を含むインターネット上の情報を、送受信者の同意なしに幅広く収集できる仕組みも組み込まれています。憲法21条が保障する通信の秘密を侵害し、国民監視の強化につながります。
しかも、収集した情報を他国など第三者に提供することや、サイバー攻撃による被害防止の目的外利用にも道を開きます。警察や自衛隊による個人情報の収集・活用に悪用されかねません。
このほかにも、警察と自衛隊が国外にあるサーバーを「無害化」することも可能になるなど重大な問題があります。無害化措置により、国外にあるサーバーのプログラムを削除・停止させれば、相手国の主権を侵害し、インフラ機能などに重大なダメージを与えることになります。サイバー上であれ、他国への先制攻撃は憲法9条が禁止する「武力行使」に当たる危険性が指摘されています。サイバー攻撃の応酬が過熱すれば、相手国の武力行使を誘発しかねません。
そもそもサイバー攻撃は、コンピューターに侵入して機能を停止させたりする犯罪行為です。すでに制定されている不正アクセス防止法や刑法によって対応すべきものであり、政府が公権力を使って「犯罪行為」を行うことは許されません。国境を越えるサイバー攻撃には、国際的な合意形成を通じた外交的解決をめざすべきです。
憲法を踏みにじり、戦争国家づくりを補強する悪法に断固反対し、廃案にするよう強く求めます。