震度5強で2度、被災した岩手県の映画館 県の補助金2千万円で再建|全国商工新聞

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「地域の映画文化守れた」民商の仲間に励まされ

グループ補助金を獲得した松本さん(前列中央)と菊地七郎会長(その右)ら一関民商の役員
天井や内壁が崩れた一関シネプラザの館内

 岩手県のグループ補助金「県中小企業等復旧・復興支援補助事業(なりわい再建支援事業)」の2千万円を獲得し、地域で唯一の映画館を守ることができた―。岩手・一関民主商工会(民商)の松本健樹さんが営む映画館「一関シネプラザ」は先ごろ、県のグループ補助金(単独事業者でも申請可)の交付を受け、2021年2月と22年3月の2度にわたる地震によって建物や設備が破損した映画館の再建にこぎ着けました。

「一関シネプラザ」一関民商松本健樹さん

県南部で唯一の単館系映画館が

 一関シネプラザは、一関市はもとより、岩手県南部で唯一の単館系映画館。開業以来74年間、住民に映画の楽しさと感動を提供し、映画文化の発展に尽くしてきました。
 21年2月に発生した震度5強の地震で外壁が大きく崩れたため、松本さんは、民商の支援を受け、県・国が創設した「令和3年福島県沖地震に係る中小企業等グループ補助金」(復旧経費の75%が補助される制度)を申請し、採択を勝ち取りました。ところが、コロナ禍による資材・人手不足などが重なり、復旧工事が遅れ、22年2月までかかることに。
 さらに、22年3月にも再び震度5強の地震に襲われ、せっかく修繕した外壁が、またも大きく損壊。劇場の天井が落下し、空調が破損。内壁も崩れるなど、甚大な被害を受けました。また、映画館の命とも言うべき映写機も、そしてスクリーンも破損。映画館は休業に追い込まれました。
 松本さんは「映画の灯を絶やすわけには行かない」と応急修理を行い、被災から1カ月後の4月下旬、営業を再開しました。ただ、建物・設備を完全に修理するための費用は2千万円以上かかります。コロナ禍で来館者が激減する中で、新たな借り入れは難しく、民商に相談しました。
 民商では、既に宮城・福島両県で実施されていた「令和4年福島県沖地震に係るグループ補助金」が、岩手県でも申請可能となったことから申請に挑戦。県の担当者から、「新たに『定額補助』という制度ができ、一定の要件を満たせば、『特定被災事業者』として復旧経費の100%が補助される」との説明も受けました。
 松本さんは、震災当時に委任していた税理士に、定額補助を申請するのに必要な2010年当時の申告データが残っているか確認。法人分は残っていたものの、個人分は破棄されていました。民商で改めて補助金規定を確認したところ、過去の申告書が準備できない場合でも、国が設定した計算式で「債務超過」であれば、「定額補助」の対象になることが分かりました。
 民商の山口伸事務局長と協力して「債務超過」であることを証明する「経営改善計画」を策定した松本さん。復興事業計画を確認する「認定経営革新等支援機関」である一関信金も全面的に協力してくれました。

交渉を5回重ね100%補助を実現

 ところが、申請書を受け取った県の担当者から「修正してほしいが、期限は1週間。間に合わなければ定額補助は認めない」と言われ、「絶対に間に合わせる」と奮起して提出。民商の菊地七郎会長=建築、菊池善孝税対部長=畜産、小野寺喜久雄前会長=建築設計=を中心に県と5回にわたり交渉し、23年5月に定額補助を実現しました。
 県は同年10月に完了検査を行い、補助金の振り込みが決定したにもかかわらず、12月に「松本さんの提出書類に不備があって補助金を出せない」と言い出したため、再度の交渉で撤回させ、1月5日、県は補助金支給を最終決定しました。
 松本さんは「県の担当者による仕打ちは屈辱的だったけど、映画文化を守りたいとの一心で頑張れた。民商の仲間、映画を観てくれるお客さまのおかげ。本当にありがとうございました」と笑顔で語りました。

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