税務相談停止命令制度が施行 自主申告運動への介入を許すな|全国商工新聞

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 1日、税務相談停止命令(停止命令)制度を追加した改定税理士法が施行されました。新設された同法第54条の2は、税理士でない者が反復して税務相談を行うことによって、不正に国税や地方税の賦課、徴収を免れさせ、不正に還付を受けさせることによって、納税義務の適正な実現に重大な影響を及ぼすことを防止するため緊急に措置をとる必要があると認めるときは、その税務相談の停止を財務大臣が命ずることができるとしています。
 条文にある「納税義務の適正な実現に重大な影響を及ぼす」ことについて国税庁は、「脱税指南により不特定多数の者が国税を免れる申告を行う等の申告納税制度を揺るがすような行為が該当する」(「令和5年度国税通則法の解説」)としています。国税庁の住澤整主税局長(当時、現長官)は国会で、「納税者同士で一般的知識を学び合うといった、現在の税理士業務である税務相談に該当しない取り組みを対象とするものではない」(昨年3月17日、参院財政金融委員会)と答弁しました。
 そもそも、税金について相談し、教え合うことは自由であり、国家権力が介入し、厳罰で停止させることは、基本的人権や幸福追求権、結社の自由などを定めた憲法に反しています。問題は、税理士法が非税理士による税務書類の作成や税務相談などを禁止していることです(52条)。国税庁は、停止命令を下す前の調査の結果、命令しないとした場合でも「命令とは別に是正手続きが行われる場合がある」とし、倉敷民商弾圧事件で悪用された52条違反による処罰を想定しています。
 申告相談に応じる市民ボランティアの税務援助を広く認めている諸外国の常識からみれば、税務署員が「この申告書は誰が書いたのか」「お金をもらって書いているのか」と自主申告運動に介入する日本の税務行政は異常です。不当な弾圧をはね返すには、納税者自身が申告する所得と税額に確信が持てるようにする学び合いと日常的な自主計算の強化が欠かせません。全商連が発表した「納税者の権利憲章」(第3次案)への賛同を広げ、自主申告運動の擁護・発展で一致する団体や税の専門家と共同し、憲章制定を国に迫る運動を強めましょう。

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