社保料徴収で厚労省が答弁 納付の猶予は最長4年「事業の継続」配慮する|全国商工新聞

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日本共産党小池晃参院議員が国会で追及

 「社会保険料(社保料)の納付の猶予は最長4年」「差し押さえは、滞納者の生活の維持や事業の継続に与える支障が少ない財産であること」―。3月12日の参院財政金融委員会。「社保倒産」の実態を示し、年金事務所の違法・不当な徴収の是正を求めた日本共産党の小池晃議員に対し、厚生労働省が改めて明言しました。小池議員は同22日にもこの問題を取り上げ、社保料の負担軽減のために中小業者への直接支援を国が行うよう要求。「社保倒産」の実態を告発し、国会中継をネットで視聴した事業者から「励まされた」との声が寄せられています。

年金事務所の横暴ただす

社会保険料の滞納者に対する年金事務所の違法・不当な徴収の是正を求める日本共産党の小池晃参院議員(インターネット中継より)

 同委員会では、日本年金機構・年金事務所による強権的な社保料の徴収が大問題になり、与野党の国会議員が取り上げる事態となっています。

「社保倒産」の実態を示して

 小池議員は3月12日、2023年の社保料滞納による差し押さえ件数を厚労省に確認。昨年12月段階で3万4千事業所に上ることを明らかにし、「過去最高になることは間違いない」と指摘しました。
 「コロナ禍に加え、物価高騰に苦しむ中小業者は、ゼロゼロ融資の本格返済、消費税インボイス(適格請求書)による負担で苦境に追い込まれ、納付が滞っている。差し押さえではなく、丁寧な対応が必要ではないか」と質問。厚労省が「日本年金機構に事業所の状況に応じて丁寧に対応を行うよう指導している」と答えたのに対し、「現場では、丁寧とは程遠い実態だ」と指摘し、「1年で完納」や「一括納付」を迫ったり「一度でも納付できなければ直ちに差し押さえ」などの事例を告発しました。
 国税庁に、国税の換価の猶予について改めて確認。国税庁は「申請と職権でそれぞれ原則1年間、やむを得ない場合、最長2年間まで延長でき、全て適用された場合は4年間の猶予が認められる」と回答。厚労省も、社保料に関しても「取り扱いは国税庁と同様」と認めました。
 小池議員は、差し押さえする際の留意点についても確認し、「本来は『国税庁基本通達47の17』に基づいて執行されるべきなのに、岩手県盛岡市のタクシー会社のケースでは、営業用車両や売掛金を差し押さえて廃業に追い込むなど、実際は無視されている」と指摘。鈴木俊一財務相に、2009年6月に与謝野馨財務相(当時)が「納税者を破綻にまで追い込む徴収は妥当性を欠くと思っている」と述べた国会答弁について、見解を求めました。

年金事務所に財務相も苦言

 鈴木財務相は「09年当時と基本的な取り扱いは変わらない。あまりにも取り立てが厳し過ぎて、破綻に追い込むというようなことはいかがなものか」と、年金事務所の徴収姿勢に苦言を呈しました。
 厚労省も「直ちに差し押さえを行うのではなく、事業所の経営状況等を踏まえながら、分割納付の仕組みを活用し、差し押さえに当たっても、事業の継続に影響の少ない財産を優先して対象にする」と答弁し、改めて年金事務所や日本年金機構への指導を約束しました。
 3月22日の同委員会では、小池議員が中小業者支援として「賃上げ税制より、社保料減免などの直接支援が必要」と指摘し、岩手県が21億円の予算で実施した「物価高騰対策賃上げ支援金」制度を紹介。「中小企業が1時間当たり50円の賃上げを行うと、従業員1人当たり5万円を補助する制度(最大20人分)で、大変喜ばれている。しかし、5万円で賃上げを賄えるのは半年ほどで、1年以上では事業所の持ち出しになる。県任せにせず、国として直接支援を考えるべきだ」と迫りました。

国税庁基本通達47の17

 差し押さえる財産の選択は、徴収職員の裁量によるが、次に掲げる事項に十分留意して行うものとする。この場合において、差し押さえるべき財産について滞納者の申出があるときは、諸般の事情を十分考慮の上、滞納処分の執行に支障がない限り、その申出に係る財産を差し押さえるものとする。
 (1)第三者の権利を害することが少ない財産であること(第49条関係参照)。
 (2) 滞納者の生活の維持又は事業の継続に与える支障が少ない財産であること。
 (3)換価が容易な財産であること。
 (4) 保管又は引揚げに便利な財産であること。

リアルタイム視聴して「徴収は不当」と確信 
実態を会見で告発(3月18日号)東京新宿民商会員=美容クリニック

 インターネットで、リアルタイムで国会中継を視聴していました。多くの人が自分と同じような状況に置かれていることが、よく分かりました。
 これまで、年金事務所に言われることが全部正しい思っていました。しかし、小池議員への省庁の答弁を聞いて、自分たちが受けてきたような、生活の維持や事業が続けられなくなるような社保料の徴収は不当だということが改めて分かったし、滞納者を守る権利があることに確信が持てました。
 国会質問を受けて、年金事務所に「実情に応じた丁寧な納付相談を求める請願」を提出しに行くことにしました。仕事の立て直しを図り、頑張りたいと思います。

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