「消費税インボイス制度の中止・延期を求める意見書」 各地で採択広がる|全国商工新聞

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 消費税インボイス制度の中止・延期を求める意見書が12月議会で採択された―。各地から、うれしい報告が相次いでいます。長野県富士見町は、諏訪地方民主商工会(民商)の婦人部役員が趣旨説明で中小業者の厳しい実態を告発し、継続審議から一転、採択へ。新潟県津南町は、保守系町議が発議し、採択されました。

長野県富士見町
継続審議から一転し 諏訪地方民商 3事業者の負担告発

富士見町議会の意見書採択を喜ぶ(右から)山近一代さん、小野百合子さん、清水栄子さん

 「やったー。継続審議になった意見書が採択された」―。長野県富士見町は12月24日、「インボイス制度導入の延期を求める意見書」を採択しました。諏訪地方民商が陳情書を提出していたもので、民商の担当するエリアでは原村に続き2自治体目です。
 陳情書は9月議会に提出しましたが、継続審議となり、12月議会で改めて審議されました。小野百合子婦人部長=下着販売=は「これまで継続審議となった陳情が採択されたことはなかったので、本当にうれしい。趣旨説明で免税事業者がインボイス発行事業者になれば、どれだけ負担が増えるかを具体的に示したことが力になったのではないかと思う。引き続き、意見書採択を広げたい」と笑顔を見せます。
 12月7日の総務常任委員会には、小野婦人部長と山近一代幹事=教材販売、清水栄子事務局長が出席し、趣旨説明を行いました。小野婦人部長は3人の業者の実態を告発。「土産物店やホテルと取引している小売業者は、課税事業者になると、900万円の売り上げで消費税負担は13万円を超える。塗装業の一人親方は700万円の売り上げで19万円、ハウスメーカーの下請け建築業者は800万円の売り上げで25万円の増税だ。これまで免税事業者が事業を続けられたのは、家族経営だから。誰かが無給で働いて、事業を支えてきた。インボイスが導入されたら、事業は続けられない。実施延期を求める意見書提出を」と訴えました。
 無所属の議員から「実施に向けて動き出しているので、延期するのは難しいのではないか」との意見が出ましたが、陳情は賛成多数で採択されました。
 議会最終日の同24日、名取武一町議(共産)が賛成討論を行い、「国は激変緩和措置を示しているが、個人事業主やフリーランスの人たちが大きな負担を負う仕組みは変わらない。10月からの実施は中止するしかない」と強調。五味一平町議(無所属)も「制度の説明会に参加したが、理解しづらい。制度の内容が国民や事業者に浸透していない中で無理に実施すると混乱が起きる」と訴え、実施延期を求めました。
 反対討論では「インボイス制度は複数税率に対応するもので、税の公平性を保つために必要」との意見が述べられましたが、10人中9人の町議が賛成し、国に意見書が提出されました。

新潟県津南町
保守系議員の発議で 十日町民商 地道に運動続け

副会長が賛成討論 業者の声を伝えて

津南町議会で賛成討論を行った十日町民商の副会長で町議の桑原義信さん(右)

 新潟県津南町議会は12月7日、「インボイス制度施行の延期を求める意見書」を採択しました。風巻光明町議(無所属)が発議したものです。「立場の弱い小規模事業者に不利益を与え、地域経済のさらなる疲弊を招くことになりかねない。激変緩和措置も検討されているが、世界情勢と日本経済が落ち着きを取り戻すまで延期すること」を求めました。
 十日町民商の副会長で、町議(共産)を務める桑原義信さん=型枠=が賛成討論を行いました。「消費税が10%になって大変なのに、今度はインボイスで税金を吸い取られるのか」「直売所へ野菜を出しているが、消費税を負担しなくてはならないのか」などの声が寄せられていることを紹介。「免税事業者に納税義務を負わせ、経済的・事務的負担を強いる制度だ。商店や飲食店だけでなく、個人タクシーや大工・板金・内装・左官などの一人親方、フリーランスで働く人などに負担がかかる。シルバー人材センターも、会員がインボイスを発行しなければ、多額の納税負担が発生する。免税事業者が取引から敬遠されたり、消費税相当分が値引きされるなどの問題を抱え、準備に間に合わない事業者も多い」と指摘し、実施延期を求めました。
 1人が反対しましたが、11人が賛成し、意見書は採択されました。
 桑原副会長は「保守系の議員も賛成している。民商が担当エリアの十日町でも、3月議会に向けて請願書を提出し、採択させたい」と話しています。

パレード続け10年 意見書採択の力に

10年目となった今回は26人が参加しました
消費税増税中止、中小業者に資金を回せとアピールした十日町民商の自動車パレード

 「中小業者に仕事を資金を」「消費税増税の中止」などの、のぼり旗を掲げた10台の自動車が1月8日、新潟県十日町と津南町を駆け巡りました。
 今年で10年目を迎えた、十日町民商が毎年行う新春パレードです。出発式で、宮澤健二会長=石工=は「ロシアのウクライナ侵略が続く中、政府は敵基地攻撃能力を保有するために軍事費を2倍に増やし、戦争への道に突き進もうとしている。憲法9条を守り、戦争反対の声を上げることが、今こそ必要だ。物価高騰などで営業と暮らしは大変厳しい。みんなで団結して頑張ろう」と呼び掛けました。
 パレードには26人が参加。統一地方選挙の県議選に立候補を予定している藤ノ木浩子さん(共産)も参加し、「県議選に勝利して、皆さんの営業と暮らしを守る議席を獲得したい」と決意を語りました。

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