ミニストップ新契約に「優越的地位の乱用」の疑い 徳島の加盟店が公正取引委員会に告発 藤本社長が説明会で明言 「更新を2年猶予する」|全国商工新聞

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コンビニ「ミニストップ」の店内(記事とは関係ありません)

 「ミニストップパートナーシップ契約の押し付けは優越的地位の乱用」との加盟店の告発を受け、ミニストップ本部が6日、徳島県内で急きょ開催した説明会。本部は改めて、新契約に基づく試算を提示しましたが、「新契約で加盟店利益が増える」シミュレーションは示せず、加盟店からの質問にも納得のいく説明はできませんでした。疑問や問題の指摘を受け、藤本明裕社長は「新契約への更新は、2年猶予する」との考えを示し、個別の相談を強めると説得に努めました。「納得のいく弁明をもらえず、公正取引委員会のガイドラインに抵触する疑いは強まった」―。新契約の問題点の解明を行いつつ、どうすれば加盟店の利益アップが図れるか、引き続き本部と話し合っていきたいと参加したオーナーは話します。

利益増の根拠を示せず 本部はオーナーと協議の場を

徳島県連も参加する「対策チーム」

 6日の説明会には、藤本社長はじめ、望月淳FC営業本部長らが徳島を訪問。徳島、香川の15店舗のミニストップオーナーらが参加しました。藤本社長は「改めて導入の背景、理念、契約の内容の詳細を、ご説明させていただきたい」と新契約の仕組みを説明しました。
 事業利益分配モデルでは「売上総利益から人件費・廃棄、そして、今回設置した設備料を除いた、残った利益を加盟店と本部とでシェアする」と、売り上げを上げるために投資リスクを分散するものと狙いを強調しました。
 新契約に移行した130店舗の経験を踏まえ、「特殊な都内の総菜をやっているお店ですが」と前置きしつつ「調理パン・菓子パン、サラダ、麺など、なかなか投資が行き届かなかったところに、投資が回るようになった時に、売り上げが2%程度伸びている」と実績を強調しました。

試算で利益減少

 説明とは相反し、当日に本部が各店舗に提示した新契約「試算表」(シミュレーション)では、売り上げが昨年対比100%の場合は、いずれの店舗も現行契約より利益減少していました。なお、昨年対比105%、110%の新契約試算で純利益増加額を示しましたが、現行契約の105%、110%の数字が示されていないため比較ができません。
 日販50万円台のあるオーナーは、「藤本社長は、経済産業省の『新たなコンビニのあり方検討会』フォローアップ会合(2020年10月29日)で、『日販40万だとパートナーシップに変更しても、加盟店純利益はさほど変わらないが、日販50万円になると15%アップぐらいになる』(図1、2)と説明しているが、本部からもらった試算では、現行よりも下がっている。なぜか?」と質問。藤本社長は「それは平均的な売り上げでシミュレートしたもので、全くうそではないと思いますけど、個別の状況によっては変わります」と言い逃れに終始しました。

納得いく説明を

 「どこをどう改善すれば15%上がるのか、教えてもらえるのか」と問い掛けると「個別のシミュレーションの相談はする。しっかり約束はさせていただく」と述べるにとどまりました。
 「『無理であれば離脱はやむを得ない』と言われていますが、ついて行けない者、利益が減っても我慢できる者以外はやめろという意味ですか」との追及には、「軽はずみだったと反省し、岡田会長(イオン)から説教をもらった」と述べ、「新契約で共に持続的な経営ができるように説得していきましょうと、やめてくださいって言っているわけじゃなくて、この契約は、我々としては前に進めるものだと思っているので、それが一緒に進めないものであれば、そういう判断をされても仕方がないですね、という意味です」と釈明しました。
 新契約は、7年間の契約更新を迎えた加盟店が順次更新するものですが、加盟店からの疑問や問題の指摘を受け、藤本社長は「新契約への更新は、2年猶予します」と述べ、「2年前に契約書の提示も可能」と加盟店の考慮時間を保障する考えを明らかにしました。
 あるオーナーは「今日の話でも、やっぱり納得のいくような説明にはなっていなかった。本部と加盟店の距離が遠過ぎる。以前は、もっとオーナーの声を聞いてもらった」と本部の姿勢の改善を求めました。
 「新方針を発表するのであれば、事前に現場の意見をもっと聞いて行うべきだ」「継続店舗の利益減少には、何らかの救済措置を本部は考えるべき」との声が、ミニストップ関係者から寄せられています。

FC指針違反も

 経産省の「新たなコンビニのあり方検討会」報告書(20年2月)は「コンビニが持続するために」、「加盟店優先・オーナー重視のビジネスモデルの再構築」「本部としていかに加盟店の利益を伸ばしていくかが喫緊の課題」と、本部側の改善を求めています。
 公取委は20年に「FCガイドライン」の改正を行い、加盟店募集時において楽観的な「モデル収益」や「収益シミュレーション」等が示されることが多くあり、それがあたかも当該店舗の「予想売上」であるかのような誤解を与えることが「『ぎまん的顧客誘引』に該当する」と指摘しています。
 今回のミニストップの新契約は、「純利益15%アップ」などの根拠のない予測を示し、加盟店に不利益となる新契約へ移行させるものではないか―。FCガイドラインに違反する疑いも出ています。

意見要望上げて

 全国FC加盟店協会徳島支部の笠原修事務局長は、「各店舗のシミュレーションを示し、納得がいかない加盟店には『更新を2年猶予』することや、契約書も2年前に提示すると表明したことは、今回の説明会での成果です。加盟店が声を上げることで、本部も変わります。人件費の高騰、社会保険料の支払いや水道光熱費の値上げに対しても『本部も積極的に関わっていきたい』との姿勢は評価できます」「しかし、新契約移行に伴う既存加盟店の利益減少は、本部が掲げる目的にも矛盾していますので、具体的な解消策のために、本部への意見要望を上げて話し合うことが一層必要だと思います」と話します。

徳島県連・FC協が支援

 経産省「新たなコンビニのあり方検討会報告書」(2020年2月)は、各チェーンに、社会問題になった24時間営業問題をはじめとするFC契約の問題について、本部に自主的改革と改善を求めました。ミニストップは「フランチャイズ契約からミニストップパートナーシップ契約へ」を提出。「ロイヤルティモデルから、事業利益分配モデルに転換することにより加盟店利益が15%のアップが見込まれる」との改善内容を報告していました。
 ところが、新契約に基づき現状の売上高で試算すると、本部試算でも、オーナーの独自試算でも、23~81%も利益減少することが明らかに。
 ミニストップ新契約は、独占禁止法が禁じる「優越的地位の乱用」に当たるとして、徳島県内の加盟店9店舗のオーナーが公正取引委員会に調査を要請。これを受けて6日、ミニストップが徳島県内で「パートナーシップ契約の説明会」を開くことになりました。
 オーナーから相談を受けた徳島県商工団体連合会(県連)は、全国FC加盟店協会徳島支部と連携して支援を行っています。

ミニストップ新契約 独禁法違反の可能性も

弘前大学 准教授 長谷河 亜希子さん

本部は「優越的地位」にある

 ミニストップ本部の行為に対して独禁法上の「優越的地位の濫用規制」が適用されるには、本部が加盟者に対して「優越的地位」にあることが必要です。
 これは、加盟者にとって取引先変更は難しく、本部との契約継続が必要かという観点から判断されます。
 加盟者は、多額の投資をして開店した後、毎月、ロイヤリティ等を本部に支払い、本部の指導に従わなければなりません。しかし、解約や契約更新拒絶に際しては、加盟者が本部から店舗を賃借している場合、事業譲渡と異なり、加盟者への金銭補償なしに経営権とその顧客は本部のものとなります。本部はその店舗の経営権を新たな加盟希望者に売却することも可能です。
 したがって、契約を継続したい加盟者は、承服しがたくとも本部の方針等を受け入れざるを得ません。ゆえに、ミニストップ本部は加盟者に対し、優越的地位にあると考えられます。

新契約強制は「濫用行為」に

 次の論点は、契約更新時の新契約の強制という本部の行為が「濫用行為(合理的理由なく加盟者に不利益を課す行為)」に該当するか否かです。本件では、新契約への切り替えにより加盟者の負担が増える可能性があるにもかかわらず、その合理的理由や、それにより加盟者が得られる利益が明確になっていないように見受けられます。
 他方、新契約を受け入れないと加盟者は店舗を失い失職することになります。加盟者には、この二つの選択肢のみが一方的に押し付けられていますが、本部にとっては、いずれの選択肢もメリットが大きいと考えられます。
 このように、ミニストップ本部の今回の行為に関しては、優越的地位の濫用に該当する可能性がありそうです。コンビニ問題が生じる一因として、本部と加盟者間の意思疎通不足が挙げられますが、今回も、本部の説明と行動が一貫しておらず加盟者がそれに翻弄される、加盟者らの声を本部の上層部が把握できていないなど、同様の問題があるように見受けられます。

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