日本を守るために敵基地攻撃 核共有って必要? 居酒屋お吟で政治談議 9条生かした平和外交こそ|全国商工新聞

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 「ウクライナ情勢を見ると、自分たちの国を守る力や打撃力・反撃力が絶対に必要」「NATO(北大西洋条約機構)は核シェアリングしており、ロシアは簡単に手を出せない」―。テレビで橋下徹氏(維新の会の生みの親・弁護士)の発言を聞いて、考え込んだ大工の熊さんが「居酒屋お吟」の物知りのおかみ、お吟を訪ねました。

やられっ放しに?

攻撃された住宅から避難する子ども連れの女性=3月16日、キエフ(ウクライナ非常事態庁提供)

 熊さん 日本も敵基地攻撃能力を持ったり、核共有した方がいいのかなあ?
 お吟 ばかだねえ、あんたは!それこそ、プーチン大統領と同じ発想だよ。「相手が軍事、核兵器、力の論理」で来たから、こちらも「軍事、核兵器、力の論理」で対抗すれば、一体どうなる?
 熊さん 相手がさらに上回ろうと対抗する…?
 お吟 そう。結局「軍事対軍事」の果てしない悪循環に陥り、一番危険だ。
 熊さん でも、北朝鮮や中国への反撃力が無いと、やられっ放しだよ…。
 お吟 敵基地攻撃能力は、一発ミサイルを撃つだけの話じゃないよ。岸防衛相は他国の領域で制空権を確保し、基地を無力化する一連のオペレーションが必要と国会で答弁した(昨年12月17日)。名古屋大学の松井芳郎名誉教授は「敵基地攻撃論は今回のロシアと同じ立場に立つ危険がある。自衛権行使の立証は非常に困難だ。立証できなければ、日本は侵略者になる」と指摘している(3月8日、参院公聴会)。憲法9条を持つ日本が相手国に乗り込んで、ミサイル基地をしらみつぶしに攻撃するなんて、おかしいじゃないか。

核共有で抑止力?

 熊さん それは、そうだな。でも日本が核共有してれば、抑止力になるんじゃ…?
 お吟 ばかだねえ、あんたは!!
 熊さん まただよ…。
 お吟 核抑止は、いざという時は核兵器を使うぞって脅しだろ?ヒロシマ・ナガサキの惨状を繰り返すことだよ。そんな非人道的な行為が許されるかい?
 熊さん 駄目だな…。
 お吟 核抑止力論は理性的・合理的な核保有国のリーダーが前提だけど、プーチンみたいに核兵器を使いかねない場合は成り立たない。核兵器で対抗し合ったら、人類はおしまいだよ。核による“恐怖の抑止”に頼るんじゃなくて、「絶対悪」の核兵器は、きっぱり廃絶すべきだ。核兵器禁止条約が発効した時は、あんたも喜んだじゃないか。
 熊さん そうだった…。
 お吟 被爆国だからこそ国是の非核三原則を堅持し、禁止条約に早く参加して、核兵器のない世界を求める先頭に立つべきだよ。

日本をどう守る?

 熊さん じゃあ、日本の安全はどう守るんだい?
 お吟 橋下さんらは「日本が攻められたら…」とばかり言うけど、「攻められない」ように9条を生かした外交努力は全然尽くしちゃいない。外交努力のお手本は東南アジアだ。ベトナム戦争で互いに戦火を交えた教訓から76年に東南アジア友好協力条約(TAC)を締結した。加入国間の争いは「武力による威嚇や武力の行使を慎み、常に加入国間で友好的な交渉を通じて、その紛争を解決する」と定め、当事国だけで解決が難しい場合は、加入国の閣僚級代表でつくる理事会が仲介すると明記。年間千回を超える徹底した対話と信頼醸成の努力を通じて「紛争を戦争にしない」を実践し、この地域では88年の中国とベトナムとの海戦以来、30年以上も戦争は起きていない。ヨーロッパでは軍事同盟のNATOを拡大し、10の戦争が起きているのとは対照的だよ。
 熊さん 人間関係も、こっちがツンとしてりゃ相手も構えるのと同じか。平和的解決が一番だ。

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