「地域の業者も脱炭素を」 全商連付属・中小商工業研究所 気候変動シンポジウム|全国商工新聞

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中小業者が主役になり、脱炭素社会を実現しようと呼び掛けた公開シンポジウム

 「気候変動に中小商工業者はどう向き合うか」―。全商連付属・中小商工業研究所は12月18日、公開シンポジウムを開き、脱炭素社会の実現へ中小業者も役割を発揮していく必要があることが提起されました。
 全商連の藤川隆広副会長が主催者あいさつ。名城大学の井内尚樹教授がコーディネーターを務め、東北大学の明日香壽川教授、建築設計の成田完二さん、NPO地域づくり工房代表理事の傘木宏夫さんがパネリストとして報告しました。
 明日香さんは「世界と日本のグリーン・ニューディール」と題して報告。世界では石炭火力と原発からフェーズアウトし、再生エネへの転換を進めていることを紹介し、「各国と比較すると、日本のCO2削減目標は30年遅れている」と批判(図1)。「この10年間でガクッと減らさないと、『1・5度目標』達成は厳しい。先進国はもっと積極的な取り組みが必要」と述べ、政府の「2050年カーボン・ニュートラルに伴うグリーン成長戦略」に対する代替案として「グリーン・リカバリー(GR)戦略」を実現するための具体的提案について説明しました(図2)。

 

 再生エネへのエネルギー転換で影響を受ける可能性のある雇用は約20万人に対し、年間約250万人の雇用が創出されるとの試算も示し、「脱石炭火力・脱原発のシナリオの方が、政府シナリオよりも発電コスト総額や雇用創出数という点で経済的に合理的である」と強調しました。
 成田さんは、住宅の高断熱化と省エネの取り組みの重要性について、自らの実践も通じた実感も交えて報告。「冬暖かく、夏涼しい、冷暖房費のあまりかからない快適な家造りへ、知識や技術を共有し、中小業者が力を合わせた取り組みが必要」と提起しました。
 傘木さんは、水力発電実験所など地域での実践報告と、再生エネ導入に伴う環境問題とアセスメントの重要性などを指摘。「地域力が試されている」と述べました。
 井内教授はまとめで、「脱炭素社会を実現するポイントは、地域資源の利活用の促進にある。中小企業者が主役になり、循環型地域経済の実現を」と呼び掛けました。
 同シンポはオンライン形式で開催され、50カ所で視聴されました。詳細は「中小商工業研究」第151号(2022年4月発行)に掲載されます。

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