全国商工新聞

こんな不公平許せない=湖東京至税理士試算

 「トヨタ自動車に5年間で1兆3000億円の還付金」「輸出大企業上位10社に年間約8700億円の還付」―。税理士・湖東京至さん(元静岡大学教授)が消費税の輸出還付金を推定計算しました。野田内閣は、通常国会に2010年代半ばまでに消費税率を10%にする増税法案の提出を狙っています。増税されたら還付金も中小業者の納税額も2倍、こんな不公平は絶対に許せないと告発しています。

 消費税の最大の不公平は、トヨタ自動車など巨大輸出企業に対する還付金制度です。大企業などは消費税を1円も税務署に納めないのに巨額の還付金をもらっています。私が10年度の有価証券報告書をもとにこれら大企業への還付金を推算したところ、上位10社だけで8698億円に上ります(表1)。10年度の還付金の合計は3兆3762億円(政府予算)で、この額は全消費税収のおよそ28%に相当します。

 還付金の最も多いトヨタ自動車は最近5年間で1兆3000億円の還付を受けています(表2)。消費者はトヨタの車を買う時に消費税を払います。トヨタは当然、国内販売分の消費税を税務署に納めなければなりません。しかし、トヨタは還付金から差し引き1円も納税していません。つまり、国内販売分の消費税額を差し引いても、なお巨額の還付金がもらえます。

下請けは転嫁できない

 一方、中小事業者は消費税を完全に転嫁できないのに納税額が発生するため、納税資金の手当てに四苦八苦しています。消費税は赤字でも納税額が発生します。そのため、消費税の滞納は国の税金の中で常に第1位を占めています。巨大輸出企業は滞納の心配はまったくなく、還付金の振り込みを楽しみに待っています。こんな不公平は絶対に許せません。
 なぜ消費税に輸出還付金制度があるのでしょうか。政府は「外国の消費者から日本の消費税はもらえないから、トヨタなどが仕入れの際に払った消費税分を返すのだ」と説明します。ですがトヨタなどは下請けに消費税を本当に払っているでしょうか。経済取引では価格決定権を持っているのは常に親企業です。「消費税分をまけとけ」といわれればその価格で納品しなくてはならず、たとえ消費税分を請求書に書いても元の価格が下げられていれば消費税をもらったことにはなりません。消費税は価格への転嫁が力関係で決まる不透明でいい加減な税金なのです。
 トヨタなどの輸出大企業は実質的に払ってもいない消費税を返してもらっているのです。これは税制を使って輸出補助金を出しているのと同じです。もし、どうしても還付したいなら、下請けにも返すべきです。
 その上、同じ非課税でも、患者から消費税分をもらえない医療機関の社会保険診療報酬に還付金はありません。ですから病院などは診療材料や薬に含まれている消費税分を自己負担せざるを得ません。つまり医療機関は消費者と同じなのです。これを「にせ非課税」と言います。医師会などが社会保険診療報酬も輸出のように還付金のある免税にしてほしいと運動しているのも分かります。

輸出還付金で税務署赤字に

 全国の税務署のうち消費税の還付金が消費税の税収を上回っている赤字の税務署が九つもあります。九つの税務署はいずれもその管内に輸出企業を抱えています。赤字の一番大きい税務署はトヨタ自動車のある愛知・豊田税務署ですが、管内の消費税収入より還付金額が1153億円も上回っています(09年度分、5%分)。還付金をもらっている企業は全国でおよそ15万5000社、そのほとんどが輸出企業です。還付金が一番多いのは東京の麹町税務署で2603億円もあります。
 これらの税務署の管理運営部門は月末までに還付金を振り込まないと利息をつけなければなりませんので振り込みに追われています。本来、税務署の仕事は税金を集めることですが、こと消費税に限っては税金を返すことも仕事なのです。

消費増税でさらに格差

 野田内閣は12年の税制「改正」法案に消費税の税率引き上げを盛り込むとしています。もし税率が10%になれば、還付金は2倍になります。トヨタ自動車でいえば2246億円が4492億円になります。逆に中小事業者の場合、仕入れや周辺の取引価格は確実に消費税分が上がりますが、売り上げは横ばいか減少する可能性があります。にもかかわらず、消費税の納税額は2倍に跳ね上がります。簡易課税を選択している場合は売り上げに一定割合をかけるだけですから税率引き上げ分はそのまま増税になります。もっとも、簡易課税制度は税率引き上げとともに廃止される可能性がありますから、それだけで納税額は多くなります。不公平はますます拡大します。
 日本経団連が消費税増税を提言している裏には、税率引き上げで大企業がもうかる仕組みがあるからです。

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