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  トップページ > 経営のページ > 経営 > 全国商工新聞 第3260号4月17日付
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社会問題化するアパートサブリース問題でオーナー会設立=名古屋西部民商

家賃減収で大家が提訴へ
 「一括で借り上げる」「満室にならなくても保証します」という勧誘を受け、アパート経営に乗り出したオーナーが数年後に家賃を減額され、借金と空き室で途方に暮れる事態に-。賃貸不動産業界大手のレオパレス21に対し、愛知・名古屋西部民主商工会(民商)会員の前田和彦さんらオーナーが「LPオーナー会」を設立し、同社の契約不履行問題で三つの集団訴訟を提訴。契約順守を求めるとともに、同社の詐欺まがいの商法をただすためにオーナーの団結を呼び掛けています。

表

 「30年間借り上げて空室でも家賃を保証する。管理はレオパレス(以下「業者」)が行うので、何もしないでも家賃が入る」-。問題になっているのは、サブリース契約というもの。(1)オーナーに金融機関から融資を受けさせアパートの建築を請け負わせる(2)同アパートを業者が一括で借り上げ、その賃料を融資の返済に充てる(3)入居者の募集や管理等は業者が行う-ことを主軸にした契約内容です(図参照)。
 土地などの資産を有する高齢者などをターゲットに、相続税対策にもなることを“売り’に、家賃収入から得られるシステム利回りは6〜9%になると宣伝し事業を拡大してきました。
 ところが、2008年のリーマンショックごろから入居率が上がらず、契約の履行ができなくなるなどトラブルが相次いでいます。
 LPオーナー会代表の前田さんも業者の誘いを受け、銀行から約2億5000万円を借りて畑にアパートを立てました。当初は近隣工場に勤務する労働者が入居したものの、その後アパートが乱立することとなり「今は、空き室だらけ」と話します。
泣き寝入りせず相談を呼び掛け
 「レオパレスは『30年一括借り上げ』『10年家賃不変』を宣伝文句にしてきたが、突然解約や賃料減額交渉を迫る‘終了プロジェクト’に動いている。天引きしている修繕や保守もやらない。やらずぼったくりで、まともな会社経営と言えません。会社の業績は回復しており責任を果たす体力はある。団結し立ち向かわないと姿勢は変えられない。泣き寝入りせずにオーナー会に相談してほしい」と呼び掛けます。
 LPサブリース契約の問題点を整理すると-。第一は、「10年間家賃不変の契約不履行問題」です。
 家賃の支払いが難しくなった業者は「倒産しそうだ」と泣きついたり、(倒産したら)「ご自分で経営できますか?」と脅しまがいの言辞も呈し、家賃減額への同意を求めてきました。LPオーナー会は「契約2万3000棟のうち7割、1万人以上のオーナーが、やむなく同意させられたのではないか」と見ています。業績の回復後も、レオパレス側は家賃を元に戻すことを拒否しています。(2016年9月23日調停申し立て。2017年2月22日、名古屋地裁提訴)
諸費用天引きも契約履行されず
 第二は、「家具家電メンテナンス契約不履行問題」です。
 「新築から7年目に家具家電を新品に入れ替え、レンタルに移行する」との契約をオーナーと結び、1室当たり2000円を天引きしていますが、そのほとんどを履行していません。LPオーナー会は「メンテナンス費用の返還」を求めています。(2016年11月25日名古屋地裁に提訴)
 第三は、「建物メンテナンス契約不履行問題」(建物メンテ契約)です。
 修繕目安表に基づくメンテナンスを行うとし、修繕積立金を月々徴収していますが、実際には行っていません。同会の調査によると、「屋根は10年で塗替え」となっているにも関わらず、実際行われたのは「ゼロ」、床カーペットの張り替えも行われていません。そればかりか、プロパンガス設備はガス販売会社が無償でメンテナンスを行っていたにもかかわらずあたかもレオパレスが行っていたかのような偽装もあったことが発覚しています。(2017年5月提訴予定)
 業者側は、第一について、「借地借家法では借主側に不利な契約条項(借主が家賃を下げられない)は無効」と主張。第二については、「変更合意書」へ署名押印をさせるとともに、同意しないオーナーには「黙示の合意」を理由に交渉に応じようとしていません。第三についても、「屋根は30年塗装不要」などと主張しています。

【解説】根本に金融機関の貸し手責任
求められる規制・監督の強化
 NHK「クローズアップ現代」(2015年5月11日)は「アパート建築が止まらない。人口減少社会でなぜ」を放映、サブリース契約のトラブルの背景には制度の落し穴があることを指摘しました。
 マンションや戸建てなどを売買する場合、宅建法によって不動産会社に重要事項説明が義務付けられており、さまざまなリスクについて口頭と書面で説明しなければなりませんが、サブリースの場合、一括借り上げという貸し借りの契約のため、厳格な説明は義務付けられていません。また、サブリースを含むこの賃貸管理業、今は任意登録で罰則規定もありません。
 しかも、オーナーはアパート経営を行う「事業者」という扱いになり、対等な業者間の取引とみさなれ消費者法の保護も受けないなど多くの問題点があります。
 こうしたトラブルの増加を受け、2016年度に国土交通省は賃貸住宅管理業者に「将来は家賃が減る可能性がある」との説明を義務付ける制度改正を行うに至っています。しかし、金融機関の責任は不問にされたままです。マイナス金利で貸出先を模索する金融機関にとっては、借り手に相続税対策が必要な富裕層が多いことや、返済不能になっても担保の土地を没収すれば債権は回収できるという事情もあり、アパート経営に与信を集中させています。
 「長短金利の低下が継続する中で、…不動産向け与信(アパートローンを含む)を増加させる等の動きが見られる」(金融行政方針2016年10月)との指摘もあるように、金融機関の貸し手責任を不問にはできません。
 「マイナス金利政策導入から、16日で丸一年。…個人が資産運用で行うアパート建設に向け融資が急増。需要を上回る勢いで建っており、今後空き室が増えれば、賃料の下落などの影響も出かねない」(「朝日」2月17日付)などの報道もあるように地域経済への打撃も否定できません。賃貸管理業への行政指導の強化等とともにサブリース契約の裏側でなんらリスクを取らずに利ザヤを稼ぎ続ける金融機関への監督・監視強化が求められます。

全国商工新聞(2017年4月17日付)
 
   

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