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  トップページ > 経営のページ > 経営 > 全国商工新聞 第3214号5月9日付
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仕事では誰にも負けたくないと父子で技術磨き続けてシーリンググランプリで全国5位に=広島北民商

事業継ぎ若手育成も
 建物の防水に不可欠なシーリング工事を請け負う大久保貴則さん。全国の職人たちが技能を競い合う「シーリンググランプリ」(※)に中国地方代表として挑戦し、5位という好成績を残しました。父親で広島北民主商工会(民商)会長の義明さんが築いてきた事業を継承・発展させようと奮闘。「仕事では妥協したくない」と技術を磨きながら、若手職人の育成にも情熱を注いでいます。

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民商では若手経営者との交流を深めている貴則さん

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パネルの模型の目地にシーリング材を打ち込む

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父・義明さんと。2人で力を合わせて事業を発展させています

 5回目となるシーリンググランプリは4月2日、兵庫県尼崎市で開催。北海道から九州までシーリング技能士の代表20人が決勝戦をたたかいました。
 シーリング工事とは、外壁やサッシ周りなどの目地(隙間)を埋める工事。いつもは作業を人に見られることはありませんが、この日は同業者や審査員の厳しい目線を背中に感じながらの作業です。会場の空気は張りつめていました。
 決勝戦の課題は「パネル目地」。建物のエントランスホールに張ってあるパネルの模型の目地を埋めていきます。シーリング材が周りにつかないないようにマスキングテープを張り、接着材の役割を果たすプライマーという塗料を塗り、乾かした後にシーリング材を目地に打っていきます。
 最も緊張するのは仕上げ作業です。余分なシーリング材を取り除いてバッカーと呼ばれる道具で平らにします。
 力を入れすぎるとシーリング材が波を打ち、途中で手を止めるとバッカーの跡がつくため、程よい力加減で上下左右の目地に、一気にバッカーを滑らすことが必要です。バッカーを持つ手が小刻みに震えていましたが、貴則さんは時間内に作業を終了し、ほっとした表情を見せました。
 「めちゃめちゃ緊張した。手の震えが止まらずに逃げ出したかった」と言いつつも「あの2カ所がもっとうまくできていればな…」と悔しさをにじませました。

父の誘い契機に九州で修業積み
 貴則さんがこの道に入ったのは16歳のとき。中学3年ごろから生活が荒れ始め、勉強に費やすべき時間はいつも友達と過ごしていました。
 「家には帰ってくるけれど親とは口をきこうとしなかった。人さまに危害を与えるようなことはしなかったけれど、いろいろやってくれたわ。その時は自分もつらかったし、育て方が悪かったのかと自分を責めた」と義明さんは振り返ります。
 貴則さんは高校に進学したものの1年で中退。義明さんは貴則さんを辛抱強く見守り、立ち直ることを信じて「一緒に仕事をせんか」と声をかけました。
 「何もせんわけにもいかんし、おやじの仕事をするしか選択肢がなかった」と貴則さんは苦笑いしますが、仕事を短期間に覚え、義明さんをびっくりさせました。
 1年後、修業を積むために2年間九州へ。「シーリング工事は全てが手作業で、しかも固い材料ではなく軟らかい材料を使う仕事なので力加減が難しい。その感覚は人から教わるのではなく自分でつかむもの」と貴則さん。修業の時は材料と道具を渡されて、社長から「夕方まで作業をやっとけ」と言われたことも。「現場に1人残されて体も心もこたえたけど、どうすればうまく仕上がるかを自分の頭で考えて仕事をすることが身についた」と言います。

技術は消えない信じて仕事続け
 広島に戻った貴則さんは97年に結婚。それを機に義明さんと貴則さんは再び、一緒に仕事をするようになりました。
 そのころ、バブル経済崩壊の波が地方にも押し寄せ、単価が一気に下がりました。同業者の間では「仕事がなくなる」「息子には仕事を継がせられない」と話が飛び交い、廃業が続出。しかし、義明さんは「中小業者の仕事はなくならない」と確信していました。「全事業所の99%が中小企業なんじゃから、その仕事がなくなったら経済は成り立たない。これから元請けは必ず若手職人の技術を求めてくる。息子はそれに応えられる技術がある」と胸を張って職人を少しずつ増やして事業を拡大させてきました。
 現場仕事は徐々に貴則さんに移行。3人の従業員を現場に配置して仕事を回し、個人住宅だけではなく、大きなビルの工事も積極的に受注するなど売り上げを伸ばしてきました。
 仕事は途切れることなく、貴則さんは現場を掛け持ちしながら忙しく走り回る毎日。19歳の青年を一人前の職人に育てることにも力を入れています。
 家では6人の子どもたちの父親として子育てに奮闘し、民商では若手経営者の集まりにも少しずつ顔を出して交流を深めています。
 頼もしい息子の姿に目を細める義明さん。「グランプリに挑戦したこの機会にそろそろ経営を任せようと思っている。これから大変なこともあると思うけど、困ったときには民商の仲間がいる。みんなで知恵を出し合って未来を切り開いてほしい」とエールを送ります。
 その期待をしっかりと受け止める貴則さん。「仕事では絶対に人に負けたくない。『従業員を大切にせにゃいかん』というおやじの教えを守って、若手職人を増やして、もっと事業を伸ばしたい」と目を輝かせます。

※シーリンググランプリ…職人同士の技量を切磋琢磨することで技能向上をめざすとともにシーリング技能士の地位向上や業界の発展を目的に開催されているもの。主催は関西シーリング工事業協同組合。北海道、東北、東京、中部、中国、四国、九州の各シーリング工事業協同組合が予選を行うなどして決勝への出場選手を選出した。

全国商工新聞(2016年5月9日付)
 
   

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